昔と比べて、今は様々な働き方があります。正社員と非正社員と大きく分けてしまいがちですが、その中でもいくつか細かく分かれていますよね。例えば、「出向」と「転籍」。何となく違いはわかるような気はするけど、雇用契約など法律上の側面から見ると意外と答えられなかったりします。そこで今回は、多様化が進む働き方についてご紹介。無料メルマガ『新米社労士ドタバタ日記 奮闘編』の中で細かく解説していきます。
「出向」きちんと理解していますか?
働き方の多様化が進んでいる。何かを限定する社員、短時間正社員という枠もあれば、従業員側からすると、使用者が許すならば、他との掛け持ち、つまり副業OKという選択肢も増えて来ている。そんななか、使用者側からすると、出向や転籍という選択肢の見直しも出てきているようだ。
新米 「出向は、就業規則に規定があれば、命令できるものなんですよね」
大塚T 「そうよ。それに対して転籍は、原則として本人の同意がないとできないわ」
新米 「その二つの働き方の定義の違いは、言葉上ではわかっているのですが、じゃあ具体的に相談にのってくださいと言われてもどう答えていいのやら…って感じです」
大塚T 「うーーん、そうね~。まず出向と派遣の違いはわかってるわよね?」
新米 「あ、はい。それはわかっているつもりです。派遣は指揮命令権が派遣先にありますよね」
深田GL 「ん?それは、出向も一緒だよ」
新米 「えっ?そうでしたっけ。あれっ?出向と派遣って何が違っているんでしたっけ。わからなくなってきた…」
大塚T 「簡単に言うと、派遣は雇用契約を結んでいるのは派遣元のみだけど、出向が雇用契約を結んでいるのは、出向元と出向先の両方よ。両者とも指揮命令権は業務を行なっている会社にあるという点で共通しているけど、労働契約を結んでいるのはどこかという点で違いがあるのよ」
新米 「そっか、労働契約を結んでいる先が違うんですね。しっかり理解しておかなくっちゃ」
E子 「ついでに業務請負との違いもおさえておいてね。請負の指揮命令権は請負元で、企業からの指揮命令は発生しないわ」
新米 「あ、アウトソーシングする場合ですね」
E子 「そう、でも、アウトソーシングって一言でくくってしまうなら、派遣もアウトソーシングの一種よ。言葉の定義は区別しないとね」
新米 「はい、そうですね…」
出向の契約書は意外と大変
深田GL 「ところで、出向を合法にすすめるには出向協定書と出向契約書と雇用契約を作成しないといけないぞ」
新米 「出向協定書と出向契約書と雇用契約…?そんなに書類を作成しないといけないんですか?」
E子 「そうよ。これ、案外知らない人多いみたいだけどね」
新米 「雇用契約書は、出向元と出向先とに雇用契約があるなら両方と結ぶことになるんですよね?」
E子 「そうよ。そこは理解できているみたいね」
新米 「出向協定書と出向契約書は誰と誰の間で結ぶものなんですか?」
深田GL 「出向協定書は、出向元と出向先間で結ばれるものだよ。Aさんを出向させるにあたり、二社間でどう言う内容で出向を行うのかという取り決めをするんだ」
新米 「どんなことを決めておくんですか?」
深田GL 「そうだね。出向期間はもちろん、給与全額のうちいくらを出向元から、いくらを出向先から支給するのか、賞与や通勤手当、退職金はどうするのか、就業規則の適用はどうするのか、福利厚生等に関する費用、や出張時の旅費、日当、他にも雇用保険や健康保険、厚生年金保険、労災保険はどちらが取扱いするのか、その負担はどうするのかなど二社間の決め事を協定するんだよ」
新米 「そっかー、そういうことをあらかじめ決めておかないといけないんですね」
深田GL 「出向契約書は、出向元が従業員とこれから出向先に言ってもらうよという意味の、退職金の扱いなど、出向期間中の扱いについての契約の詳細だね。なぜなら就業規則には、『出向させることがある』といった程度の簡単な規定しか記載されていないことがほとんどだからね」
新米 「確かに…。就業規則では、細かなことまで決めてないですもんね」
E子 「それから、出向料の取り決めも同時にしておかないとね」
新米 「出向料?」
E子 「そうよ、出向料。出向にかかる費用の分担のことね。これを適性に取り決めしておかないと税務署の調査でも困るのよ」
新米 「税務署の調査まではよくわからないですよ~」
深田GL 「いやいや、所得税のことは給与計算をしていて知っているだろう?出向に関する税に関することも知っておかないとな。うちの事務所では、簿記検定の2級までを必須としているだろ。お金のやり取りの仕訳はもちろん、それにまつわる行政の調査では何を見ているかはおさえておかないといけないぞ」
新米 「あ、はい…」
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