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バイオテロ説が急浮上。新型肺炎の蔓延が映す破滅へのプロローグ

ついに世界保健機関(WHO)が「国際緊急事態」を宣言し、日本も感染者の入国を拒否する「指定感染症」とした新型コロナウイルス。その感染源は武漢市内の市場で売られていた野生動物とされていますが、「本当に偶発的なウイルス感染のみで引き起こされたのか?」とするのは、元国連紛争調停官で国際交渉人の島田久仁彦さんです。島田さんは今回、自身のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』で、拭いきれない「2つの可能性」を様々な証拠ともに提示しています。

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新型コロナウイルス蔓延が映し出す破滅へのプロローグ

今後1,000万人単位で人類の生命を奪うような事態が起こるとしたら、それは戦争でも核ミサイルによってではなく、非常に感染力の強い伝染病によるものだろう。

2015年だったでしょうか。私も光栄なことに毎回スピーカーとして参加し、様々な事柄に対して未来展望を語らせていただくFutures Conferenceにおいて、マイクロソフトの創始者で、Gates Foundationの共同代表であるビル・ゲイツ氏が予言した内容です。

通常、Futures Conferenceでは「XX年までにこうなる」という予言をして、それを実現させるための協力を聴衆に呼びかける形式を取るのですが、この予言については、年限は示されず、代わりに「それは、いつ起きても不思議ではない」というタイムラインが示されました。横で聞いていて、その後のディスカッション中、背筋が凍った記憶があります。

その予言に似た状況が、中国・武漢市を震源として世界に広がっています。そう、日本でもついに感染者が出て大騒ぎになっている「新型コロナウイルスの感染拡大」です。中国政府からの発表で、かつメディアが流している情報によると、「感染のスタートは武漢市内の海鮮市場で、そこにいるはずのない野生動物が売られていて、動物検疫も実施されていなかったために、その野生動物から人間に感染した」と言われ、当初、重篤な肺炎で当局に隔離された41人のうち32人がこの市場を訪れていたため、この32人から感染が広がったというのが通説ですが、果たして本当にそうなのでしょうか?

数年前のエボラウイルスのパンデミック封じ込め対策でご一緒した親しい感染学者や細菌学者によると、「仮に感染源やきっかけについての情報がすべて正しいと仮定すると、潜伏期間が2週間ほどある今回の新型コロナウイルスの菌に感染した人たちが、症状がない潜伏期間中に家族をはじめとする周辺の人々に菌を広め、一気にパンデミックな状況になったのだろう。しかし、今回、不可解なのは、感染が広がるにつれ、コロナウイルスの感染力が高まっており、またこの2週間の間に菌の形態がどんどん変わっていることだ。言い換えると、コロナウイルスが自身で進化を遂げていることになる。この感染力強化と自己進化が進むのであれば、想像を超える死者を出す事態になるかもしれない」とのこと。

中国、香港、英国、米CDC、WHOなどにいる世界各地にいる専門家でもある友人たちに見通しを尋ねてみたところ、同じような見解と強い警戒が語られ、「今回のケースについては、事態が収まるとしても、早くても4月か5月頃になる。もしかしたら、もっと長引く可能性がある。そうなると、世界中、かなり広範囲にウイルスが撒き散らされることになり、確実に罹患者はうなぎ上りに増加し、完全に封じ込め不可能な状態に陥り、結果として史上最大かつ最悪のパンデミック・クライシスになる可能性が高い」との考えを示しています。

1月29日の段階では、中国当局の発表では武漢市での死者数は136名と言われていましたが、30日にはその数は160名を超えており、確実に今後も死者数は増え続けることになり、間違いなく、公衆衛生上の最大かつ深刻な懸念となるでしょう。報じられている通り、新型コロナウイルス感染においては、当初は軽症者やまだ菌の潜伏期間真っ最中の人たちも多く、患者・感染者の水際での捕捉は非常に困難であるからです。

そしてその真実がまた大きな悪影響を国際情勢に与えかねません。それは、先ほども触れましたが、私が数年前に、安全保障の専門家としてWHOのエボラパンデミックの封じ込め対策に参加した際にも言われたことなのですが、「感染が広がると、同時に恐怖心も広がり、それは世界各国に伝播し、人々の不安を強力に掻き立てる」ということです。

結果、人々の心に植え付けられる恐怖心とそれによる不安は、世界の株式市場において世界同時株安を引き起こし、企業活動にも大きなネガティブな影響を与えるため、世界経済に対して大きなネガティブインパクトを引き起こします。

トランプ大統領がスタートした強権主義と自国第一主義の広がりが、世界の株式市場での最高値更新を連発してきましたが、その熱に一気に冷や水を浴びせ、経済の悪化とともに、世界におけるブロック化が進み、一触即発の緊張状態に陥る可能性があると思われます。その悪い流れを、今回の新型コロナウイルスのパンデミックがさらに加速させると思われます。

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しかし、ここでどうしても不可解な疑問が出てきます。

さて、このようなシナリオ、本当に偶発的なウイルス感染“のみ”で引き起こされるものでしょうか?

詳しくはあまり表立って言えませんが、いくつかの不可解な状況が存在します。

一つ目は、武漢市およびその周辺には、公式には発表されていませんし、中国当局も決して認めませんが、中国人民解放軍の生物兵器研究開発施設が2か所存在します。そしてその一つは、噂の海鮮市場の近くに立地しています。

未確認情報ですが、そこで生物兵器として開発されていた新型コロナウイルスに、職員や関係者が誤って罹患し、武漢市の感染源となったという可能性です(誤って施設で菌に触れてしまい、それに気づくことなく、普段通りに海鮮市場を訪れていて、菌をばらまいていたというシナリオ)。

この場合は、生物兵器の工場の存在の有無は横に置いておいたとして、感染源が、野生動物ではなく、人間だったというシナリオで、その後、人に一気に感染が広がっており、かつ感染力が異常に強いことから鑑みて、大いに可能性のある推論だと考えられます。

二つ目は、「何者かによるバイオテロ説」です。これについては、中国当局が自ら自作自演することは非常に考えづらいので、“だれか”ということになりますが、誰がそんなことをし得るのかという点については、完全な憶測になり、それは要らぬ懸念やデマを生むことになりますのであえてここでは挙げません。

とはいえ、中国の自作自演である可能性も打ち消せないのは、WHOによる非常事態宣言発出を必死で阻止する姿勢が見えることです。

WHO事務局長御一行様が北京を訪問し、習近平国家主席とうやうやしく会談する様子が配信されましたが、この例を見ない高レベルでの対応(つまり習近平国家主席が直に会うという対応)は、要らぬ疑念を抱かせます。通常は、李首相対応でしょうし、今回の対策でもチームのリーダーは李首相が努めていますので、WHOの事務局長が相手であれば彼が面会するのが通例でしょう。

しかし、問題の深刻さのアピールなのか、WHOを自分サイドに付けておくための過剰接待だったのか、今回については異例中の異例で、習近平国家主席が直に会っています(ちなみに、中国政府の“友人たち”曰く、「まあ、今回の件は非常に深刻だからねえ…でも、習近平国家主席が直に会うのは確かに珍しい」とのことでした)。

その際に習近平国家主席から「非常事態宣言を出すような事態にならないよう、情報共有に努め、またWHOの専門家の派遣についても歓迎する」という発言がありました。先週のWHO緊急会議で非常事態宣言の発出が見送られた背景には、実質的にドナー国第1位になっている中国への過剰な配慮があったと見られます。言い方を変えると、中国政府からの圧力を受けての措置であった可能性が否定できません。バイオテロそのものを自作自演することは考えづらいのですが、非常事態宣言によっていろいろな経済活動が制限されると同時に、国際社会から中国に対する非難が激しさを増す危険性から、中国政府からの“要請”はあったものと強く推察します。

しかし、このバイオテロ説を打ち消せない理由は、私が国連で紛争調停官をしている際に、ABC兵器(核、バイオ、化学兵器)の軍縮と不拡散のお仕事にも携わっていたのですが、その際に専門家たちから示された分析結果の内容ゆえです。

核兵器(Atomic)については、私たちは、広島と長崎の悲劇の後、その威力と非人道的な性格ゆえに、軍拡競争と並列する形で、多くの人的資源と資金を投入して、コントロールする術を確立しました。今でも技術革新は進んでいますが、使用すると放射能反応という形ですぐにバレてしまうこともあり、実際に使用される可能性はほぼ無いと言っていいかと思います。とはいえ、私もこのメルマガで何度も朝鮮半島に使われる可能性を示唆してはいますので、可能性がゼロとは言い切れませんが。

化学兵器(Chemical)については、最近ではシリアでの使用が疑われていますし、以前、日本でも地下鉄サリン事件で用いられたため、まだ身近に存在する現実味を帯びた脅威ですが、こちらも使用されると、瞬時にその使用が検知されてしまうため、使用の抑止につながると同時に、仮に使用された場合でも、対策を迅速に打てるという“利点”があります。

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しかし、B(バイオ)の場合、今回の新型コロナウイルスや、2003年に世界を恐怖に陥れたSARSコロナウイルス肺炎の世界的感染のケースでも分かるように、感染してから発症するまで1~2週間ほど潜伏期間があるため、菌の保有者の移動範囲が広がり、接触する人数が広がりやすい状況下では、一気に感染が広がることになってしまいます。つまりスーパースプレッダーと呼ばれる一人で数十人を感染させる存在が増える可能性が高まります。特に移動手段の高速化とネットワーク化が進む中、感染者の捕捉が非常に困難な公衆衛生上の大きなチャレンジを作り出してしまいます。

また、生物兵器は「貧者の核兵器」と呼ばれているのを耳にされたことはあるでしょうか?化学兵器もそうなのですが、比較的安価に安易に製造ができると言われますが、公衆衛生が行きわたっていないコミュニティでは、様々なpoor sanitation起源の病気の蔓延に紛れ込ませて、一気に拡大するという効果が期待され、そして時間をかけて、広い範囲に広がり、多くの人たちに影響を与えるという特徴を指して、そのような不名誉なあだ名がついているそうです。

2001年の同時多発テロ事件発生の際、安全保障コミュニティで恐れられていたシナリオは、Twin Towersなどに激突した航空機にABC兵器、特にBio兵器が搭載されていなかったかどうかという点でした。幸運なことにそのような事実はなかったのですが、その後の分析のプロセスの中で恐ろしいシナリオが語られました。

それは、「アメリカなどに本格的にテロを仕掛けるのであれば、どこかで強力な感染力のあるウイルスに感染しておき、その感染者をアメリカ行きの航空機に乗せ、その際に荷物に持たせた菌のサンプルを、NYなどの地下鉄の駅でバラまかせる。そうすることで、1か月の間にNYを中心に最低200万人の死者が出る」という恐怖の分析結果です。その後、空港などで搭乗の際に、非常に検査が厳しくなったと思いませんか?この分析結果も一因だと言われています。

余談になってしまいましたが、意図してか否かは分かりませんが、このシナリオで描かれたような状況が今、新型コロナウイルスを通じて、世界で起こっているとしたら…。

私はいろんな種類の紛争や安全保障上の懸念事項の調停や交渉に当たってきましたが、残念ながら、今回の新型コロナウイルスの広がりが、バイオテロだったとしたら、私には調停する術がありません。しかし、29日にWHOからは、事務局長名でスタンバイ依頼がありました。悩ましい限りです。

実際のところはどうであったにせよ(本当に不幸なパンデミックである可能性も否めません)、大事なことは新型コロナウイルスに感染しないこと。そのためには、インフルエンザ予防のケース以上に、手洗いとうがいの徹底と、外出時のマスクの着用、そしてWHOやCDCの専門家曰く、アルコール消毒が有効とのことですので、しっかりと予防に努めましょう。それと十分な睡眠と休息もお忘れなく。

新型コロナウイルスとの戦いは短くても春先まで続きそうな長丁場ですが、私たちの心理がネガティブモードに入り、結果として社会や経済の悪循環、相互不信感からの争いなどを招かないように気を付けたいですね。

2020年、国際情勢にとっても、日本にとっても、非常に試練に満ちた1年になってしまいそうです。

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image by: B.Zhou / Shutterstock.com

島田久仁彦(国際交渉人)この著者の記事一覧

世界各地の紛争地で調停官として数々の紛争を収め、いつしか「最後の調停官」と呼ばれるようになった島田久仁彦が、相手の心をつかみ、納得へと導く交渉・コミュニケーション術を伝授。今日からすぐに使える技の解説をはじめ、現在起こっている国際情勢・時事問題の”本当の話”(裏側)についても、ぎりぎりのところまで語ります。もちろん、読者の方々が抱くコミュニケーション上の悩みや問題などについてのご質問にもお答えします。

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