危機管理の専門家が斬る新型肺炎対応。官僚機構頼みが危険な理由

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新型コロナウイルス感染症への日本政府の対応の遅さや危機感の薄さに批判の声も聞こえてきますが、危機管理の専門家であり、軍事アナリストの小川和久さんの目にはどのように映っているのでしょうか?小川さんは主宰するメルマガ『NEWSを疑え!』で、安倍政権の対応は「いまのところ及第点」と評価。それでも、日本人は外交と軍事と危機管理が苦手で、官僚機構頼みでは対応が遅くなってしまうと危険性を指摘し、さらなる政治主導の必要性を訴えています。

「拙速」でなければ新型肺炎対策はできない

新型肺炎(新型コロナウイルス感染症)では、日本という国が平和で安全な国として繁栄を続けていけるかどうかが、またしても問われています。

国の防衛でも、災害対策でも、広い意味での危機管理については「拙速」と「国際水準」がキーワードとなります。言葉を換えると、必要なことを適切なタイミングで実行するのが危機管理であり、そのためには世界のどこに出しても通用する能力を備えておく必要があるということです。

素早く目的を達することができなければ、国民の生命を守ることはできません。雑なところが沢山残ろうとも、まずは目的を達するために行動すること。後回しにしてよいものには目をつぶって、あえて手をつけないのです。日本では「拙速」という言葉が雑なことの代名詞のように使われ、ネガティブなイメージですが、実を言えば、これが肯定的に使う場合の「拙速」なのです。

古代中国の戦略の書『孫子』は、「巧遅は拙速にしかず」と言っています。どんなに完成度の高い対策や法律制度であっても、必要なタイミングに間に合わなければ意味がないからです。

しかし、人間の性と言いましょうか、悲しいかな、のちのち責任を問われたりしないように、対策を綺麗に書き上げようとするのです。その結果、後手を踏むことになり、手遅れになってしまいます。

この傾向は、受け身が基本的な姿勢である官僚機構に顕著に表れます。官僚機構は、既定の法律に従って動かざるを得ないからでもあります。そうした官僚機構の限界を超えなければ、国民の生命を守ることはできない場合があります。そのためには強力な政治のリーダーシップが必要となります。

残念ながら、日本人にはそういうセンスが備わっていません。海に守られてきた日本は、初めて外敵に侵攻され、占領されたのが1945(昭和20)年という恵まれた国でしたから、危機に対するセンスがDNA的に欠損していると言って構わないほどです。それを政治家が判っていないと、国防も危機管理もできないことになります。

繰り返しますが、外交と軍事と危機管理は世界に通用するもの以外は零点です。島国で生きてきた日本人は、この3点が苦手だということを自覚して、必要な手を素早く打って、新型肺炎を撃退して欲しいと思います。

いまのところ、安倍政権の対応は及第点の水準にあります。これをベースに加速して、官僚機構頼みでは遅きに失する様々な課題の解決に取り組んでもらいたいと思います。(小川和久)

image by: sutterstock

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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