同じような言葉を発しているのに、他人と何かが違う…。そんな人物、周囲に存在するでしょうか。今回の無料メルマガ『「二十代で身につけたい!」教育観と仕事術』では著者の松尾英明さんが、作家・武士道研究家で日ノ本塾を主宰する石川真理子さんの講演会に参加して体感した、「本物に触れる重要性」を記しています。
姿勢を正して頂けますでしょうか
本物に触れるということについて。
世の中には、明らかに「次元の違う」人がいる。立ち振る舞いや言葉遣い、醸し出す雰囲気などが、尋常ではない人である。一般の人とは、生き方がまるで違う人である。周りの人に「感化・影響」を与える人物である。
こういう人に会えそうな機会がもしあれば、積極的にそこへ出かけるべきである。
今回は、生粋の武家育ちの方のお話を聞く機会があった。「武士道から学ぶ現代の子育て」というテーマである。講師は作家・武士道研究家であり、日ノ本塾主宰の、石川真理子さんである。
冒頭に「教える人の歌」として、次の言葉を紹介された。
言葉で教える人尊し 姿で教える人なお尊し
石川さんは、祖母を尊敬していたという。祖母の前で「こうしなさい、ああしなさい」と言われなくても、そうしたいと思う。きれいな言葉や振舞をしたいと思わされるような凛とした姿に、感化・影響された訳である。
つまりは、教育は行動にあり、その姿にあるといえる。武家の人間として躾けられた「原則」が二つあるという。一つ目は、背筋を伸ばすこと。二つ目は、口角を上げて明るい表情で、朗らかであること。これらが、ひいては「人を大切にする」ということにつながる。
この話の後、会場全員に対し「皆様、姿勢を正して頂けますでしょうか」と言われた。私は会場の後ろから見ていたからわかるが、確かにみんな、お世辞にも姿勢がいいとは言えない状況だった。全員がすっと背筋を伸ばすことで、会場が「凛」とした空気になった。
続けて、辛くなったら「あと5分」を繰り返すというお話をされた。これが、克己心を鍛える基本となるという。
武士道の本質は、克己心。すなわち公の精神であり、私の対極である。
そもそも武士は、戦いの中だからこそ仕事があるといえる。平和な江戸時代に、警護の役割を失った武士が、一般の人に何をできるか。
それは、人々に「規範」を示すこと。あるべき姿を示すことである。
発せられた言葉が同じであっても、姿で重みが変わる。「何を言う」より「誰が言う」である。目の前の講師の先生の姿が、それが真実であることを如実に物語っていた。
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