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コロナ危機対応で、なぜ女性リーダーたちが成果を上げるのか?

前回記事「メルケル首相のスピーチが心に響き安倍首相の演説は空虚に響く訳」で、政治家に必要な共感性や分かり合う気持ちについて説いたメルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』著者の引地達也さん。今回は、コロナ危機の対応で活躍が目立つ女性リーダーたちによる「ケア性」に富んだ施策を紹介。対象的に、男が政治を牛耳る日本のほか、トランプ大統領やプーチン大統領などの「マッチョ」な政治の無力さを伝えています。

女性リーダーの「ケア性」とマッチョな政治の無力

世界中が新型コロナウイルスの危機に対応する中で女性リーダーの活躍が注目され、内外の報道でも取り上げられている。ドイツのメルケル首相、ニュージーランドのアーデーン首相、台湾の蔡英文総統、アイスランドのヤコブスドッティル首相、フィンランドのマリン首相らの対応は国民に語るメッセージが融和的でありながらも力強く、ウイルスという見えない恐怖に向かうための連帯感へと導いている。

それはウイルスへの対応を「戦争」と表現し、マッチョな闘いをしようと国民を鼓舞するような米国のトランプ大統領やロシアのプーチン大統領とは対照的だ。

某民放ニュース番組で女性のコメンテーターが「しがらみがない」ことが女性の活躍の背景であると解説したが、それ以前に女性が持つケア性とそれを受け入れる社会の相関関係に注目しなければ正しい理解はできない。「しがらみ」で語ってしまうのは、政治の世界における「男性の中の女性」という錆びついた感覚を確認するだけである。

時には男性のような強さを見せるメルケル首相だが、引退を表明した後のコロナ対策では客観的かつ科学的だ。1月の段階で数値データを示し、国民の最大7割が感染する可能性を示し、危機への備えと対応を促したのも早く、確実に欧州各国よりも死者数を抑え込んでいる。

ニュージーランドのアーダーン首相は主力産業である観光業を停止し、ロックダウンを実施。台湾の蔡英文総統は中国でのウイルス発生の確認後、マスク増産はじめ124の措置を講じた。

米紙USAトゥデイは識者の「共感性」という表現で女性リーダーの活躍を解説したが、これこそが「ケア性」であり、男性が優先する傾向にある「正義」に対しての、役割であり、危機の中にある今、求められている政治と社会のキーワードであろう。

ケアの必要を国民にどう伝えていくのかが現在のリーダーに求められている。さらに、伝えるだけではなく「国民からの共感と国民への共感」という双方向の「メディア能力」も必須だ。

危機の中での情報発信は分かりやすく、不安を解消しながら、適切な行動を促すことが目的とすれば、女性のリーダーは生命に対する慈しみの感覚と母性を基本としたケア性を備えていることで、そのメッセージは自然と「命を守る」感覚を宿すことになる。

ノルウェーのソールバルグ首相は大人の参加を禁じた記者会見で全国の子供たちから寄せられた質問に答え、デンマークのフレデリクセン首相も子供たちからの質問に答える形で3分間の短い記者会見を行った。子供に語りかける演出でケア性を発揮し、結果として国民に浸透するメッセージを発信したのである。

さらに斬新なところでは、昨年12月に最年少の国家元首に就任したフィンランドのマリン首相がコロナウイルスに関する正しい情報発信を既存のメディアではなくソーシャルメディア上の各年齢層のインフルエンサーに要請した例がある。

日本の場合は男性が牛耳る政治の世界で、男性的なメッセージ優位でまだまだマッチョだ。マスクを配るというのは上意下達の発想で、給付金の迷走は、事業者への30万円にしろ、個人給付金の10万円にしろ、政治家目線の政策で国民は不在のままだ。今、危機を協力し合って乗り切っていくために何が必要かという目線で考えていけば、必要な政策は浮かび上がってくるのだが、プロセスが逆転している。

メディアで解説される30万円に10万円が勝ったのは自民党内なり公明党の存在なり、という政治力学によるとの解説も正しいのだろうが、国民の命を守るための「ケア性」を帯びた政策として国民が納得し、かつコロナウイルスを乗り越える協力が得られるか、を真剣に考えてほしい。

世界の女性リーダーのケア性に注目しつつ、政策決定のプロセスをオープンにしてもらいたいと願ってみても、長年染みついたマッチョな姿勢はなかなか変容するのは難しいだろう。長期政権下であまりにも発想や対応が硬直化したことを自覚し、ケアなる思想を基本に対応に当たってほしい。

image by: Imaxe Press / Shutterstock.com

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特別支援教育が必要な方への学びの場である「法定外シャローム大学」や就労移行支援事業所を舞台にしながら、社会にケアの概念を広めるメディアの再定義を目指す思いで、世の中をやさしい視点で描きます。誰もが気持よくなれるやさしいジャーナリスムを模索します。

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