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かつての「和民」にも学べ。コロナ明けに飲食店が生き残る術とは

新型コロナウイルスにより、壊滅的な打撃を受けた飲食業界。「コロナ自粛」が解除された地域でも、客足が戻らず多くの店舗が苦戦を強いられています。今後、お客様に戻ってきたいただくためには、飲食店サイドはどのような手を打つべきなのでしょうか。今回の無料メルマガ『飲食店経営塾』では著者で飲食店コンサルタントの中西敏弘さんが、お客様に「わざわざ外食したい」と思っていただくため店舗サイドがすべきことを記しています。

過去の事例から、今、やるべきことを考える!

「リーマンショック後のこの2~3年で、随分居酒屋業界には大きな変革がありました」

とは、今から約10年ぐらい前のセミナーで話していたことです。今回、掲載した写真は、当時のことを説明するために作った、居酒屋業界のポジショニングマップ。このマップをもとに、2000年前後から10年ぐらいの業界動向についてセミナーで話していました。当時は、リーマンショックの後で、居酒屋業界も非常に動きのあった時でした。そのときに説明していたことを簡単にまとめておきます。

※ 写真はこちらをご覧ください

赤い部分。ここが、2000年前後から多くの居酒屋が出店していたゾーン。なので、ポジショニングマップには、レッドゾーンということも踏まえて、「激戦地帯」と名付けました。

1992年に誕生した「和民」がその中心にいたと思います。和民は、当時、東京中心の出店でしたが、手作り料理と“ダウンサービス”が話題となった接客サービスが売りのお店で、客単価は、2,800円ぐらいから3,000円。この和民が爆発的な人気を博しました。この和民の出現により、2,800円から3,000円の客単価で、少し「非日常感」を演出したお店が、全国に増えたような気がします。

当時、僕はコンサルタントを始めたばかりの頃でしたが、このフォーマットのお店が、全国どこに行ってもあって競争が激しいなあと思っていましたが、ある程度、どこのお店もお客様に支持されていたように思います。

そして、2000年ぐらいの頃から、この2,800円から3,000円の客単価のお店よりも、ワンランク上の「アッパーミドル」と言われるお店が、少しずつ出現してきました。このゾーンは、専門性が高いことと「個室重視」のお店であったように思います。2,800円から3,000円の客単価のゾーンのお店では、“飽き足らない”という人をターゲットにしていて、このゾーンも少しずつ賑わいを得ていたように思います。

そんなころ、2008年9月に発生したリーマンショックにより、“お客様の外食頻度”が減少し、飲食業界にもかなり影響を与えました。

特に、居酒屋業界では、先述した「アッパーミドル」と言われたゾーンに位置した店は壊滅的で、このゾーンはこの後しばらく衰退してしまいました。また、「激戦地帯」に位置するゾーンの居酒屋も大きな打撃を受けたところも多くありました。

そこで、各社がお客様の外食頻度の減少、外食への出費減少に対応するために、「低価格業態」(客単価2,000円前後、もしくはそれ以下)の出店が2009年に、随分増えました。その最終系が「270円」「280円」という均一価格のお店(今の鳥貴族さんとは違った総合居酒屋)も、たくさん増えたと思います。

この「低価格業態」のお店は、その頃、多くのお客様が足を運んでいたと思うのですが、基本的には、「安ければいい!」「とにかく安く飲みたい!」というお客様ニーズに対応した店で、お客様は、高い商品力、接客力を求めていないというのが特徴でした。

リーマンショック以前は、それほど「低価格業態」の店はそれほど多くなく、多くのお客様がお酒を飲む際は、「激戦地帯」の客単価2,800円から3,000円のお店を利用していたと思います。しかし、低価格業態ができたことで、「安く飲めればいい」という人は、低価格業態へ移行し、このゾーン(激戦地帯)に残ったお客様は「外食好き」のお客様でした。

この「外食好き」のお客様は、外食頻度も高く、お店に求めるものも高いので、商品や接客に対しての要望が高く、商品力、接客力の高い店にしか集まらないような状況だっと思います。そのためか、お客様獲得のために、昔よりも商品や接客力を高めるための社内勉強会等を始めるお店がすごく多かったようにも思います。そうしないと、生き残れなかったのです(この頃、居酒屋甲子園にも参加するお店が増えていったような気がします)。

一方、品質の低い店は苦戦しているところが多かったですし、全体の利用客数も減っていたことから、閉店を余儀なくされていたように感じていました。

なので、この頃は、こんな話をしていました。

「以前の『激戦地帯』にいる居酒屋は、『質』の強化が必要で、質の強化が出来ない店は、『安く』するか、それとも店を閉めるしかないのでは…?」と。

この後、居酒屋業界は、ワインバルが脚光を浴びていくことになるのですが、リーマンショック後の一番の変革は、

  1. 低価格業態ができ、ある程度、繁盛した
  2. 以前の激戦地帯の業態に変化、質が求められるようになった

と僕自身は分析していました(あくまで私見です)。

さて、今回のコロナ後ですが…。リーマンショック後と同じように、将来への先行きに対する不安感から財布の紐を占める人は増え、デフレの傾向になるのはある程度想像がつきます。そのため、低価格業態への需要は一時的にかなり増えるのではないかと思います。

また、すぐにコロナ前の状況に戻るということは考えにくく、特に、居酒屋業態は、しばらくテイクアウトやデリバーで売上を補わなければならない状況が続くでしょう。また、テイクアウト、デリバリーが普及(定着?)した今、そちらに移行してしまうお客様もいらっしゃることでしょう。

ただ、僕自身、テイクアウトやデリバリーを利用したり、自炊したりすることが、この1ヶ月多かったのですが、日が経つにつれ、

「あの店の焼き鳥が食べたい…」
「あそこのピザが食べたいなあ…」

なんて思うことが多くなってきました。やっぱり、家で食べるよりも、外食した時の料理の方が“圧倒的に美味しく”、経過劣化した商品では、やはり、満足度が落ちるのです。

ですから、今できることは、数は少ないかもしれませんが、「外食が好き」というお客様に対して、少しでも「外食してもらう」「店内飲食してもらう」ためには、しっかりとした3密を避ける対策や除菌対策はもちろんのこと、今まで以上に付加価値を提供することが求めらるのではないでしょうか?

飲食店、外食店の価値と言えば、やはり、「ライブ感」であり、“できたて”、“作り立て”の商品をいかにお客様に届けられるか?これが一番だと思います。

そして、その商品を少しでも美味しく召し上がっていただくための情報やさりげない接客、特に、当たり前のことを当たり前にやること(例えば、お替りのおすすめ、空いた皿のバッシング、取り皿交換、おしぼり交換など)がすごく大事なのではないかと思います。

家でも味わえることと同じレベルの外食店であれば、わざわざ外食する必要がないですからね。家では味わえないこととは、

などなどでしょうか?

自分でも書いていて「普通じゃん!」と思うのですが、でも、この当たり前のことを当たり前にやること、また、その当たり前のレベルの高いことが、すごく大切なのではと思います。

この10年、やはり、当たり前のことを当たり前にやっている、また、その当たり前のレベルを高く維持できている店こそが、生き残ってきたような気がします。

image by: Shutterstock.com

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若手飲食店コンサルタントとして、人気急上昇中の飲食店経営コンサルタント、中西敏弘が「売れる」飲食店作りの秘訣を論理的に、そして分かりやすく解説します。

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【著者】 中西敏弘 【発行周期】 毎週2回

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