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まるで「火事場泥棒」な政府・与党。予備費10兆円が意味するもの

明けて今週中にも成立する見通しと伝えられる第2次補正予算案。政府が示した使途が決まっていない10兆円もの予備費や巨額委託費の問題を、4日の新聞各紙は読売を除き1面で伝えました。メルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』の著者でジャーナリストの内田誠さんは、朝日新聞の紙面から論点を3点抽出。金額が「兆円」単位で感覚が麻痺するなかで、使途自由な予備費や巨額委託費を通そうとする政府・与党の振る舞いは「火事場泥棒的」との見方を示しています。

人種差別デモを巡る指導者の発言も。新聞各紙が報じた「コロナ禍」の出来事

ラインナップ

◆1面トップの見出しから……。
《朝日》…消費喚起策 委託費3000億円
《読売》…五輪 簡素化を検討
《毎日》…巨額委託費 異例認識
《東京》…850億円 追加委託へ

◆解説面の見出しから……。
《朝日》…「最大級」補正 やまぬ批判
《読売》…医療 感染隣り合わせ
《毎日》…コロナ予算執行に疑義
《東京》…「束ね法案」議論深まらず

プロフィール

■問題だらけの補正予算■《朝日》
■急浮上の「交差免疫説」■《読売》
■政治的リーダーの演説■《毎日》
■バイデンは「あおらない」■《東京》

問題だらけの補正予算

【朝日】は1面トップと2面の解説記事「時時刻刻」で、補正予算に対する批判を展開している。見出しから。

(1面)
消費喚起策 委託費3000億円
総額の2割 巨額、国会で批判

(2面)
「最大級」補正 やまぬ批判
総額の2割 やりすぎ
与党側要望 跳ね上がる
再委託額 国「認識なし」

2度の補正予算への批判が噴き出している。論点は3つ。1つ目は、1次補正の「Go Toキャンペーン事業」の総事業費1.7兆円のうち、事務局費用が3095億円で18%もの高さになっていること。あり得ない高い比率だということ。

2つ目は2次補正の予備費が10兆円にも上っていること。臨時的緊急的に出費が必要なケースで、いわば政府が勝手に使える金がそれだけあるということになり、憲法の大原則である「財政民主主義」に明らかに反している。

3つ目は、1次と2次に跨がる「持続化給付金制度」。《東京》がスクープした受託団体の「デザイン推進協議会」が設立に関与した電通などにほとんどの事業を再委託していた件で、協議会が法律で定められている決算公告をしていなかったことが判明。2次補正でも850億円で業務を発注する見込みで、発注先は同じ「デザイン推進協議会」となる可能性が高いことを経産省は認めているという。

●uttiiの眼

これもある種の「火事場泥棒」的な政府・与党の振る舞いということだろう。この種の話は金額が「兆円」単位になったりするので、当方も感覚が麻痺しているが、それにしても10兆円の予備費というのは、政府・与党のやることに文句は言わせないということと同義ではなかろうか。

急浮上の「交差免疫説」

【読売】は11面の解説面に、新型コロナ取材班の2人の記者による解説。見出しから。

(11面)
地域差解明 制圧のカギ
コロナ 少ないアジア死者数
習慣・遺伝 決め手欠く
「交差免疫説」が急浮上

ウイルスは世界に広がったが、日本を含むアジア地域で人口当たりの死者が少ない理由に着目し、解明する研究が盛んになっているという。

死者数を国際比較する際、感染者把握に差が大きいので、「致死率」(分母が感染者数)ではなく「死亡率」(分母が人口)で見るのが一般的という。日本の死者は2日現在で903人。死亡率は100万人当たり7人となり、欧米の10~100分の1。キスや握手の回数が少ないとか手洗いやマスクの習慣があるなどの「文化的要因」や医療環境の良さなどが考えられてきたが、死亡率の低さではインドや韓国、中国も同じで、「国民性や医療環境」だけでは説明できないという。

BCGも取り上げられるが、イランやブラジルは定期接種を行っているのに死亡率が高い。糖尿病などの生活習慣病の地域差との関連も言われるが、差が二桁に及ぶ点は説明できない。遺伝情報の差については、白血球の型でこれから比較研究が始まるようだ。

急浮上してきたのが「交差免疫説」。「過去に新型に似た弱毒のコロナウイルスが流行した結果、新型に対する免疫もある程度ついた」という考えだという。米ラホイヤ免疫研究所が、新型ウイルス流行前に採取・保存されていた血液を調べたところ、およそ半数から「新型を認識する免疫細胞が検出できた」という。日本でも東大と感染研で同様の研究があるという。

●uttiiの眼

BCG説はかなり有力かと思っていたが、ブラジルの状態を考えると、少なくとも「決定打」ではないようだ。ただ、要因は一つではないかもしれず、完全な解明までには様々な研究が必要なのだろう。ともあれ、弱毒性のコロナウイルスに対する抗体がどんな役割を果たしているのか、希望が持てそうに思える。

政治的リーダーの演説

【毎日】は2面に木曜日定例のコラム「木語」。見出しを以下に。

(2面)
指導者の演説の重み

坂東賢治専門編集委員によるコラム。黒人男性が白人警官に押さえつけられ死亡した事件を巡って全米に抗議活動が拡がっているが、1968年にキング牧師が暗殺された後の混乱と対比され、暗殺された日にロバート・ケネディ上院議員が行った演説に注目が集まっているという。

兄のケネディ大統領が暗殺され、自らも2ヶ月後に暗殺されるロバート・ケネディ氏は、その時、大統領選への出馬を表明し、インディアナ州で遊説中。キング牧師暗殺を知ったロバート氏は急遽、黒人街で演説を行い、原稿なしで5分間、米国社会の融和を求める即興的な演説を行ったという。全米各地で暴動が起きていたが、その後、演説の影響かどうか、インディアナポリスでは起きなかったという。

トランプ氏は、死亡した黒人男性に同情は示したが、「根深い人種対立の緩和につながるような言葉はなかった」と坂東氏。「一部の参加者の暴力を強調し、力による封じ込めを正当化しようとする姿勢は香港の抗議デモに対する中国の対応とも似ている」という。

●uttiiの眼

トランプ氏は、むしろ人種差別を積極的に煽ってきた人物。コラムの趣旨はよく分かるが、議論するレベルが少し違っているような気がする。米国はとんでもない人種差別主義者を大統領にしてしまった。

バイデンは「あおらない」

【東京】は4面に民主党の大統領候補となることが確実なバイデン氏のこの間の動きについて。見出しから。

(4面)
米黒人暴行死 デモ拡大
大統領批判のバイデン氏
「憎しみの炎 あおらない」

米ペンシルベニア州で国民向けに演説したバイデン前副大統領は、団結と差別の解消を訴えたという。トランプ氏が分断をあおり立てていると非難。「私は憎しみの炎をあおらない」とした。死亡する直前にフロイドさんが発した「息ができない」との呻き声に触れ、「この国では黒人らに新型コロナウイルスの死や失業が集中している。何百万人が人生で「息ができない」と言っている」と。

さらに、トランプ氏がデモ参加者を催涙ガスなどで排除した後、教会前で聖書を掲げて記念撮影したことを「人々の願いより支持基盤の欲求に関心がある」「国を憤りと恐れに満ちた戦場に変えた。分断が自らを利すると考えている」と非難。自分が大統領就任した後には、警察改革と医療保険拡大などに努めるとも。

●uttiiの眼

さすがに選挙が近づいてきて、コメントの内容が的を射たものになってきていると思う。ただ、トランプ氏が「分断が自らを利すると考えている」のはその通りだとしても、その作戦が功を奏してきたことも確かで、バイデン氏がトランプ氏を破るだけの力を本選で発揮できる人なのか、先が読めない気がする。

この記事の末尾には現状での支持率について触れていて、ロイターなどの世論調査の結果が紹介されている。抗議デモへの共感は64%。トランプ氏の対応への不支持は56%。支持は33%。支持は共和党員でも67%だったという。さらに、トランプ氏の支持率は37%。バイデン氏は47%で、今のところ、10ポイントの差がついている。

image by: Osugi / Shutterstock.com

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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