対峙している仕事があまりに辛かったりノルマがこなせなかったりした際、ついつい「ズルをしてしまえば楽になれるかも…」などという誘惑に駆られた経験をお持ちの方、少なくないかと思われます。しかしながら、「ズルの代償」は思った以上に大きくつくようです。今回の無料メルマガ『弁護士谷原誠の【仕事の流儀】』では現役弁護士の谷原誠さんが、ズルをしてしまうことの恐ろしさを冷静な筆致で記しています。
ズルは恐ろしい
こんにちは。弁護士の谷原誠です。
もし、自己向上を目指すなら、決してやってはいけないことがあります。それは、「ズルをする」ということです。
「当たり前じゃないか」
こう思う方が多いでしょう。しかし、ズルをすることの恐ろしさを意識しているでしょうか。
ここでのズルをする、というのは、要領よくやる、とか、効率化する、という意味ではありません。ごまかして、本来やるべきことをやらない、という意味です。
自己向上で、最も大切なことは、「自己コントロール」です。自分の怠け心を管理し、自分で決めたことをきっちりやりきる力です。
私たちがズルをする時、多くの場合には、上司や監督者、取引先等の他人の目をごまかす、という心理が働いていることでしょう。しかし、その前提には、「自分をごまかす」という心理の存在が必要です。ズルをする自分を許せなければ、他人に対してズルをすることはできないからです。
そして、ズルをする自分を許すためには、「ズルを正当化する」ことが必要となってきます。「今回、ズルをするのは、仕方ないのだ」「ズルをするのが正しいのだ」などと自分を納得させなければならないのです。
恐ろしいのは、この「ズルを正当化する」という部分です。正当化してしまったわけですから、今後も辛かったり、苦しかったり、怠けたかったり、する場合には、正当化されたズルが出てきます。1度だけでは済まないのです。
だから、ズルをしない人は決してズルをしないし、ズルをする人は頻繁にズルをする、ということになります。ズルの習慣化です。これは、自己向上を目指す人にとって、とても恐ろしいことです。
自己向上を図るためには、昨日の自分を乗り越えていかなければならず、それは、とても苦しいプロセスです。そんな苦しい思いをしている時に、正当化されたズルの誘惑が迫ってきたら、どうでしょうか。人間、なかなかその誘惑に抗しきれるものではありません。
もし、あなたが自分のことを意志が弱い人間だ、と思っていて、それでも自己向上をしたい、と願っているなら、より一層、小さなズルをしないよう注意しないといけません。ズルは自分を騙す行為であり、自分の決意に対する裏切りである、という認識でいることが大切だと思います。
人生において何よりもむずかしいことは、嘘をつかずに生きることだ。そして自分自身の嘘を信じないことだ。
(ドストエフスキー)
今日は、ここまで。
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