トランプは落選も同じか。身内も見捨て風前の灯火となった再選

 

黒人票はますますバイデンへ

黒人の人口比率は12.4%で(14年)、「あれ?そんな程度だったのか」と思われるかもしれないが、選挙では1つの塊としてマージナルなところで作用する。

塊と言うのは、1960年代の公民権運動以来、黒人の9割は民主党に投票するのが当たり前となり、またそれに応えて歴代の民主党政権は黒人の就職支援策などを打ち出してきたので、ごく一部の例外を除いて共和党に投票することなどあり得ないということである。

それがマージナルな作用を持つというのは、彼らは民主党それ自体にアイデンティティを託している訳ではないので、民主党の大統領候補が黒人にとって余り興味が持てない人物であるという場合、必ずしも積極的に投票に行こうとは思わない。前回16年のヒラリー・クリントンの選挙で起きたのがまさにそれで、08年と12年のオバマ選挙では黒人の投票率は65%を上回って再選に貢献したが、16年には60%を切り、それがクリントン落選の一因となった。

激戦区となって辛うじてトランプが獲ったミシガン、ペンシルベニア、ウィスコンシン、フロリダ、オハイオ、アリゾナの各州のうち3州では、黒人投票率が5ポイントでも増えればクリントンが勝っていたと言われる。

となると、今秋の選挙では逆に黒人の投票率がかつてなく上がり、そのために両党がせめぎ合いを演じている州で次々に意外な逆転現象が起きて、バイデンが地滑り的勝利を得るということもあり得るのではないか。

NBAのスーパースターであるレブロン・ジェームズや女子プロバスケットボールWNBAのスカイラー・ディギンズスミスなどが、11月大統領選で黒人はじめマイノリティーが投票に行くよう呼びかけ、そのための有権者登録を支援する活動まで踏み込もうという非営利運動団体「More Than a Vote(まず一票から)」を設立するなど、デモの広がりに表れた力を大統領選での「チェンジ」に繋げていこうとする動きも起きている。ジェームズらは、平和的な抗議デモに参加した黒人フットボール選手に対して、トランプが「国外追放にしてやる」と毒づいたことに反発して行動を起こしたもので、トランプの錯乱的な言辞がどんどん味方を減らし敵を増やす悪循環を招いていることが見てとれる。

崩れ始めた政権・与党体制

こうした中で、政権とそれを支える共和党の体制にもひび割れが目立つ。ブッシュ父政権の統合参謀本部議長として91年の湾岸戦争を指揮し、ブッシュ子政権では国務長官を務めたコリン・パウエルは、トランプのBLMデモへの対応を「憲法違反」と決めつけ、大統領選では民主党のバイデンを支持すると宣言した。共和党の議員も支持層も、心中ではトランプの言動をおかしいと思いながらも、今さら後に引けないとか、この局面で代わりを立てる訳にはいかないといった理由でしがみついている者が少なくないと言われているが、そこへ共和党の「重鎮」であり同党の「良心」とまで呼ばれるパウエルがこう言い出したことのインパクトは大きい。

それに励まされてか、マティス前国防長官のみならずエスパー現国防長官やミリー統合参謀本部議長までが、トランプの連邦軍によるデモ鎮圧方針に公然と異を唱えるに至った。トランプは激怒し、直ちにエスパーをクビにすると喚き立てたが、周りが「そんなことをすれば軍全体を敵に回すことになる」と説得して思いとどまらせたという。この有様を見ると、この人に「世界史上最大最強」と言われる米軍の最高指揮権を預けておくのは危険だとさえ思えてくる。

大統領選挙まで5カ月、任期満了まで7カ月、彼は心身のバランスを壊さずに職務を全うすることができるのかどうか。それができないのであれば、再選などあるはずがない。

(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2020年6月15日号より一部抜粋)

(続きはメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』を購読するとお読みいただけます。2020年6月中のお試し購読スタートで、この続きを含む、6月分の全コンテンツを無料(0円)でお読みいただけます)

高野孟さんのメルマガご登録、詳細はコチラ

 

初月無料購読ですぐ読める! 6月配信済みバックナンバー

※2020年6月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、6月分のメルマガがすべてすぐに届きます。

  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.450]ほとんど錯乱状態のトランプ米大統領(6/15)
  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.449]「拉致の安倍」が何も出来ずに終わる舌先三寸の18年間(6/8)
  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.448]安倍政権はいよいよ危険水域に突入した!(6/1)

いますぐ初月無料購読!

<こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー>

※初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込880円)。

2020年5月配信分
  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.447]「10月」という壁を乗り越えられそうにない東京五輪(5/25)
  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.446]何もかも「中国のせい」にして責任を逃れようとするトランプ(5/18)
  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.445]ポスト安倍の日本のアジア連帯戦略(5/11)
  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.444]結局は「中止」となるしかなくなってきた東京五輪(5/4)

2020年5月のバックナンバーを購入する

2020年4月配信分
  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.443]こういう時だからこそ問われる指導者の能力と品格(4/27)
  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.442]「6月首相退陣」という予測まで飛び出した!(4/20)
  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.441]何事も中途半端で「虻蜂取らず」に陥る日本(4/13)
  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.440]米国でも物笑いの種となった「アベノマスク」(4/6)

2020年4月のバックナンバーを購入する

2020年3月配信分
  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.439]1年延期でますます開催意義が問われる五輪(3/30)
  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.438]もはや「中止」するしかなくない東京五輪――安倍政権の命運もそこまでか?(3/23)
  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.437]改めてそもそもから考え直したいヒトと微生物の関係(3/16)
  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.436]後手後手をカバーしようと前につんのめる安倍の醜態(3/9)
  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.435]安倍独断で「全国一斉休校」に突き進んだ政権末期症状(3/2)

2020年3月のバックナンバーを購入する

image by: noamgalai / Shutterstock.com

高野孟この著者の記事一覧

早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料お試し登録はこちらから  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 高野孟のTHE JOURNAL 』

【著者】 高野孟 【月額】 初月無料!月額880円(税込) 【発行周期】 毎週月曜日

print
いま読まれてます

  • トランプは落選も同じか。身内も見捨て風前の灯火となった再選
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け