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筋トレのプロに聞く。人間の体も筋肉もあまり大きくならない理由

がんばってもがんばっても思うように筋肉が大きくならない。「なぜ?」「もう限界?」これは、ボディメイクに勤しむ多くの人が抱く疑問のようです。メルマガ『届け!ボディメイクのプロ「桑原塾」からの熱きメッセージ』著者の桑原弘樹塾長が、人間の進化と体の大きさと筋肉の関係を解説。筋肉は必要以上に大きくならないようになっているからこそ、大きくするには筋トレが必要なのだそうです。すなわち、がんばるしかないようです。

進化と筋肉の関係

Question

人間の体は進化と共にこれからも大きくなると思われますか?昔の人に比べれば現代人の体は随分と大きくなったと思いますが、これからもどんどんと体は大きくなるのでしょうか。そして筋肉は何故あまり大きくならないのでしょうか。体が極端に大きくならないように、筋肉も大きくならないように出来てしまっているのでしょうか。(40歳、男性)

桑原塾長からの回答

昔の人に比べて現代人の体が大きくなったのは、やはり栄養的な要素が大きいのではないでしょうか。食べ物がしっかりとあるという大きな前提のうえに、更には栄養学も進んできて、単なる食事ではなくサプリメントまで登場してきたわけですから。

人に限らず生物は様々な環境に適応して進化を続けていますから、とりあえずは現時点での姿はほぼ最適に近いのだと言えると思います。私たち人間も体のサイズには個人差はあっても、だいたい似たようなサイズ感の中での小さな差でしかなく、例えば身長3mの人がいないのはそれが人間として地球で生息していくうえで適していないからでしょう。

地上では重力という負荷がかかりますから、必要以上に大きくなってしまうと、関節や骨への負担が大きくなりすぎて耐えられなくなるという問題もあります。直立二足歩行で両手を器用に操り、高い知能を抱える人間にとっての最適な体のサイズとなると、ざっと一定の枠のサイズに入ってしまうのでしょう。

陸上に生息する生き物では象が一番大きな動物だと思いますが、それ以上に巨大な生き物へとなかなか進化はしていきません。それも大きくなるメリットがあまり無いからだと思います。

大昔の恐竜は確かに巨大な体をしていました。だからそれを支えるために、特に陸上ではティラノザウルスに代表されるように巨大な太腿が重心に近いところから生えて体を支えていました。それ以上に大きくなる場合は、水中もしくは半分水中といった具合に重力という負荷から逃げなくてはいけません。

当時の大きさは生きていくうえでのメリットも大きかったから、あそこまで大きくなる方に進化したのかもしれません。それは補食しやすいという事です。体が大きくて強いという事が捕食に有利になって、生き残る確率をあげていったのでしょう。

そして捕食が十分になることで栄養が行きわたり、そのためにまた体が大きくなる要素が備わって、どんどんと巨大化していったのです。皮肉なことにやがて捕食する獲物が減って来て、強大化した恐竜同士の争いになっていきました。

恐竜の絶滅は巨大隕石の衝突によるものですが、仮に隕石の衝突がなかったとしても巨大化という進化はそれ以上には進まなかったのではないかと思っています。

もし私たちの体が10倍になったとしたら、体重は縦・横・高さの掛け算でいくと約1,000倍へと増える事になります。すると1,000倍に増えた体重を支えるだけの骨、腱、内臓、そして筋肉を維持しなくてはならず、そこへのメリットは到底思い浮かびません。

ましてや人間は知能の発達により、捕食ではなく共存して集団を作る事で生存確率を高めていますから、むやみに大きくなる必要はないのです。

ご質問の件の筋肉もこのような適応と無縁ではありません。私たちの体は生存していくのに最適になるように適応を続けていますから、筋肉は必要不可欠であると同時に過度には必要無いと言う絶妙なポジションに置かれている気がします。

筋肉が必要である事は誰も疑う余地がありません。動くこと自体が、筋肉がなくては出来ないのですから。しかし筋肉は非常にエネルギーコストの高い器官でもあります。今のように飽食の時代においてはエネルギーの材料の心配はしなくて済みますが、人類のほとんどは飢餓の歴史であって、食べ物が不足している状態においてのエネルギーの高コストは悪と言ってもいい存在です。

また大量のエネルギーを作り出すためには、その過程における負担も大きくなります。代謝にかかわる様々な成分を常に作り出していく必要があり、そこにもまたエネルギーを使わなくてはならないという、高コストのスパイラルに入っていくのです。それが故に、筋肉は必要以上に大きくならないように、合成と分解の因子の綱引きがバランスを取っています。そしてそのバランスは質・量ともに分解に優位になっているのです。

では筋肥大を諦めるしかないのかと言われれば、そうではありません。あくまでも負荷に対する適応で進化をしていますから、筋肉に対して大きくならなくてはいけない理由を与えてやればいいのです。

例えば地上で生活する限りは常に重力という負荷を感じています。つまり重力という負荷に耐えられる肉体でなければ、生存はできないわけです。もし重力が増大しているというようなメッセージを筋肉に送り続ければ、それに適応しなくては生存が出来ないと判断をして筋肥大が起こるでしょう。ウエイトトレーニングは、まさにそのメッセージだと思います。

仮に短時間でも扱う重量を考えれば強烈なメッセージとなるはずですから、ある程度の頻度をもって継続していけば、筋肉は大きく強くなるメリットが大きいと判断して適応していってくれるのです。

誰もが徐々に老化が進みますが、その中でもメッセージに対して最後まで的確に反応をしてくれるのが筋肉だと思っています。だからこそ筋肉がもっとも最後まで成長してくれる器官であり、また筋肉がしっかりと働いているということは、自らの意志で動くといった、生命を活性化する基盤でもあるのです。

image by: Shutterstock.com

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桑原塾塾長 桑原弘樹は、国内大手食品メーカーでサプリメント事業を立ち上げ、全商品の企画開発に携わる一方、全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会 日本支部PDAなどの立場で、国内外問わず多くのトップアスリートに直にコンディショニング指導を行ってきた。サプリメントは作るだけにとどまらず、「日本で一番使っているのでは」と豪語するほどのユーザーでもあり、年間300回のワークアウトも欠かさない。サプリメントやダイエットなどの分野で、多くの情報が散乱する昨今。サプリメントを作り、自ら試し、活用法を指導してきた、桑原塾長が、本物で価値あるボディメイク情報を提供すべく、スクランブル発進する!!!

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