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もしコロナ禍で地震や水害が起きたら?マンション住民の心構えは

今年も全国各地に被害をもたらしている、記録的な豪雨。水害には比較的強いと言われるマンションですが、ウィズコロナ時代においてはどのような対策を講じる必要があるのでしょうか。前回の「最悪の場合『汚物』地獄も。災害時のトイレで起こる悲惨なケース」に続きマンション管理士の廣田信子さんが、自身の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』で震災対策を含め考察しています。

コロナ禍での震災、水害対策は?

こんにちは!廣田信子です。

今、マンションにおける災害対策もたいへんです。2年前ぐらいまでは、防災と言えば、地震対策が中心でしたが、この1、2年、集中豪雨による水害、巨大台風の風害等にマンションも直面するようになり、水害対策、風害対策も考える必要性が生じてきました。これらは、被害の発生の状況も、備え方も、被災後の対応も、まったく異なりますので、それらを、ごちゃごちゃにしないようにして、それぞれに対して備えるというのはたいへんなことです。あらゆる災害に対しての備え…というセミナーの講演依頼を受けると、とても話し切れませんから、結構苦労していました。

でも、災害は、想定外であることの方が多いし、日々、防災のことばかり考えて暮らしている訳にもいかないので、すべての災害に100%備えることは不可能です。ですから、住民が防災意識を高める機会を作りながら、いざとなったら、自然に助け合える人間関係をつくっておくことが一番重要。集まって暮らしているマンションは距離が近いので、いざとなると心強い住まい方。ということを伝え、住民が力を合わせて乗り切った事例をお話しするのですか…新型コロナウイルスが、その一番重要な「力を合わせる」…というところを危うくしてしまいました。それどころか、感染症の拡大という新たな「災害」にどう備えるかという課題も突きつけられています。3.11に書いた私の記事「コロナ危機の今、大地震が発生したら…」の心配は、つねに頭にあります。さらに、これからのシーズンは、コロナ禍の中での水害対策も考えなければなりません。

水害対策と言えば、「避難指示」の出し方、受け取り方がいろいろ問題になっています。結論から言うと、どんなに自治体から避難所に避難するようにという通知が入っても、マンション住民はマンションに留まった方が安全だと思います。

避難所に地域住民全員が入れるようなキャパシティがないことは明らかです。入れる避難所を探して彷徨うことにもなりかねません。自治体は、特定の地域に対して、戸建てに住んでいるか、マンションの中高層階に住んでいるか…なんて関係なく、一斉に「避難指示」を出します。それは致し方ないのです。

ですから、各マンションで、ハザードマップを確認して、最悪の時は、どこまで水が来るかを想定した上で、「避難指示」があってもマンションに留まる。もし、1階が水没の可能性があるのであれば、1階住民には、早めに、安全な知り合いの家に避難してもらうか、間に合わない場合は、マンションの上の階に避難できる場所を確保する。ということを、きちんと方針として決め、マンション住民に伝えておいた方がいいのです。地震と違って、水害の発生は事前に予想できますので、早めの各自の対応が何より重要になります。

昨年の台風19号のときは、かなり広範囲に「避難指示」が出されました。フォーラムでも、「避難指示」が出て避難所に行っても、とても避難所に入れるキャパシティがなかった…という話がありました。マンション住民も「避難指示」に従って行動したのです。こういった状況はいたるところで見られました。マンションの1階に暮らす車イスの方が、「避難指示」が出て、雨の中、かなり距離がある避難所に向かうという危険な状況を体験したという話も聞きました。自分のマンションの上の階に避難する方が、ずっと安全だったのに…です。

しかも、ぎゅうぎゅう詰めでも入れなかった避難所です。コロナ禍の今は、入れる人数もぐっと限られます。避難所は、他にどうしても方法がない方のためのものと割り切って、安全なところに住む親族や友人の家に避難するマンションの上階にある集会室や住戸に避難する…ことをまず考えるべきです。

ところがです。コロナ禍で、感染防止のため集会室の使用を制限し、住戸への家族の出入りにも気をつけている状況で、果たして、このような避難がうまくいくか…なやましいところです。昨年の台風時には、戸建て住宅が多い地域に建つマンションには、マンション住民それぞれの知り合いの戸建てに住む家族が、何組も避難してきたと言います。コロナ禍の最中の今年でも、そういったことが、昨年と同じようにできるでしょうか。

水害だけではありません。大震災に見舞われた場合にどう行動するか…という震災対応マニュアルには、感染症対策までは深く考えられていません。3密を避ける、ソーシャルディスタンス、大きな声を出さないなんて言っていたら、マンション内での対策本部や避難所の設置、各住戸への声掛けや助け合い、炊き出し等、すべてが回らなくなってしまいます。どういたらいいのか…という質問を受けますが、答えに窮します。

その辺をどう思うか、フォーラムで意見を聞きました。そうしたら、かなり明確な声を複数いただきました。マスクや消毒に気を付けるのは当然だけど、あとは、もうコロナのことは考えない。助け合うことを躊躇しないことだ…と。実際に、マンションで防災対策の最前線にいる役員の方の言葉は心強かったです。非常時には、「万が一、感染が広がったら…」と何もしないのが、一番問題です。覚悟を決めて、やれることを、精いっぱいすればいいんだ…と、思いました。

でも、いざとなると、感染を心配して、その対応を批判する人が出てくることは想定されますので、事前に、コロナ禍における災害対応の基本方針を住民に伝え、それを理解してもらい、自分たちでできる備えをしてもらうように働きかけることは、必要かも知れない…と思いました。

また、できることなら、1カ所に集まらなくても、遠方に避難していても、情報を交換したり、話し合いができるように、コロナ禍の今がチャンスですから、オンラインで話ができる仕組みをつくっておくと、災害発生後の合意形成に力を発揮すると思います。

人が直接接しなくては助け合えないところは、できる対策をしたら、あとは、あまり気にしないで実行する。直接接しなくてもできる部分には、オンラインを活用していく。コロナ禍における災害対策に関して、今は、そんなことを考えています。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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