地震や台風などの災害発生時に自宅で待機している住民がもっとも気にすること、それは「トイレ」ではないでしょうか。もし、断水してしまったら、もし停電してしまったら…そんな「もしも」のことを想定しておくことは結構大事なのかもしれません。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』ではマンション管理士の廣田信子さんが、あるフォーラムで議題にあがった「災害時のトイレ問題」について紹介。マンションなどの集合住宅で「トイレが使えなくなったケース」をあげ、災害時のための心づもりを推奨しています。
「トイレが使えない!」の原因もいろいろ
こんにちは! 廣田信子です。
昨日のフォーラムは、「災害時のトイレ問題」がテーマでした。みなさんは、「トイレが使えない!」と言った場合、どんな状況を連想しますか?
まず、思い浮かぶのは、水が出なくなって、トイレが流せなくなった…という状況だと思います。ということは、水さえ確保できれば、トイレ問題は解決でしょうか?
じゃあ、なぜ、水が出なくなったのでしょうか。「水が出ない」にもいろいろなケースがあります。
1. 給水管が破損して、水が供給されなくなった
それにも、2通りがあります。
(1)マンション内の給水管が損傷した
多くの場合、同じマンション内でも、水が出るところと出ないところが生じるでしょう。そこから、破損個所を特定して、修理をすることになります。
(2)もっと大元、浄水場や公共水道の設備に問題が発生して、水がマンションまで供給されなくなった
この場合は、地域全体で断水状態になり、それが長く続く場合があります。
自分たちではどうしようもないので、その間を耐えなければなりません。
2. 停電で給水ポンプが止まり、水が供給されなくなった
マンションの給水方式が、一旦受水槽に水をためて、ポンプで上階まで上げる方式の場合(この方式のマンションは多いです)「停電=水が止まる」になります。
公共水道から直接水を住戸に送っている戸建てや「直結方式」のマンションでは水が出るのに、「給水ポンプ」に頼っているマンションでは水が止まり、トイレが使えなくなる…という状況になります。
原因が停電ですから、エレベーターも使えず、夜は明かりもない中で、トイレが使えなくなる…というのは、かなり深刻な状況になります。
ただ、住戸や各階の共用部分には、「給水ポンプ」で水を送っていても、マンション内に、公共水道から直接で水を引いている個所(非常用水栓、散水用水栓、管理事務室の水道等)がある場合もあります。
水道料金の請求が別になっているので、すぐ確認できます。
そこは、停電に関係なく水が出ます。そのことを知らずに、災害時にうまく活用できなかった…というケースもあります。
普段から、直結水栓の有無、場所を確認しておくことが重要です。
また、今、公共水道の水圧がかなり高くなっていますので、停電時に、ポンプを通さず、直結で水を住戸に送るようバイパスをつくることで、
かなりの上階まで、水を送ることができた…という事例報告がありますが、これを実行するには、原則、水道局との話し合いが必要です。
3. トイレの排水系統に問題が生じて、水が流せなくなった
水が出る、出ないにかかわらず、「流すこと」そのものができなくなることです。
トイレの汚水配管、雑排水配管等の排水管は、基本、高低差、勾配で上から下へ、敷地内から公共下水道へと送っていきます。
地震によって、横引きの排水管が途中で曲がってしまうようなことが起ると、そこに汚物等が滞留して、つまりが生じて、その後、流したものは、どんどん配管内にたまり、たて管にもたまっていき、それが、一気にトイレの便器から逆流して噴き出すという最悪の事態が生じます。
こういったケースで怖いのは、しばらくは、普通にトイレを使えてしまうので、配管が破損していることに気が付くのが遅れるということです。
1階住戸から汚物が溢れて、初めて気が付くこともあるのです。
ですから、大地震があった場合は、配管の状況を確認するまで、「トイレ使用禁止」にする…というのがベストなのですが、生活に直結することですし、外観からではわかりません。何より使えてしまうので、制御が難しいのです。
どのくらいの規模の地震が発生したら、どのような状況が発生したら、確認できるまで、「トイレ使用禁止」にするか…ということが悩み深いのです。
この「流せない」ケースにも、
(1)マンション内の設備破損よって流せない
(2)公共下水道が破損してしまって流せない
の2種類があり、これが同時に発生することもあります。
(1)は自分たちで調査をして修復するしかありませんし、(2)は復旧を待つしかありません。
どちらも、復旧には、かなりの時間を要すると覚悟が必要です。
また、昨年は、水害で、水がマンション内に侵入し、それが、汚水管を遡る形で、住戸のトイレから水が室内にあふれてしまうケースが
発生しました。これも、復旧にはかなりの時間がかかりました。
汚水管から室内に水があふれる事故は、室内の後始末もたいへんです。
万一を考え、無駄だったらそれでいいじゃない…という覚悟を共有して、「トイレ使用禁止」に踏み切れるかどうか…が、災害時のトイレ問題の一番の「きも」かもしれません。
「災害時のトイレ問題」の話をしているとき、当然ですが、それぞれが思い浮かべる状況が違います。
特に、自分が経験したことに大きな影響を受けます。
「水」が出なくてトイレが使えなかった場合は、何とか「水」の確保さえすれば…と考えます。その時、「流せなくなる」というイメージは
湧かないことも多いのです。
私は、東日本大震災で、「流せない」状況がいかにたいへんかを体験しましたので、まずは、一番たいへんな、3.トイレの排水系統に問題が生じて、水が流せなくなった又はその可能性がある場合を想定して、災害時のトイレ問題を考えてほしいと思います。
それに備えておけば、自動的に、1.、2.のケースも乗り切れます。
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