MAG2 NEWS MENU

地方に広がる新型コロナ感染。GoToトラベルを即座に中止すべき訳

以前掲載の「東京除外は悪手。政府が「GoTo」の対象から本当に外すべき人々」では、安倍政権がGoToトラベルについて国民の理解を得るため付加すべき条件等を考察した、日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さん。今回津田さんは自身のメルマガ『国際戦略コラム有料版』で、「結果論的にはGoToトラベルは失敗」であるとしてその理由を記すとともに、今後政府が取るべき政策を具体的に提示しています。

新型コロナ感染再拡大

新型コロナ感染拡大で、全国的に新規感染者が増大している。この今後の対応を検討しよう。

新型コロナ感染評価関数を定義するべき

コロナ感染しても、日本人は、知らぬ間に獲得免疫があるので、死なないし広がらないから、経済活動を行うべきであるという評論家や傾向分析だけで楽観論を言う若手評論家が出てきて、大きな影響を与えている。

その影響でGoToトラベルを前倒ししたようである。しかし、その考え方を基盤にしたために、政策評価関数を定義していないようで、分科会で医学者と経済学者の意見を調整する客観的な基盤が存在しないように見える。

現実を見ると、やはり感染拡大と共に、60歳以上への感染が広がり、重症者が増えている。

基礎疾患を持つ人と60歳以上の人への感染を阻止して、経済活動を行うことが必要であるが、この人たちに拡大して重症者が増えたら、再度、GoToトラベルを中止して、それでも拡大するなら緊急事態宣言を出すべきである。その評価基準が見えない。

ということで、政府や分科会でベースとなる戦略的な論理ができていないように見える。

日本が実施している政策は、活動を活発化するダンスと活動を抑えるハンマーの(ダンス&ハンマー)政策であると認識することが必要である。

このため、ダンスをいつ初めて、ハンマーをいつ叩くかということが重要になる。このため、政策評価が重要なのである。

政策評価には、評価関数が必要になる。この評価関数は、コロナ感染死者だけではなく広い関連分野全部での死者数である。

そして、死者数を最小限にすることが、このコロナ対策の政策キーになっているはずだ。

死者数は、新型コロナでの死者と病院ひっ迫により治療できずに亡くなった死者と、景気後退での自殺者であろうと見る。サブ関数が対策出費総額となる。この出費総額はなるべく少なくしたい。対策支出を少なくして、コロナ後の経済的な自由度を確保することである。

この政策の終了は、治療方法が確立したときか、ワクチンが皆に打てる状態になった時点となる。長くて2年と見る。この期間で、どれだけ死者を減らせるかが、政府を評価する基準となる戦いである。他国と比較する戦いではない。

そして、この期間も短くすることである。コロナ・ワクチン1億人分が2,000億円でも、その期間が短縮するなら選択した方が安い。

新型コロナの死者を少なくするには、都市封鎖が有効であるが、反対に景気後退による自殺者が出るので、経済活動をしないといけない。しかし、自殺者を減らす方法は、事業給付金や雇用者給付金という手もある。

新型コロナの死亡者数は、重症者の半分と言われている。病院ひっ迫での死者数も第1波で分かっているはず。重症者は病院に3ケ月いて治るか死ぬかであることも分かっている。中等症患者も病院ひっ迫になるので、中等症者数も重要になる。

これらから、やはり優先するのは、地域での中等症者数&重症者数の限界値を作り、それに達したら、地域での都市封鎖、ロックダウンを行い、それが、複数都市に広がったら、全国的な緊急事態宣言を出すことである。

20代から40代までは免疫力が強いので、死なないので、死者数は増えない。このため、経済活動をしてもらう必要がある。本当は、旅行もして地方に金を落としてもらい、地方の旅館やホテルを潰さないようにしたい。これで対策支出を大きく減らせる。

しかし、地方には60歳以上の人が多くいるので、その人に感染すると地方の医療体制は脆弱であり、すぐに中等症者数&重症者数の限界値に来る。そうしたら、旅行先として閉鎖する。その地域のホテルには、事業継続給付金を出すことである。

県単位、町単位での中等症者数&重症者限界値を決めて、それに達したら、GoToトラベルを中止し、旅行者の受け入れを止めて、そして、病院がひっ迫したら、都市封鎖を行うことである。複数県が、それに達したら、緊急事態宣言の再度の発出をすることである。

2年の間に、これを複数回、繰り返すと見た方が良い。その評価関数と体制を早期に準備するべきである。

複数回の繰り返し規模を小さくするのは、感染者を出すクラスターを丹念に潰し、営業停止命令を出せる法律体系を整えることである。

憲法に国民の安全のためには私権の制限ができるとあり、これを利用して、営業停止できるようにしてほしいものである。また、クラスターの追跡をする保健所の体制も強化が必要である。

現状では、「夜の街」対策が不十分で感染を広げて、その上にGoToトラベルで、与論島のような医療体制の脆弱な地方に感染を広げてしまったという結果になっている。結果論的にはGoToトラベルは失敗であり、緊急事態宣言を出す前に、即座に止めるべきである。

トランプ大統領は米中戦争に乗り出す

ポンペオ米国務長官は23日、対中国政策について、強権的な手法で影響力を強める中国に「私たちが共産主義の中国を変えなければ、彼らが私たちを変える」と警戒感を表明。行動を改めさせるため、民主主義国家による新たな同盟を構築して対抗すべきだと訴えた。

さらに、国連や北大西洋条約機構(NATO)、主要7カ国(G7)、20カ国・地域(G20)などの国際的な枠組みを列挙し「経済、外交、軍事力を適切に組み合わせれば、脅威に十分対処できる」と述べた。

そして、「今週、我々はヒューストンの中国領事館を閉鎖した。スパイ活動と知的財産窃盗の拠点だったからだ。」と領事館閉鎖の理由を述べている。

その対抗処置として、中国は、成都の米国領事館の閉鎖を要求したので、今後、米中が相手国の公館閉鎖要求を繰り返すことになりそうである。

事実、トランプ米大統領は、中国が対抗処置を取った場合、米国内にある他の中国の在外公館の追加閉鎖も「いつでもあり得る」と言う。

これらのことで、トランプ政権で、ポンペオ国務長官などの強硬派が対中政策を掌握したことが明らかになった。今までは中国の米農産物の買い入れやエネルギー買い入れのために対中強硬派ではなく、ムニューシン財務長官などの対中穏健派が対中政策をリードしてきた。

しかし、トランプ米大統領は、新型コロナウイルスの感染拡大における中国の役割を理由に、中国との貿易合意の意味は私には「はるかに薄れた」との認識を示した。

そして、英ジョンソン首相は「中国びいき」と言い、近年、親中路線を歩んできたが、ファーウェイの5Gシステム向け設備の購入を禁止するなど、米国に同調している。そして、中国が香港への国家安全維持法を施行したことで、香港住民に英市民権付与し、英国への移住を認めるとした。

このように、世界は、米国を取るか、中国を取るかの「二者択一の世界」に巻き込まれている。

豪州政府は、新型コロナの発生源がどこかや、中国の感染初期の対応について、客観的な調査を要求したが、中国は強く反発。中国は、豪州産牛肉の輸入停止、豪州旅行自粛を自国民に通告した。

カナダは、米国の要請を受けて18年12月にファーウェイの孟晩舟副会長兼最高財務責任者(CFO)を逮捕して以降、対中関係が悪化している。

インドに対しては、中国はヒマラヤ地域での国境紛争で、インド兵を殺して、インドは対中政策を大きく変化させて、中国製品の使用を中止するとした。このインドと豪州で、豪印防衛協定を結ぶことになっている。

その中国は、インドの保護国であるブータン国境に軍を移動させて、領土要求をして、依然、インドとの関係悪化を深めている。

日本に対しては、尖閣諸島は中国の領土であり、日本漁船の操業を停止しろと要求してきた。

周辺諸国を含む米中対決により、英国は、太平洋に空母を派遣して中国との対決に備える方向である。

しかし、中国対決の前面に立つのが、日本となる。ロシアが南下政策で、その防波堤として日本と英国は日英同盟を結び、その後日露戦争になったように、今後は、中国の南下政策に対して、英国と米国は、日本と同盟関係を結び、台湾侵攻をする中国に対して、防波堤の日本を巻き込んだ「米英台日」対「中」の戦争になる可能性がある。

習近平中国国家主席は、国際的に四面楚歌の状態になっても、国内での失業者の不満があり、海外に突破口を開くしかない状況である。一方、トランプ大統領も11月の大統領選挙で、コロナ対策の失敗などを受けて、支持率が低下して、再選が危ぶまれている。

どちらの指導者も、戦争手前まで緊急を高めて、国内の不満などを愛国心に代えて、自分の地位を守りたいと思っているようだ。

事実、第4次コロナ経済対策と中国総領事館閉鎖要求した時のラスムッセン世論調査では、トランプ大統領の支持率と不支持率が49%vs49%で拮抗と大幅に改善している。

このように支持率を上げようとして、チキンゲーム状態になり下手をすると、米中戦争になってもおかしくない。日本にとっては、最悪なことになる可能性もあり、身構える必要がありそうだ。

さあ、どうなりますか?

image by: 首相官邸

津田慶治この著者の記事一覧

国際的、国内的な動向をリアリスト(現実主義)の観点から、予測したり、評論したりする。読者の疑問点にもお答えする。

有料メルマガ好評配信中

  メルマガを購読してみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 国際戦略コラム有料版 』

【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け