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「年金」65歳から支給額がアップする人しない人。世代間で大きな差

「65歳になると年金がアップする」そんな話を聞いたことがありませんか? それは誰が、どんな条件で、どれだけアップするのか、なぜアップするのか、などの詳細は分からず、ただ漠然と話を鵜呑みにしてしまっているのが現状だと思います。今回の無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』では著者のhirokiさんが、65歳以降に年金がアップする事例をわかりやすく解説しています。

65歳になると、何やら年金がアップするという話は本当なのか?

よく世間で話題になるんですが、65歳になると年金が増えると思われてる人が多いですね。もちろんそれは国民年金から老齢基礎年金が支給し始めるからというのもあります。ですが、貰える基礎年金額はあらかじめ年金定期便や、もしくは見込み額で把握されていらっしゃる事があります。

じゃあ、何をもって「65歳からは年金が増えるかも?」という事を期待されてるのでしょうか。それは夫(もしくは妻)の年金に付く配偶者加給年金から振り替えられる加算金の事を期待されてたりします。なお、その加算金は昭和41年4月1日以前生まれの人に対してしか付かない。そんなの不公平やん!って言われそうですね^^;時々言われますけどね。

なぜ昭和41年4月1日以前生まれの人だけに付くのかというのは以前何度か説明したんですが、再度また簡単に説明します。

国民年金は昭和36年4月から始まり(正確には昭和34年4月から)、20歳から60歳の前月までの40年間保険料を納めて、将来は65歳になったら国民年金を受け取るというものです。20歳から60歳までの40年間納めれば、満額の国民年金が受け取れる。

そんな中で昭和61年3月31日まではサラリーマンや公務員の配偶者(専業主婦など)というのは、国民年金に加入する必要はありませんでした。そうすると、例えば昭和30年4月生まれの人なら、20歳になるのが昭和50年4月ですよね。もし、20歳からサラリーマンの専業主婦だったら、昭和50年4月から昭和61年3月までの11年間は国民年金に加入しなくてもいいですよね。保険料払うの勿体ないし払いたくなければ加入しなくてよかったわけです。昭和61年3月までの年金制度だったらそういう事が出来た。

ところが、昭和61年4月1日からは国民年金に加入してもしなくてもいいよという選択は不可となり、それまで加入してなかった人も強制的に国民年金に加入させた(学生は平成3年4月から強制)。強制加入させるとなると、昭和30年4月2日生まれの人は昭和61年4月1日時点で31歳になってるわけです。さあ、31歳から60歳までしっかり国民年金に加入してくれよ!頼むぜ!となったわけですが…そうなると29年間しか加入しませんよね。20歳から60歳までの40年間国民年金に加入してやっとこさ満額の国民年金(令和2年度は781,700円)になるというのに、29年分だと56万円くらいにしかならない。

昭和61年4月から強制的に加入させるくらいなら、もともと20歳の時から強制加入にさせてよって思いますが、失った時間は取り戻せませんよね。国が勝手に国民年金に加入は自由ですよってやってただけだから、加入しなかった本人には責任が無く、国の事情にある。じゃあ何か救う方法は無いのかという事で、本人の配偶者が貰ってる老齢厚生年金に付いてる配偶者加給年金(令和2年度390,900円)に目を付けた。

あなたは昭和何年生まれ?加算額をチェックしてみよう

元々、配偶者加給年金というのは夫の老齢厚生年金に一生付きっぱなしという年金でした。妻が死亡するか、妻と離婚などしない限りは。夫の老齢厚生年金に妻の生活費分の役割として、配偶者加給年金が支払われていたわけです。まあ、会社に勤めてる時も妻が居たら家族手当が付いたりしますよね。それと同じですね。でも、昭和61年4月からサラリーマンや公務員の妻も国民年金に強制加入させて、将来は妻が65歳になると妻名義で国民年金が受け取れるようになりました。昭和61年4月からの改正で女子の年金権が確立されました(それまでは専業主婦は無年金でいいだろうという考え方だった。夫に家族手当としての加給年金を支給するから)。

65歳から妻に国民年金からの保障が受けれるとなれば、妻が65歳になればわざわざ妻の生活費分である配偶者加給年金を夫に支払う必要なんて無いですよね。過剰な保障になってしまう。だから、夫の配偶者加給年金は妻が65歳になって妻自身の国民年金が受け取れるようになると消滅してしまう。

ところが、冒頭で言ったように、昭和30年4月生まれの人だと31歳からやっと強制加入になった人が居ましたよね。昔はそういう人が多かったのです。じゃあ、この人が20歳から31歳まで11年間加入できなかった分、何か足しになるものは無いかという事で、妻が65歳になったら夫の配偶者加給年金から概ねその11年分に相当する配偶者加給年金を振り替えて加算する事にしたんです。加入してなかった分に相当する加給年金を妻に与えるようなイメージですね。昭和41年4月1日以前の生年月日により、振替加算額はそれぞれ異なるんですが、昭和30年4月2日生まれの人は年額51,052円(令和2年度価額)です。

加給年金と振替加算(日本年金機構)

もし、妻が31歳から60歳までの29年間しか国民年金に加入してなかったら、65歳から貰う老齢基礎年金は781,700円÷40年×29年=566,733円+振替加算51,052円=617,785円になる。あと、住民税非課税世帯で、前年所得+前年の公的年金収入≦779,300円(令和2年8月からは所得基準は779,900円)なら年金生活者支援給付金も付く。この29年間国民年金加入の人なら、年金生活者支援給付金は5,030円(令和2年度基準月額)÷40年×29年=3,647円(年額43,764円)。

というわけで最後に手短に振替加算支給例。以下は妻に加給年金で、夫に振替加算の事例としています。

知らないと損する「振替加算支給」の事例

1.昭和31年7月19日生まれの妻(令和2年度に64歳になる)

(令和2年版)何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法!

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妻には厚生年金期間は20年以上あり、現在は昭和36年3月11日生まれの夫(59歳)を持つ(夫には厚生年金期間は20年以上無くて、10年分の厚生年金期間があるとする)。妻は令和3年7月18日に65歳を迎える。だから、妻の老齢厚生年金には令和3年7月の翌月である令和3年8月分から配偶者加給年金390,900円(令和2年度価額)の支給開始。その後、夫は令和8年3月10日に65歳に到達する(この時点では妻は69歳)。

夫が65歳になって夫自身の老齢基礎年金と10年分の老齢厚生年金を貰い始めたので、妻の老齢厚生年金に加算されていた配偶者加給年金は令和8年3月分をもって消滅する。その代わり、夫が昭和41年4月1日以前生まれの夫だったから、生年月日に応じた振替加算が妻に付いてた配偶者加給年金から振り替えられて夫の老齢基礎年金に付く。夫が65歳になる令和8年3月の翌月である令和8年4月分からの振替加算(令和2年度価額20,916円)。

加給年金と振替加算(日本年金機構)

振替加算は例外を除き、基本的に一生貰える。

※ 追記

この夫の厚生年金期間が20年以上の年金が支給される場合は振替加算は付かない。さらに、この夫は厚生年金を貰うとすれば64歳(令和7年3月)の翌月から貰う人なので、64歳時点で20年以上の厚生年金が貰えるのであれば、妻の配偶者加給年金は夫が64歳になった翌月分である令和7年4月分から全額停止となる。
そこは気を付けなければならない(振替加算は妻でも夫でも構わないので、事例では妻の加給年金から夫へ振替加算としています)。

では本日はこの辺で。

image by: Shutterstock.com

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佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
このメルマガを読んでいれば年金制度の全体の流れが掴めると同時に、事例による年金計算や考え方、年金の歴史や背景なども盛り込みますので気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

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【著者】 年金アドバイザーhiroki 【発行周期】 不定期配信

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