名旅館「加賀屋」の女性客室係が気づいた、母娘が暗い顔の理由

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全国最大級の規模ながら、隅々にまで目が行き届いたおもてなしの細やかさから「日本一の名旅館」と呼ばれる、石川県の和倉温泉「加賀屋」。年間30万人ものお客様を集めたその魅力は、どこから湧き出でるのでしょうか。今回の無料メルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』に掲載されているインタビューで、加賀屋の女将・小田真弓さんがその「源泉」を語っています。

日本一の名旅館「加賀屋」のおもてなし

年間30万人の宿泊客を魅了してやまない石川県の名旅館・和倉温泉「加賀屋」。プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選にて2015年まで36年連続総合1位に輝くも、2016年に3位。しかし翌年、再び首位1位に返り咲きました。

『致知』の愛読者でもある女将の小田真弓さんに、日本一のおもてなしを支える仕事術を学びます。


小田 「もう随分昔の話ですけど、私が一番感激したのは、全く目立たない客室係の取った行動でした。

彼女がお母様と娘さんの2人のお客様を担当した時のこと。

最初、何となく雰囲気が暗いなと思ったらしいんですが、「どうかされましたか」と聞くのも失礼ですから、何も言わずにそっとしておいたそうです。それで食事の時にお造りをお出ししたら、

『わぁおいしそう』

って笑顔を見せた。

彼女はそのことを私に伝えてくれたんです。それじゃあということで、活造りをサービスしたら、

『お父さんがいたら泣いて喜ぶわね』

って言われた。その時初めてご主人を亡くした奥様と娘さんの旅行だと分かりましたって、彼女が言ってきたんです。それでお花を一輪添えて、陰膳(かげぜん)をお出ししたら、大変喜んでくださいましてね。

いまはサービスの一環としてやっていることですけど、私はその時に、素晴らしい子だなと思ったんです。こんなに目立たなくて、あまり喋らない子が、そこまでお客様の立場に立って思いやる気持ちを持ってくれていたのかと。そういう客室係が一人でも二人でも育ってくれることによって、よりお客様の思いに沿ったおもてなしができる。

その後、お客様からご丁寧なお便りをいただきましたけど、それを見た客室係の喜びは倍になり、もっとお客様のためにという気持ちになるんです」

──感動的なお話です。

小田 「お客様と親しくなり過ぎてはいけませんけど、やはり自分の家族や親戚、友達が来たような温かい気持ちでお迎えする。お客様がいまどうしてほしいかってことに気がついて、して差し上げる。

そうして喜ばれる。その喜びが自分の喜びになる。

それと同時に、うちで仕事をしてくれている社員はみんな家族だと思っています。ですから、具合が悪くなれば病院に連れて行ってあげる。困ったことがあったら相談に乗って助けてあげる。やはりお客様の満足度と社員の満足度が一緒じゃないと、いいサービスは提供できません」

※ 本記事は月刊『致知』2017年4月号「繁栄の法則」から抜粋・編集したものです

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【著者】 致知出版社 【発行周期】 日刊

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