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現役教師が提案。日本人の同調圧力を逆用し「いじめ」を無くす方法

今、全国のいじめ認知件数が過去最多になったというニュースが話題となっています。なぜ、いじめがここまで増えているのでしょうか? 現役小学校教諭の松尾英明さんは自身の無料メルマガ『「二十代で身につけたい!」教育観と仕事術』で、「これは学校が陰湿化しているわけではなく、その逆」で、些細なことまで学校が「いじめ」として取り上げるようになったからだと、その理由を解説。さらに、いじめ行為は「同調圧力」をうまくつかうことによって減らすことができるのではないかと提案しています。

同調圧力は「使い方」次第

他人と近づく空間では、必ずマスクを付けるようになった。誰しもが、そうする「当たり前」の話である。

なぜマスクをするのかというと、自分の身を守るためでもあるのだろうが、他人のためにもなる。周りの人の安全・安心のためである。手洗いもそうで、自分のためだけでなく、他人のためでもある。

みんながそうしている。これは、みんなが他者への思いやりがあるから、と思いたい。

しかしながら、そうではないのかもしれない。空気である。そうしないと、自分が白い目で見られる、という意識である。同調圧力というものである。

そう考えると何だかよくないもののように聞こえるが、これは意味がある。同調圧力は、心の在り様に関係なく、一定の行動を引き起こす。逆にここへの反発心が強い人は、そのせいで無益な諍(いさか)いを起こす傾向もある。

ところで、「心の教育」が叫ばれて久しいが、一向に望ましい効果が出ていない。それもそのはず、心というものが外部から変化させられるものではないからである。

一方で、行動というものは、心とは別に外部からの働きかけで変化が起こせる。卑近な例を挙げると、優先席が必要と思われる人が近くにいる場合、そこにほとんどの人は自ら座ろうとしない。周りの目が気になるのが普通だからである。

常識や同調圧力は、本人が道徳的であるかどうかとは無関係で、社会的に望ましい行動を引き起こす。ここが一つポイントである。

要は、どこを変化させるか、というところである。心のようにコロコロ変わって、かつ外からは支配・コントロールができないものがある。そこを直接どうにかしようとするから、無理が生じる。

変えられるのは、行動である。道徳的どうこうは関係なく、慣習に沿って動いている。新しい慣習ができれば、そこに合わせた新しい行動様式をとる。

いじめの認知件数がまた増えて、過去最多54万人ということでニュースになっている。ちなみにこれは文部科学省が発表した「平成30年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」からの数である。大分正しい認識が広がったが、学校が陰湿化している訳ではなく、些細なことでも学校が取り上げるようになった「成果」である。その意味では、以前よりも学校が開かれた明るい場になっているともいえる。

このいじめ行為をなくしたいと、誰しもが思う。だから心を教育しようとする。ここに無理が生じる。心は外的に変化させることはできない。

ここに、先の同調圧力をプラスに使えればいいのである。「人をいじめて楽しむ人とか、かっこ悪すぎる。信じられない」という常識である。「いじめ」が常識からの逸脱行為になっていれば、「おいおい、あなた空気読みなさいよ」ということになる。

そこをプラスの同調圧力にするためには、助け合いがスタンダードになっている必要がある。「人を助ける・親切にするのは、普通」という状態である。

それをずっと遡ると、「仲間の物が落ちていたら拾ってあげるのが普通」という常識がある。さらに「何かしてもらったらありがとうを言うのが普通」「人にはあいさつをするのが普通」という常識がある。

それらの些細なことから逸脱していくと、少しずつ逆の方向にいく。先のように「弱い人をいじめるのが普通」という誤った状態になり、同調圧力が違う方向に働いてしまう。一番落ちた状態が、正しい行動をとる人を「いい人ぶって」「かっこつけちゃって」と排除していく状態である。変な同調圧力がかかって、あらゆる正しい行動を取りにくくなる。

これは教室だけでなく、荒れた職場など社会全体でも、この原則は同じである。「悪ぶっている」人が幅を利かせているのは、多くの人にとって生きにくい状態である(だから、テレビのようなメディアに出演する人の言葉づかいやふるまいが、教室の子どもに与える影響は大きい。人気がある=社会的にそれが「よし」とされている、ということを学ぶからである)。

同調圧力自体に善悪はない。それよりも、この強力な同調圧力をどちらの方向に使うか。学級経営においても有用な視点である。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 松尾英明 【発行周期】 2日に1回ずつ発行します。

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