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【書評】池上彰が斬る。なぜ韓国で自国批判本がベストセラーになったか?

昨年、韓国と日本で大きな話題となった一冊の本、『反日種族主義』をご存知でしょうか。韓国人である李栄薫氏が自国を批判する内容になっているにもかかわらず、韓国でもベストセラーとなりました。そこで今回は、日本を代表するジャーナリストである池上彰氏が李栄薫氏にインタビューした内容をまとめた一冊ご紹介。無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』で編集長の柴田忠男さんが取り上げています。

偏屈BOOK案内:池上彰+[池上彰スペシャル]制作チーム『日本VS韓国 対立がなくならない本当の理由』

日本VS韓国 対立がなくならない本当の理由

池上彰+[池上彰スペシャル]制作チーム 著/文藝春秋

日韓でベストセラーになった『反日種族主義』の著者は、韓国の学者やジャーナリスト、研究者たちのグループで、編著者は元ソウル大学教授で経済史学者の李栄薫である。

日韓関係が悪くなっている時にこういう本を出版したため、深刻な反発が今も続いている。電話やメールによる脅迫は後を絶たない。それだけの反応を予想していながら、なぜ出版したのか。池上彰がインタビューした。

李栄薫は今、韓国社会に深く潜んでいる野蛮性と原始性の克服なくては、韓国社会が先進化できないと考え、彼なりの使命感でこの本を出版した。

李は1991年頃から親日派だといわれてきた。韓国の教科書には、当時全国の土地の40%が朝鮮総監府の所有として収奪されたと、いまだに記されているが、それは事実ではないという論文を書き、左派の猛攻撃を受けた。ところが、40%という数値を証明した研究者は一人もいない。

『反日種族主義』は自国を批判する本なのに、韓国でベストセラーになっている。その理由を池上が聞くと、著者らもまったく予想外だったという。せいぜい2~3万部ぐらいと思っていたが、実際には11万部近く売れた。2、3週間、総合ベストセラー1位だった。

動画サイトにアップした研究者たちの講義は、韓国人が皆共有している一種の危機意識であり、それをまとめたのがこの本である。

そのサイトは日本で大きな反応があり、アメリカ在住の300万人以上の韓国人からも評価され、出版につながった。

「日本の戦争責任は日本人の問題です。私は韓国人として韓国人の責任を話しているだけです。韓国人が自ら近代化を行い改革をして、近代国家を建てることができていたら、20世紀の東アジアの歴史はまったく違っていたと思います」。

それにしても意味深で刺激的なタイトルだ。

1960年代まで韓国の社会的な構成単位は親族だった。韓国の民族性はその親族の原理が、国家的な原理に拡大したものだろう。その本質的な特徴は強力な閉鎖性で、また敵愾心が強い。特に日本に対しては歴史的に受け継がれた敵対感情が、民族主義という名のもとに広がり、強化されたこと、それが韓国種族主義の特徴である。

ドイツや日本は、民族主義が強化される前の短期間に、歴史的ないろいろな代価を払って近代的な個人、自由な個人というものが確立していた。

「しかし、発展途上にあった他の国、特に韓国の場合は、そのような自由な個人というものがなく、言い換えれば歴史的前提条件が十分でなかった。そのため建国後70年間ずっと、前近代的な特徴が強化されて特別な現象を見せていました。種族主義という言葉に『敵対性』という意味がふくまれているのはそのためです」

韓国がまとまるためには「反日」が必要だった。「現在の韓国人の集団的なアイデンティティは、反日の感情を前提にしています。韓国人であるということは、反日の感情に忠実な人間になるということなのです」。

その反日というのは、教育によって形成された。1950年代、1960年代の韓国人の反日感情は、それほど深刻ではない。1970年代以降50年間は、民族主義寄りの反日教育が行われた。

虚偽の歴史によって、過去の歴史が上書きされている。そういうことが、今も続いている韓国。李栄薫はあくまで韓国人として、韓国人に向けて話している。

一日も早く不幸な過去から、歴史から解放されるべきだ。「韓国人がそのように変化すれば、日本人はそれに十分肯定的に、ポジティブに対応してくださると信じています」。この本が韓国で売れているのは明るい兆しか?

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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