現在47のチームがしのぎを削る、ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ(Bリーグ)。そんな中にあって、競技経験のないとある男性がチームの代表者として抜群の業績を上げていることをご存知でしょうか。今回の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』では著者で経営コンサルタントの梅本泰則さんが、茨城ロボッツを率いる山谷拓志氏にスポットライトを当て、その成功の秘訣を探っています。
なぜ栃木ブレックスは優勝できたのか
JリーグやBリーグには優秀な人材が目立ちます。新興のIT企業やベンチャー企業がサポートしているチームが多いためでしょうか。
そして、チームの代表が率先してその運営方法を外に向けて発信します。その内容が、経営やマーケティングの参考になることが多いです。
今回は、その事例を紹介します。
山谷拓志氏のこと
茨城ロボッツをご存知でしょうか。いえ、ロボット製作会社ではありません。バスケットボールリーグB2に所属するチームの名前です。代表者は山谷拓志(やまやたかし)氏。この方のお話をオンラインセミナーでお聞きしました。大変すばらしいお話でしたので、少しご紹介します。
山谷氏は現在50歳で、元アメリカンフットボール日本代表というスポーツマンです。アメフト社会人リーグでは2度の優勝を経験しています。
そんな山谷氏ですが、2007年にバスケットリーグの栃木ブレックス(現宇都宮ブレックス)を立ち上げ、その代表となりました。栃木ブレックスといえば、あの田臥勇太選手がいるチームです。
山谷氏は栃木県の出身でもありませんし、バスケットボールの経験もありません。仕事の関係で知り合った方から、社長就任を依頼されたとのこと。依頼する方も引き受ける方も勇気がありますね。
そして、山谷氏は代表就任後、何と3年目で栃木ブレックスをリーグ優勝に導きました。しかも3年連続で黒字を出したのです。すごいですね。
その後、山谷氏はBリーグの専務理事に就任し、リーグの仕事に専念しました。そして、2014年に再び新たなバスケットボールチームの代表となったのです。それが茨城ロボッツ(前つくばロボッツ)。
茨城ロボッツのこと
実は、この茨城ロボッツの業績がすごいです。2013年創立のこのチームは、2015年の収益が8,200万円、平均入場者数762人という状態でした。ところが、2019年には収益5.4億円、平均入場者数2,108人にまで増えたのです。ものすごい増え方です。この間のチームの努力には驚くしかありません。
しかも、茨城ロボッツは他の多くのBリーグチームのように、大きな企業の後ろ盾がついていません。他のチームでは、トヨタ、三菱、アイシン、日立、パナソニックなどといったそうそうたる企業がサポートしています。そのようなチームには、資金力もマーケティング力もかないません。それなのに、茨城ロボッツは立派な成績を残しています。
しかも、今では水戸のまちづくりにも力を入れているのです。その一つとして、水戸市の中心に「M-SPO」という施設を立ち上げました。これはアリーナ、スタジオ、カフェを備えた施設で、多くの人がスポーツやレッスンや勉強の場として活用しています。もうすぐ結婚式場にもする予定だそうです。
なぜ、そんなことが出来てしまうのでしょうか。その秘密を知りたいとは思いませんか。今回の山谷氏の話を聞いて、その秘訣が分かりました。そして、その秘訣はあなたのお店にも当てはまることです。
それは、山谷氏の物事に対する考え方にありました。物事を、「変えられるもの」と「変えられないもの」に分けて考えるということです。簡単に説明しましょう。
「変えられるもの」と「変えられないもの」
例えば、栃木や茨城で企業などにチームサポートを依頼に行くと、相手はこう言います。
「栃木はスポーツ不毛の地だ」
「すでに鹿島アントラーズがあるので十分だ」
「こんな小さな町では成功しない」
「今まで誰もやったことがない」
「保守的な気質の土地柄なので、受け入れない」
つまり、出来ない理由を並べ立てるわけです。こうした、「他人・環境」「感情・生理反応」「過去」は変えられないと山谷氏は考えています。これらのことは、山谷氏にとっては「どうすることもできない」ことなのです。
それに対して、山谷氏は「変えられること」はないかと考えます。例えば、
- どうやって企業にアプローチすれば分かってもらえるか
- どうしたら優秀な選手を集められるか
- 街角でチームのビラを配ってはどうか
といったことです。当然、その他にも
- どうしたら十分に集客できるか
- どうしたら地域に根付くことが出来るか
ということも考えるでしょう。つまり、「自分(自組織)」「思考・行動」「未来」は変えられると考えているのです。素晴らしい考え方ですね。これが、栃木ブレックスも茨城ロボッツも成功に導いた秘訣ではないでしょうか。
そして、この考え方はスポーツショップにも応用できます。例えば、スポーツショップにとって「変えられないこと」に、
- 学生や学校の数が減ってきている
- メーカーさんや問屋さんが大型店の方を向いている
- 安売りで、お客様がネットに流れている
といったことがあります。これは、一つの小売店の力でどうにかなることではありません。ですから、次のように「変えられること」を考えます。
- 部活や少年団に必要な別の商品やサービスはないか
- 先生や監督、父兄などが必要とするサービスはないか
- メーカーさんや問屋さんに協力してもらえる新しい取り組みはないか
- ネットで商品以外のものを販売することは出来ないか
これらの具体策が見つかれば、あとは実行するだけです。そうすれば、栃木ブレックスや茨城ロボッツのように目覚ましい結果が待っているかもしれません。スポーツ用品業界の「山谷」を目指されてはいかがでしょう。
■今日のツボ■
- 栃木ブレックスと茨城ロボッツの成功には秘訣がある
- 「他人・環境」「感情・生理反応」「過去」は変えられない
- 「自分(自組織)」「思考・行動」「未来」は変えられる
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