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狂気の沙汰。GoToトラベル継続で感染拡大を放置する菅首相の罪と罰

新型コロナ感染の第3波に襲われているにも関わらず、GoToトラベルキャンペーンで旅行を推奨するという理解に苦しむ政策を続ける菅首相。医療崩壊も目前との声も聞かれる中、国に求められているのはどのような施策なのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では著者で日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、緊急時対応の基本を守らぬ首相を批判するとともに、国民の「気のゆるみ」を排除するために国が取るべき対策を考察しています。

コロナで日本経済はどうなるか?

コロナ感染拡大でまた、緊急事態宣言を出す事態になりそうである。このコロナ感染拡大で自粛モードになると、日本経済はどうなるのか検討する。

NYダウは、24日に3万ドルを超え、史上最高株価になった。ワクチンの接種が11月にも始まり、また、バイデン政権の政権移行が開始して、その政権の財務長官に財政出動積極派であるイエレン前FRB議長になるとの観測が出て、市場は安心したようである。

このため、「強欲と恐怖指数」が91で、米国相場は強気相場になっている。景気上昇ということか、銅が上昇し金は下落して、ドル安になっている。

完全なパンデミック・バブル相場になっている。パウエルとイエレンが金融緩和と財政出動を行うので、お金がじゃぶじゃぶになるというのだ。今期の企業利益は下がっているし、来期以降、ワクチンで正常化しても利益は、それほどには増えないのに、企業の株価は過去最高になっている。企業業績の完全無視になっている。

もう1つ、バイデン政権は、上院を共和党が多数を占めて、政策を自由に実行できないことになる。このため、いつか、市場はバイデン・イエレンで沸いた強気を反省する局面も出てくる。

今は、踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らな損々でしょうね。しかし、いつ、この相場なら降りるのがよいか、よく見えない。

私は、すでに降りているので、見る阿呆になっているが。

日本の状況

27日も1991年4月以来の29年ぶりの高値になった。日経平均もNYダウに引きずられて上昇して、29年ぶりの高値が続いている。米国より強い株式市場だ。

11月11日は25,000円台に乗せ、17日には26,000円台に乗せて、1週間で1,000円づつ上昇している。そして、NYダウが下落しても日経平均は上昇が続いている。1ドル=103円台後半から104円前半と円高に振れたが強い。

株価上昇の原因は、1週間ごとに1兆円の海外投資家の大幅な買い越し、NTTドコモの買収費用4兆円が投資家に入り、他の銘柄に再投資したこと、個人の日経ダブルインバース投資の買越し額が8,000億円あり、それが踏み上げを食らい、損切りしていることで、株価は上昇している。

そして、11月に海外投資家の買い越し額は2.7兆円にもなっている。

GPIFは、この株価で大量に売り、大きな儲けを出しているが、日銀は、下落するとETF買いを続けている。GPIFの大量売りで下落しないように、日銀が買いに回っているとも見える。

そして、完全な需給相場である。このため、この上昇が、いつまで続くかはわからない。

一方、第3波のコロナ感染拡大で、多くの企業は業績最悪になる。失業者も多くなり、ホームレスも増えて、社会も荒んでいくことになる。

何かがおかしいと思うが、下手に空売りすると踏上げを食らうことになる。こちらも見る阿呆に徹するしかない。または、価格が下落する金でも買うしかない。

今のコロナ感染状況と経済

フェーズ3の地域が、札幌市、東京都23区、名古屋市、大阪市の4つ。しかし、GoToトラベルの規制は札幌市と大阪市だけであり、それも目的地としてのみで、出発はOKとしていたが、28日にやっと、出発も規制した。

地方経済の原動力を、製造業から観光業にシフトしたことで、それも海外からのインバウンドに頼った観光業で、かつ、その上に東京オリンピックまで誘致しての安倍政権の経済政策が大失敗になってしまった。

コロナで、すべてが裏目に出ている。五輪の海外からの観光客を目当てに、多くのホテルが作られたが、その多くが倒産の危機になっている。地方経済もそちらに投資を加速したが、それが裏目になっている。これにより、地方銀行も危ない。

やはり、地道に産業政策を打ち、製造業復活やデジタル化の推進をするべきであったのだ。特に、地道ではない安易な金融緩和政策に頼っていたことが大きい。と過去の話をしていても仕方がなく、今後、どうするかである。

おそらく、コロナ感染拡大の第3波は、1波や2波より相当大きくなり、その分、日本経済は大きなダメージを受けることになる。コロナの感染力が強いようで、死亡者数も大きくなっているし、医療崩壊で、コロナ以外の病気で死ぬ人も増えるはず。自殺者は特別給付などで救える道があるが、病気での死者を助ける方法は、感染拡大を防止するしかない。

このため、感染拡大で、フェーズ4になり緊急事態宣言となると、飲食業、観光業、鉄道・航空産業、地方交通などの広範な産業で、今まで以上の大きなダメージを受ける。

強烈な3波に対して、菅首相は対応が後手になっている。前回のこのコラムでの警告から2週間もたっているが、心配したように、状況は悪化の一途になっている。

早めの対策を打ち、フェーズ4になることを抑える必要があるのに、GoToトラベル規制地域を大阪と札幌だけにしている。

危機の時には早い対応が被害を少なくするという緊急時対応の基本を守っていない。

このため、札幌や大阪、東京、名古屋などがフェーズ4になることが想定できる。事実、フェーズ4に近い大阪では医療トリアージを開始したというし、11月26日には1日で12人も死亡している。全国の新規感染者も約2,600人に上った。27日、北海道は252人感染と過去最多の9人死亡、東京は570人感染で過去最多、愛知も234人感染で最多大阪は383人感染。

東京の重症者数は、東京独自の基準では67人であるが、国の基準では250人にもなる。全国の重症者数440人中、東京が半分を占めているのだ。27日の全国死亡者数は29人と非常に多くなってきた。

尾身分科会会長も「個人の努力だけでは、感染防止はできない状況になっている」と警告し、「問題の核心は、コロナではない一般の医療との両立が難しくなっていることだ」と述べ、医療現場の負担が急増する状況に強い危機感を示した。

そもそも、1日2,600人感染、重症者440人で医療崩壊を心配しなければならないということは、医療体制が欧米に比べて著しく脆弱だからであろう。

病床数は欧米と遜色がないが、ICUではドイツと比べると大きく劣っているし、病院を経営するためには、90%の病床を常に埋める必要があるという。コロナシフトで4月以降、手術が少なくなり、病院経営が赤字になっている。医療体制に余裕がないことを示している。

今後、医療体制の強化も必要になるが、現時点では、今の医療体制で乗り越えるしかない。

ということで、この状態が続くと医療崩壊を起こして、緊急事態宣言を出す必要にもなるが、菅義偉首相も同日、「この3週間が極めて重要な時期だ」と訴えたが、それでもGoToトラベルを続けるつもりのようだ。特に東京から地方への旅行を止めたくないようである。

菅首相は、GoToトラベルで感染拡大したエビデンスがないと述べているが、医学的な見地から論理的に推論した結果で、GoToトラベルを問題視している。

それなのに、エビデンスがないというのはおかしくて、論理的推論に反証する責任は政府にあるので、感染拡大がないというエビデンスを示すのは、政府の側である。

医療専門家や経済学者で構成する分科会でも、フェーズ3地域のGoToトラベル中止で東京と名古屋を含めることを進言しているが、菅首相は判断を保留にしている。しかし、遅延すると代償は大きくなる。

小池東京知事は、GoToトラベル中止を国の判断と言い、政府は都知事の判断と言って、お互いに相手を批判して時間を失っている。この代償も大きくなる。

一旦、GoToトラベルを全面的に中止して、政府が率先してコロナ感染拡大を抑え込んだ方が、日本経済の損失は小さいと思うが、GoToトラベル継続で感染拡大を放置するようである。

国民も政府のGoToトラベルの旅行奨励に乗り、フェーズ3でも旅行に出るという「気のゆるみ」が出ている。私も3連休はGoToトラベルを利用して、仙台に行っているので、他人を批判できない。

この原因は、日本の人口1億2,000万人中14万人しか罹っていない。率にすると1.1%であり、多くの人には身の回りにも感染者がいないことになる。そして、罹った人たちも80%はすぐに治るが、20%の人たちが重症化する。しかも、死亡者に占める50歳以下は8%程度であり、若い人は死なないので「気のゆるみ」も、うなづけるのである。

しかし、政府が率先して、感染拡大防止をしっかりとやらないと、国民の「気のゆるみ」を排除できない。コロナ死亡者より、働けなくなることや医療崩壊の方が、問題が大きい。そのためには、緊急事態宣言になるフェーズ4にしない必要があり、そのためには、予防処置を充実させるしかない。

時短要請はもちろんのこと、飲食店、カラオケ、ホテル、観光業、交通業の従業員に定期的にPCR検査をして、観光客にも抗体検査をして、感染なしの確認を義務付けるなどの、それ相応な対策をとるべきである。

フェーズ4での緊急事態宣言では

フェーズ4での緊急事態宣言の場合、外出の自粛などと自粛の強化をする必要になり、観光業、鉄道、航空、地方交通、飲食店、デパート、アパレルなど多くのリアル産業で働く多くの人たちが失業して、社会が荒んでいくことが想定できる。その前に防止策を打つべきである。政府が国民に旅行を奨励するのは、非常に危険であるし、危機時対応としてもおかしい。

先日、ある駅からJRの電車に乗ったが、駅でロッカーやエレベーターに唾を吐き、電車内でも至る所に唾を吐く人を見た。感染するのではないかと恐ろしかった。

その顔を見ると目が怒っている。コロナ感染で会社を辞めさせられたのかなと思った。

このような人がいると、電車も危ないと思うし、無関係な人たちに感染を広げることにもなる。このような人たちに対して、特別給付や生活保護、職業訓練を充実することである。それが感染防止につながる。

それと、このような人が増えると、社会が荒んでいくと同時に、犯罪も増えて、自殺者や感染拡大の死者だけではないことになる。

その結果、来年の総選挙でも自民党は大きく議席数を減らすことになる。死者数、凶悪な犯罪数などが増えて、社会混乱になることの当然の報いが待っているような気がする。

1月に予定していた衆議院選挙を秋に延期するとしたが、経済縮小に伴う社会的な混乱は、そう簡単には収まらない。そうならないためにも、コロナ感染拡大防止を先にやるべきなのである。

そして、菅首相のGoToトラベル推進を止められなかった自民党議員たちも覚悟する必要がある。相当、厳しい選挙になる。

それでも、世界的にみると、日本はコロナ対応がよく、コロナでの持続性は世界で2番目に良いという。1位はニュージーランドで2位が日本とのことである。

景気は、この冬最悪になるが、この日本より厳しい欧米も日本も株価は、最高値である。中央銀行の量的緩和と政府の財政出動によるパンデミック・バブルというようであるが、何か社会がおかしくなっていると感じる。

そして、一番大きい問題は、貧富の差がますます開くことだ。

さあ、どうなりますか?

image by: 首相官邸

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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