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韓国の「K防疫」が大失敗。日本は感染再拡大の文政権を反面教師とせよ

世界中で新型コロナウイルスの新規感染者数が止まらない中、お隣の韓国では過去最多となるほどの再拡大が進み、政府に批判が殺到しているようです。「第1波」を防いだことから、音楽の「K-POP」になぞらえて「K防疫」などと喧伝していた韓国の文在寅政権ですが、感染再拡大とワクチン確保の遅れなど、窮地に陥っています。メルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』著者でジャーナリストの内田誠さんは、日本の新聞が報じてきた「K防疫」というキーワードを過去記事から分析し、韓国が喧伝するコロナ対策の「胡散臭さ」を炙り出しています。

過去最多の「第3波」に見舞われた韓国「K防疫」の大言壮語

きょうは《東京》からです。

「K防疫」という言葉が記事に見えています(9面)。韓国政府が自らの新型コロナウイルス対策を誇ってそのように呼び習わしているのだそうです。しかし、今、韓国の感染拡大は、ドイツと並んで過去最多となるほどに大きな「第3波」に見舞われているようです。

日本の首相がバラエティ番組のキャラを任じて「ガースーです」と戯けて失笑を買い、韓国の大統領が「Kポップ」を真似て「K防疫」が世界標準になったと大言壮語する。どうも、アジアの東の端では、権力者たちの軽佻浮薄な振る舞いが目立つようです。

きょうは「K防疫」を検索します。

《東京》の記事検索では5件にヒット。電子版では7件ヒットしました。

【フォーカス・イン】

まずは《東京》の9面記事、見出しから。

「優等生」
「K防疫」
コロナ対策窮地
独 部分封鎖効果なく制限強化
韓国 首都圏で医療崩壊危機
ワクチン確保85%止まり

韓国で新型コロナウイルスの「第3波」拡大。一日あたりの感染者数は過去最悪に。徹底した検査と隔離で「K防疫」を誇ってきたが、ワクチン確保にも遅れ。小売店の営業を認めていたドイツも1日の新規感染者数が3万人に迫り、死者も600人近くと最多を更新。

見出しが少々判りにくいのは、ドイツの話と韓国の話が1つの記事に書かれているため。「優等生」と呼ばれたのはドイツ。「K防疫」を標榜してきたのはもちろん韓国。記事の韓国部分は、「危機に立つK防疫」といった赴き。

韓国の場合、「医療崩壊の危機は、感染者の7~8割が集中するソウルなど首都圏で高まっている」といい、既に収容しきれない患者を他地域に搬送し始めているとも。政府は軍の医官や特殊部隊員ら400人以上を保健所に投入するまでに。

●uttiiの眼

韓国の苦境の原因は、ワクチン確保に遅れを取ったところにあるようだ。国民5200万人のうち、85%の4400万人分を確保したとするが、それでも欧米先進国の数分の1というレベル。皮肉なことに、国内感染者が少なかったので、国内での開発は進んでいないということらしい。原因は1つではないだろうが。

実際に導入が可能なのは英アストラゼネカ製の1千万人分しかないとも。感染者数の増減に一喜一憂しながら、各国ともワクチンに期待を掛け、そのことが社会不安を幾分か軽減する効果を生んでいるのと対照的に、韓国は厳しい状況になっている。

こうしたことの結果として、文在寅政権に対する批判が噴出しているようだ。「K防疫に成功したとうぬぼれ、他国にワクチンで追い越された。多くの先進国が正常化する中、韓国は社会的距離の維持を続けなければならないかもしれない」(高麗大九老病院の金宇柱教授)と。

【サーチ&リサーチ】

上記のように、《東京》の過去記事検索では5件。古い記事から順番に紹介する。

2020年4月14日付
「世界の街」という特派員リポートの形で、ソウル特派員が書いている記事。「K防疫」などと言うのは気が早いと、以下のように批判している。

「「K防疫」。政権幹部らが、世界の音楽業界で存在感を示している「Kポップ」になぞらえ、徹底的な検査と情報公開で感染爆発を抑えてきたと誇る造語。国内感染者の急増局面は一時より落ち着いたとはいえ、再び増加に転じる可能性がある中、気が早くないか」

*この指摘の通り、8カ月後に「気が早かった」ことが明らかになったと言えようか。

2020年5月1日付外報面記事
大統領は、「防疫当局と医療陣の献身と国民の協力が力になった。『K防疫』が世界標準になる」として、(4月)27日の大統領府会合で、早期のPCR検査と隔離治療を軸に成果を上げている防疫措置を海外で人気の「Kポップ」をもじって誇った」そして29日、新規感染者がゼロになった。

*上記記事には「K防疫」を揶揄するようなトーンはなく、「昨年秋に側近のスキャンダルなどで30%台まで低下した大統領支持率は、4月最終週の世論調査で60.6%まで上昇した」と書くのみで、大統領の人気回復という、いわば政治的な帰結に話を収斂させている。

*その後の記事では、文政権の政治的アピールポイントとしての「K防疫」に触れているが、やはり批判的な論点は見られない。

*サイト内には「きょうの紙面」に載ったのと同じ記事の他、もう1つ、1週間前の12月8日付の記事がある。中国・武漢市で最初に感染者が確認されてから1年がたったということで組まれた大きな記事に、「K防疫」に触れた部分があった。最後にこちらを紹介しよう。

2020年12月8日付(サイト内)
米国、ヨーロッパで猛威をふるう新型コロナウイルス、中東やアフリカでは内戦や食糧不足が感染拡大に拍車を掛けるという。アジア諸国は入国制限やロックダウンが奏功したと。そして韓国については…。

「韓国では11月下旬から新型コロナウイルスの感染が再拡大し、1日の感染者は600人台まで増加。政府は警戒を強め、ソウルなど首都圏では8日から防疫措置を5段階の上から2番目に引き上げた。カラオケや屋内スポーツ施設は営業禁止。飲食店や大型スーパーは午後9時までに制限するほか、夜間は地下鉄やバスの運行も減らしている。

韓国では「第1波」の抑え込みには成功した。2015年に流行した中東呼吸器症候群(MERS)への対策を教訓にできたからだ。感染経路を徹底的に追跡し、情報を公開。ドライブスルー方式も導入してPCR検査を各地で実施、隔離中の感染者が外出など違反した場合の罰則を設ける厳格な措置を取った」そして、こうした成果を文在寅大統領は「K防疫」として、支持率回復につなげたという。

●uttiiの眼

特派員氏は4月の段階で、「K防疫」の胡散臭さを感じ取っていたのだろう。おそらくは、世界的なパンデミックがそう簡単に収まるはずはないという基本的な認識があり、いずれまた「波」がやってくることについて確信があったのかもしれない。確かに、まともな感染症学者の話を聞いていれば、2020年の秋から冬にかけて大きな波がやってくることは間違いないと思えるものだ。

なのに、文大統領が「Kポップ」に準えてわざわざ「K防疫」などと喧伝するわざとらしさ、あるいは政治的利用の匂いを、特派員氏は敏感に感じ取っておられたのだろう。その“予感”のようなものが実体を伴って姿を現したのが今回の「感染再拡大」ということになる。

皮肉なことに、第一波を防遏(ぼうあつ)したために感染者が少なく、ワクチンの研究開発にとって不利に作用したということもあったようだ。

これはまさしく「他山の石」(元々の意味で使っています)。日本では「感染拡大防止と経済の両立」という大義名分のもと、「GoToトラベル」のお祭り騒ぎを楽しんでしまったため、新型コロナウイルスに対する緊張感のレベルを自ら下げてしまった。政府は先日まで、専門家の意見と提案を事実上無視していたが、ようやく世論に押されて「全国で中止」の判断に至った。「遅すぎる」との批判が巻き起こっているが、どんな結果になるのか。はたして「医療崩壊」を阻止できるのか。

image by: 青瓦台Facebook

内田誠この著者の記事一覧

ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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