【サーチ&リサーチ】
試みに「YA論文」で検索を掛けてみると、《朝日》と《東京》には、どこを探しても該当する記事が1本もなかった。《読売》は、サイト内と1年以内の紙面掲載記事の中に、1本ずつ、同じ記事が掲載されていた。《毎日》には、7月に紙面掲載記事が1本、12月にサイト内記事が1本あった。以下、《毎日》の7月の記事を簡単に紹介する。
2020年7月23日付
「月刊・持論フォーラム」の冒頭、「米大統領選と日本外交」と題して、琉球大学准教授・山本章子氏が書いている。
「アメリカの独立記念日にあたる7月4日、ニューヨーク総領事館の山野内勘二総領事が、「ジミ・ヘンドリックス(ジミヘン)にインスパイアされた」米国歌「星条旗」のエレキギター演奏動画をインターネット上で配信。ツイッター上で数千の称賛を浴びる」ことがあったという。外交官のこの行動に対して山本氏は、まるで日本政府がトランプ再選を望んでいるかのように受け取られる「YA論文」を否定し、人種差別的な言動をとるトランプを支持しないというメッセージと同時に、「匿名論文が日本政府の総意ではないことを示す意図があったと考えるのはうがちすぎだろうか」と述べている。
ジミヘンことジミ・ヘンドリックスは、黒人奴隷の子孫を父に、ネイティブアメリカンを母に持つロックギタリストだった。「1969年8月18日、ニューヨーク郊外で開催されたウッドストック音楽芸術祭にて「星条旗」を演奏する。ベトナム反戦運動、黒人公民権運動、ウーマンリブ運動がアメリカの政治と社会を変えようとする時期であり、ウッドストックにはこれらの運動に共鳴する若者ら約40万人が集まっていた。
翻って、2020年の7月4日、黒人とネイティブアメリカンを両親に持つジミヘンの「抗議」の曲を、ニューヨークの日本総領事館の総領事が演奏する。人種差別的な言動で知られる白人のドナルド・トランプ大統領のもと、黒人差別への抗議に揺れる現在のアメリカに対するメッセージとして、「これ以上時宜にかなったものはない」と山本氏は評価している。
●uttiiの眼
「YA論文」を否定して、日本政府が決してトランプ支持ではないことを示す動きが、1つは論文次元で行われ、さらに、外交官の行動によって、結果として示されたのは興味深い。ただ、米大統領選は、広い意味での日本外交に関わる人たちの世界をも、分断に導いていた、ということなのかもしれない。この分断は長く続くだろう。
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