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政治家が責任逃れのために自粛を強要するニッポンの「緊急事態」

新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない日本ですが、二度目の緊急事態宣言でもっとも懸念されているのが経済への大打撃です。メルマガ『藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~』の著者で京都大学大学院教授の藤井聡さんは、日本のマスコミが煽る「過剰自粛」を批判し、「半自粛」を提案。その理由を示すとともに、2020年に過剰な自粛を要請してきた識者らが急にトーンダウンするようになった「効果」についても語っています。

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「緊急事態宣言」による国民被害をホントに回避・軽減するために一体どうすればいいのか?

「緊急事態宣言」が11都府県で発出されてしまいました。

当方は、こういう動きは、政治家達がホントに国民を守るためにやっている、というよりも、国民のことなんてまぁどうでもいいが、何もしないと責められるから、 責任逃れのため にやっとかなきゃ…で、やるんだったらしっかりアピールしておこう、みたいな下らない動機で展開しているようにしか見えません。

なぜならその中身が、感染症をホントに抑え込もうと思っているようなものでは無い割に、経済だけはしっかり大被害を受ける、という、理不尽極まりない代物だからです。その意味で当方は、誠にもって愚か極まりない話だと感じています。

そして実際、そういう風に感じているのは当方だけで無く、実に多くの市井の民がそう感じておられる様に思います。

例えば、緊急事態宣言が出るっていう報道を目にした当方の某知人は、メールでこんなメッセージを送ってこられました。

「ただ出せばいいと思っていますね。本当に無策ですね。マスコミも煽っているだけで無能ですね。こんなバカばかりで、日本は本当に大丈夫でしょうか?」

当方からは、全くそうですねとお返事さし上げましたが、こうした反応が、極めて一般的、常識的反応だと当方はつくづく感じます。

しかし、そうした常識的な声は絶対にマスコミでは強調されません。そんな声を普通に流せば、そのマスコミがもの凄くバッシングされるに決まっているからです。マスコミ関係者はそれにビビっていて、とりあえずコロナや怖い、自粛して下さい、っていっておこうという事になっているのです。

実際、TVでコメントされている方々でも、日常会話の中では、上記の様な当方の知人と同じような発言をされる方が結構おられるのですが、オンエアされる場面では、そういうトーンでは全く話をされません。そんな話をしたら、番組を降ろされることになりかねないからです。

TVやラジオのスタッフでも、全く同じで、何が緊急事態宣言だ、ばかじゃねぇか、と口にする方も多いのですが、決してそういう台本を書いたりはしません。そんな事するとヤバイことになると、スタッフ連中は皆思っているのです。

こういうこわばった空気を見るにつれ、本当に日本人ってのは、 戦前からなにも変わってないんだなぁ 、と思わざるを得ません。

戦前もアメリカに勝つのだ、日本は負けるはずがないのだ、気合いを入れて、根性を出せば絶対に勝てるのだ!っていう、いわゆる竹槍精神のこわばった空気が日本中を支配していた一方で、多くの国民は、本音では、「勝てるわけねぇじゃねぇか」と思ってたって話と、同じだという次第です。

つまり、今は、コロナが怖い、自粛だ、ってTVでは皆いってるけど、本音では、上記の私信メールのように 「なにが緊急事態宣言だ、ばかじゃねぇかぁ?」 みたいな事を思っているのです(もちろん、戦前でも洗脳されきって常識を見失ってしまった方がおられたようにTVに完全に洗脳されきった方も決して少なく無いのも事実でしょうが)。

当方はこれまで、自粛のやり過ぎはバカな話なので、適切な自粛をやりさえすればよい、という主張で 「半自粛」 を主張してまいりました。もちろんそれをこれからも声高に主張しようと思っていますが、これは相当にバッシング対象となります。

とりわけTVに完全に洗脳された方々は、あぁだこうだ言ってくるので、全く議論になりません。しかも今では緊急事態宣言が発出されていますから、ますます議論になりません。そして、バッシングしない方においても、こういう半自粛に積極的に賛同する人もそれほど多くはないのです。

例えば、ツイッターをやってるとそういう雰囲気がよく分かります。

過剰自粛を批判するようなコメントを出しても、当方を誹謗中傷するコメントが多数つくのですが、それと同時に、「いいね」を押す回数もかなり限定的になるのです。

そういうのを見るにつけ、「過剰自粛批判」ばかりやってても、事態が俄に改善するっていうのは難しいんだなぁ、という現実が見えてきてしまいます。つまり、 「過剰自粛批判を通した国益増進作戦」 は、なかなか簡単には前に進まないわけです。

とはいえ、こういう活動を昨年3月から地道に続けてきたおかげで、昨年3月に比べれば、今の空気感は随分と変わってきているのも事実です。 世間全体が、徹底自粛路線から、半自粛路線へと随分とシフトしてきているのを感じます。

何と言っても、昨年4月は、 新規感染者数がわずか377人で緊急事態宣言を出したのですが、今回緊急事態宣言が出された1月8日の新規感染者数は、その 20倍以上の7882人 でした。今日なら377人程度で誰も緊急事態宣言だ~!なんて騒がないでしょう。

つまり、コロナを怖がっている人達も、この一年間で、随分とコロナに「なれて」きたのです。

しかも、前回は8割自粛だ~!なんて言っていましたが、今は、8時以降の不要不急の外出はひかえましょう、という程度の大変に 「ぬるい」行動制限 になっています。

昨年4月の頃のコロナ脳水準のままなら、当時の20倍以上もの感染拡大状況なんだから、8割自粛よりももっとキツい、9割自粛とか95%自粛とか言わないといけない筈ですが、今やそんなことを主張する人は誰もいません。

かの「8割おじさん」こと西浦さんですら、そんな事はいってません。一応科学者なのに、空気に基づいて言う事変えるなんてなに考えてんだろう、と思いますが、まぁ、もとからそういう人だったんでしょう。

ちなみに、西浦さん、4月の時点では緊急事態宣言は、新規感染者が「一桁になるまで続けるべきだ」なんて言ってたんですが、今は、「二桁になるまで続けるべきだ」と、なんと、10倍もぬるいことを言い出しています。

繰り返しますが、一応科学者なのに、よくもまぁ、10倍も言う事変えるなんて、ホント何考えてるんだろうと思いますが、繰り返しますが、まぁ、もとからそういう人だったってことですね。

さらに言うと、こういう西浦氏を持ち上げる不思議な言論人が一部いたのですが、彼等も最近は、めっきり過剰自粛批判・批判をしなくなったりしていますし、西浦さんを再度もちあげようとする姿勢もなくなったようです。まぁ、またそういうことを始めることもあるのかもしれませんが、さすがに「空気のチェンジ」を彼等なりに感じ取って、過剰自粛批判・批判をしにくくなっているのかもしれません。

いずれにしてもこうした事実をみるにつけ、世論の空気は、かつての「徹底自粛」の空気に比べると、随分と当方が主張し続けてきた「半自粛」路線に変わってきたんだなぁ、ということがハッキリと見て取れるわけです。

そういう 空気のチェンジ に対して、当方一個人の言論活動がどの程度寄与したのか分かりませんが、一定貢献してきた可能性もなくはない……とも言えるかも知れませんから、こうした理不尽な空気の転換を促すための地道な「半自粛」言論活動は続けていこうと思っています。

……とは言え、先程申し上げたように、過剰自粛批判だけでは、このコロナ禍を終わらせるのはなかなか困難です。したがって、「過剰自粛批判」が一定程度、成功してきたという現状を踏まえて(とはいえ、まだまだ不十分ですが……)、ここ半年ほど、別の方向の論点を強調する言論を加速しつつあります。

それが、 「おい政府、コロナ対応力をもっと増やせ!」作戦 です。(メルマガ『藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~』より一部抜粋。初月無料のメルマガご登録で、この続きを含む1月分のメルマガが全てすぐに届きます)

【関連】2021年の日本はどうなる?コロナ・不景気・菅政権の3大問題解決に必要なこと

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2021年1月配信分
  • 政治家達の責任逃れのための「緊急事態宣言」。そんな中で、国民被害をホントに回避・軽減するために一体どうすればいいのか?(1/9)
  • 新年最大の山場は総選挙。消費減税・凍結の成否は、菅内閣の支持率がどこまで下落するかの一点にかかっている。(1/2)
  • 【新年特別号】2021年の日本はどうなる?コロナ・不景気・菅政権の3大問題解決に必要なこと(1/1)

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2020年12月配信分
  • 菅内閣はなすべき対策を「過剰自粛」し、日本破壊を加速している。(12/26)
  • 支持率が一気に下がった決定的原因は菅義偉の「ショボさ」にある~ウェーバーの「政治的カリスマ性」の総理にとって重要性(12/19)
  • 菅政権による国民窮乏化策 ~コロナ禍で所得補償「せず」に高齢層/子育て層への「実質増税」を断行する我が国政府~(12/12)
  • 都構想やコロナ等、世論に批難されながら発言し続けるために、日々どのように自説を「吟味」し続けているか?について。(12/5)

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image by: 首相官邸

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京都大学大学院・工学研究科・都市社会工学専攻教授、京都大学レジリエンス実践ユニット長。1968年生。京都大学卒業後、スウェーデンイエテボリ大学心理学科客員研究員,東京工業大学教授等を経て現職。2012年から2018年まで内閣官房参与。専門は、国土計画・経済政策等の公共政策論.文部科学大臣表彰、日本学術振興会賞等、受賞多数。著書「プライマリーバランス亡国論」「国土学」「凡庸という悪魔」「大衆社会の処方箋」等多数。テレビ、新聞、雑誌等で言論・執筆活動を展開。MXテレビ「東京ホンマもん教室」、朝日放送「正義のミカタ」、関西テレビ「報道ランナー」、KBS京都「藤井聡のあるがままラジオ」等のレギュラー解説者。2018年より表現者クライテリオン編集長。

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【著者】 藤井聡 【月額】 ¥880/月(税込) 【発行周期】 毎週 土曜日

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