国民軽視の極致。麻生財務相が盗み取った1兆8500億円の出どころ

 

今回の第3次補正予算が可決・成立した1月28日、EU理事会は「入域制限解除国リスト」の改訂を行ない、日本を「感染拡大国」と認定してリストから除外しました。正直、あたしには、日本よりEU各国のほうが感染が拡大しているように見えるので「お前が言うな!」という気持ちですが、何らかの政治的思惑があっての除外ではなく、緊急事態宣言やワクチンの遅れなど日本の現状を客観的に見た上での判断なのでしょうから、仕方ありません。

それよりも、あたしは、EU理事会が日本を「感染拡大国」と認定した日に可決・成立した補正予算案が、新型コロナ対策など二の次の内容だということに開いた口がふさがらないのです。この呆れ果てた政府の補正予算案に対して、立憲民主党や日本共産党を始めとした野党は、予算の組み換えを要求しました。長くなるので詳細までは記せませんが、以下、大きな要求点を挙げます。

医療機関・医療従事者への支援 3兆円
感染防止対策の徹底 1兆5,000億円
生活困窮者への支援 3兆4,000億円
事業・雇用への支援 7兆5,000億円
地方自治体への支援 2兆5,000億円

この野党案が通れば、補正予算の総額が少なくなる上に、予算の大半が新型コロナ対策に使われることになりますから、感染拡大の歯止めも早まり、生活困窮者の救済も進みます。しかし、この野党案は自公と維新による数の暴力で瞬殺され、新型コロナ対策など二の次の政府案がそのまま可決・成立してしまったのです。

これだけでもとんでもない話なのに、さらには「財源」までもがとんでもないのです。先ほど、安倍政権下で組まれた第1次と第2次の補正予算について触れましたが、国会の承認を経ずに政府が使い道を自由に決められる新型コロナ対策の予備費として、第1次では1兆5,000億円、第2次では10兆円、合計11兆5,000億円が計上されました。そして、これまでに24件、計5兆8,000億円の支出が決定されているので、残りは5兆7,000億円あります。

これに目を付けた麻生太郎は「国会の承認を経ずに政府が使い道を自由に決められる」という点を悪用して、ここから1兆8,500億円を第3次補正予算の財源として盗み取ったのです。財務省としては、できるだけ赤字国債の発行額を少なくしたかったのでしょうが、新型コロナ対策の予備費を財源にするなんて、これまた「火事場泥棒」です。いくら「使い道を自由に決められる」と言っても、これは「新型コロナ対策の予備費」なのですから、新型コロナ対策以外には使えない予算なのです。

第3次補正予算のうち、新型コロナ対策に使われるのは約4兆3,500億円ですが、財源のうち1兆8,500億円が第1次と第2次で積み立てられた予備費から支出されるということは、今回の予算の実質的な新型コロナ対策は「4兆3,500億円-1兆8,500億円=2兆5,000億円」ということになり、さらに少なくなってしまいます。野党は、この「1兆8500億円の流用」についても撤回を求めましたが、やはり自公と維新によって瞬殺されてしまいました。

ちなみに、残りの19兆円を超える財源は、すべて赤字国債の発行で賄われます。これで、今年度の国債の新規発行額はとうとう100兆円を超え、計112兆5,539億円となってしまいました。これまでの毎年の予算は、全体の約半分が国債の新規発行、ようするに「未来への借金」で賄われて来ましたが、今年度は予算全体の64%が「未来への借金」になってしまったのです。

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