日本は大丈夫か。米住宅街にボーイング777巨大エンジン落下の衝撃

 

4つ目は、この種の巨大エンジンの危険性です。正にこの777におけるP&W4000というエンジンは、巨大な双発エンジンによる省エネを追求するということで、世界の航空市場を支配してきたわけですが、エンジンが大きくなればなるほど、ファンブレード損傷による事故の危険性というのは増加します。

そこで、例えば同じ777でも最新の「X」では、主翼に炭素繊維などの複合材を使用することで、全体の重量を低減する、その結果としてエンジンの規模も少し小さくという設計に変わってきています。そうしたトレンドは、今回のインシデントで加速するものと思われます。

5点目は、双発機のこの種のインシデントにおける危険性は限定的ということです。ファンブレード損傷事故の場合は、確かにそのエンジンは推力を失うし、部品落下など様々な問題が起きます。ですが、例えばA380機で発生した「油圧機構の損傷による過回転事故」の恐ろしさと比べれば、少なくともファンブレード損傷の場合はそれが即在に「墜落」とか「炎上」につながる危険性は非常に少ないと言って良いと思います。

777や787、あるいはA350などの場合は、仮に1発のエンジンが推力を失っても、それが洋上であっても至近の空港に緊急着陸することは可能な設計であり、またそのような飛行計画しか認められていません。そうしたフェイルセーフの考え方があるということも、今回のインシデントの報道では同時に伝えて行きたいと思うのです。(メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』より一部抜粋)

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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