大手新聞の終焉。サラリーマン記者の書く記事が中身ゼロな3つの理由

 

私が記事を書くのであれば、ビルゲイツが大株主であるQuantumScapeという固体電池の会社がSPACを利用して裏口上場したばかりだとか、リチウムイオン電池の最大の生産量を誇るTeslaのイーロン・マスクが、「固体電池はまだ実用化の段階にはない」と宣言したことなどに触れた上で、今回の発表の意味を解説すると思いますが、そんな記述はどこにもありませんでした(少し後に、日経BPがそんな記事を掲載しました)。

そもそも、トヨタ自動車が固体電池を研究開発していることは既に知られていることで、次のステップは、それを搭載した実車の発表であるべきです。私のように、この業界(特に電気自動車)で働いたこともあり(トヨタ自動車向けの車載機ソフトウェアの開発をしていました)、長年追いかけている人間にとってみれば、(今回発表された)プロトタイプと量産車の間には大きな開きがあることを知っており、今回のトヨタ自動車の発表は、「それほどニュース性の無い中途半端な発表」でした。

にも関わらず、この件を新聞社が大々的に取り上げたのは、広告主であるトヨタ自動車への配慮以外の何ものでもないと思います。これは「忖度」のような生やさしいものではなく、トヨタ自動車、もしくは、広告代理店である電通からの「この件は大きく報道するようお願いします」という「要求」に、各社が従った結果だと考えて間違いないと思います。

読者のことを考えるのであれば、もっと深掘をすべきだし、どの記事を大きく扱うべきかの適切な判断(キュレーション)もすべきなのに、どちらもまともに出来ていないのです。

その答えが、上の山田亜紀子さんの文章を読んで明確になりました。その理由は、

  • 書いているのは文章力だけが高い文系のサラリーマン記者である
  • 記者は、会社の都合で配置転換されるので、特定の分野のエキスパートにはなれない
  • 新聞社は、読者よりも広告主の方を向いている

の3点に集約されています。

この件に関しては、そもそも記事の目的が広告主であるトヨタ自動車を喜ばせることにあるため、ジャーナリストとして、余計な独自取材(例えば、TeslaやQuatumScapeに今回の発表にコメントをもらうこと)をすることは期待されていません。特に、「まだ実用化までは時間がかかる」などのネガティブなコメントは、ご法度です。

そして、記事を書いている記者も、特に(私のように)電気自動車のことばかりを長年追い続けている人では無いし、そもそも「上手な文章を書ける」ことが強みの文系の人なので、通常のリチウムイオン電池と固体電池の違いをしっかりとは理解出来ていないし、新しい技術の実用化に伴う困難を自ら体験したことなどないので、奥の深い記事が書けなくて当然なのです。

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