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中国から嫌がらせを受け続ける2国、台湾とパラオで今も息づく「日本精神」

世界中から非難の声があがっている中国のウイグル人権問題。そして同じように長年、中国から嫌がらせを受け続けている2つの「国」があることをご存知でしょうか。この2国に共通するのは、かつて日本に統治されていたという過去です。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では台湾出身の評論家・黄文雄さんが、台湾とパラオという小さな島国ながら不屈の精神で中国に抗ってきた歴史と、両国に息づく「日本精神」について紹介しています。

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2021年3月24日号外の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄こう・ぶんゆう
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

高まる世界の反中感情、深まるパラオと台湾の絆

パラオ大統領、対台湾関係重視 「友人を選ぶ自由がある」=インタビュー

台湾とパラオ共和国にはいくつかの共通点があります。ひとつは小さな島国であるという点。もうひとつは、新型コロナウイルス感染者がゼロだという点。最後に、民主主義を最も重んじる点です。パラオは台湾と外交関係を結ぶ数少ない国のひとつです。

そして、以前のメルマガでも書きましたが、台湾もパラオも日本がかつて統治した国であり、きわめて親日だという点も似ています。パラオ人の4分の1が日本人の血筋だとも言われており、パラオの国旗は青地に黄色の丸で、日本の日の丸の色違いです。

台湾とパラオという日本が統治した国が、今も中国に屈しない理由

そして、台湾もパラオも、中国から嫌がらせを受けているのも共通点です。パラオは台湾と国交を結んでいることから、中国政府から中国人観光ツアーを止められるといった圧力を受けてきました。

そんな台湾とパラオですが、互いにコロナゼロということで、4月から相互に観光客受け入れを開始することを決めました。団体客に限るなど細かい条件はありますが、海外旅行解禁の第一歩がスタートします。

同時に、パラオのウィップス大統領が3月28日から4月1日まで訪台することも発表されました。そのパラオの大統領が、台湾メディアの単独インタビューを受けました。そして、中国と台湾に対するパラオのスタンスについて、痛快に発言しています。以下、報道を一部引用します。

「ウィップス氏は中国が太平洋での勢力を拡張させていることについて、パラオは民主主義国家であり、『価値観を共有する国家と緊密な関係を維持することは極めて重要だ』と言及。その上で、台湾という堅実なパートナーがいるのは幸運で『この関係を引き続き強化させていきたい。これは疑う余地のないことだ』と述べた。

ウィップス氏は昨年11月の大統領選で当選を果たし、今年1月に大統領に就任した。当選後、北京から接触があったものの、『われわれには友人を選ぶ自由がある。誰と友達になっていけないと言うことは誰にもできない』と返答したことを明かした。台湾との関係を重視する姿勢を示し、『この関係を断つべきだと命じることは誰にもできない』と強調した。」(出典:中央社フォーカス台湾「パラオ大統領、対台湾関係重視 「友人を選ぶ自由がある」=インタビュー」)

なんと明確なコメントでしょうか。大国中国を恐れることなく、自身の立場をここまで明言できるのは、パラオが小国だからでしょう。パラオは、観光を主産業としている太平洋の小さな島国で、人口は約2万人。観光資源である自然を、保護しながら観光業に利用しています。観光客がゼロになっても、自然にとっては好都合ととらえる前向きさ。主産業が観光だからこそ、息の長い観光業を目指すため、自然保護は徹底しています。

新型コロナウイルス感染者ゼロのパラオ、観光局へオンラインインタビュー。サンゴの回復など「自然にとっては好都合」ととらえ取り組んでいく

トミー・レメンゲサウ前大統領も、中国政府の嫌がらせで中国人観光客が途絶えた際に、「集団での観光は環境に被害をもたらしている」「パラオにとって数が大きな利益を意味していたわけではない。われわれは量ではなく質の政策を模索する決意をより強くした」と、中国の嫌がらせに対して、むしろ望むところだといった気概を見せていました。

そんなたくましさがパラオにはあるのです。

私は、そうしたパラオの心意気は、日本人が台湾やパラオに残した「日本精神」の賜物ではないかとも考えています。少なくとも台湾では「日本精神(ジップンチェンシン)」は、忍耐、勤勉、誠実さの象徴とされています。

中国がどれだけ金銭外交を繰り返しても、国際社会において台湾を支持する声は、アメリカを筆頭にゆっくりですが確実に増えています。アメリカは、台湾との自由貿易協定(FTA)締結を提唱し、台湾に交渉を始めようと呼びかけています。もちろん台湾は大歓迎です。

一方で、米中の対立は深まるばかりです。3月19日、アメリカのアラスカ州で開かれた米中外相会談で、中国の楊潔チ外交担当政治局員が披露した20分近くにわたる反米スピーチは、世界のメディアで大きく取り上げられました。その中のフレーズのひとつ「中国人不吃這一套(中国人はその手は食わない)」は、中国人の間で流行語にもなり、Tシャツなどの関連グッズがすでに人気を博しています。

日本で活躍する中国人評論家の石平氏は、この言葉はチンピラが使うような言葉で、決して外交で使うものではないと批判しています。

「その手は食わぬ」バズる中国 米非難発言商品化

さらに3月23日、中国はロシアと外相会談を開き、反米で一致。ロシアとの関係を一層強化することを強調しました。また、習近平は北朝鮮の金正恩総書記と口頭親書を交換し、「敵対勢力の挑戦に対して両国が協力を強化する」「両国人民にさらに立派な生活を与える用意がある」などという対話を交わしたと報道されました。

北朝鮮に「立派な生活を与える用意ある」 習氏が親書

中国は、アメリカに対抗するための旧共産圏包囲網を固めているようです。とはいえ、中国とロシアというのは、最終的には敵対する国同士です。お互いに絶対に信用していません。また、北朝鮮と中国も、「血の同盟」などといいますが、お互いに決して心を許せる相手ではありません。金正恩は叔父の張成沢をはじめ、北朝鮮内の中国派を粛清してきたことは有名です。

中国がロシアと北朝鮮に秋波を送ると同時に、最近パイナップル禁輸という嫌がらせを働いた台湾に対しては、今度は懐柔策を打ち出してきました。3月18日、中国は農業分野で台湾人や台湾企業を優遇する22項目の措置を発表したのです。措置の正式名称は「大陸の農業林業分野における台湾同胞、台湾企業の発展支持に関する若干の措置」。略称は「農林22条措置」です。

これに対して、台湾側は以下のようなコメントを出しました。以下、報道を一部引用します。

「行政院農業委員会の陳吉仲主任委員(閣僚)は17 日、この措置について、『対台湾優遇は名ばかりで、実際には中国に利益がある』と批判。中国で近年、外来種の害虫ツマジロクサヨトウやアフリカ豚コレラなどが発生していることに触れ、内部に存在する食料安全保障のプレッシャーを解決するために台湾の人材や技術を呼び込もうとしていると指摘した。

外交部(外務省)は17日、呉?燮外交部長(外相)の名義でツイッターを更新し、英語で『彼ら(中国)はわれわれの自由のパイナップルを禁止しておいて、今度はわれわれの農業を根こそぎにできると考えている』と批判。『使い古された手口はわれわれには通用しない。われわれはあほうでもばかでもない』と強い言葉で中国を非難した。」(出典:中央社フォーカス台湾「中国、農業分野で対台湾優遇措置 行政院が批判「矮小化が狙い」」)

こちらも、子気味いい切れ味のコメントですよね。パラオ同様、小国の底力が言葉に現れています。

アメリカも日米同盟の強化を求めたり、台湾にFTA交渉を提案したりと、中国包囲網をつくるのに必死です。

日本に安保能力の向上を要求 米司令官、中朝へ対抗

世界はもう中国という巨大マーケットに遠慮して口を閉ざすことはしません。一方で、国際社会は、過去の大戦から多くを学んでいます。これから世界がどこに向かおうと、武力では何も解決しないことは明白です。

いまだに力による現状変更を行おうとしている中国に対して、国際社会ではNOを突きつける動きが加速していることも事実です。EUはウイグル人権問題で、30年ぶりに中国に対して制裁を決定しました。

EU、30年ぶり対中制裁決定 ウイグル人権問題で

中国は台湾と国交がある国を台湾から引き剥がそうとしてきました。しかし、実際には次第に中国と距離を取りはじめている国が広がりつつあるというのが、実態なのです。

 


 


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