緊急事態宣言を骨抜きにした「改正新型コロナ特措法」の大間違い

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新型コロナウイルスの感染拡大の第4波に見舞われている大阪府では、13日1日で新規の感染者数が1099人となり、大阪府知事は独自の「医療非常事態宣言」を発出するに至りました。しかし、国による対策レベルはいまなお「蔓延防止等重点措置」(まん防)で、緊急事態宣言の再発出はなされていません。メルマガ『8人ばなし』著者の山崎勝義さんは、わかりにくい上に「ゆるゆる」「だらだら」な対策になっているのは、政治家の「事なかれ主義」のせいと断罪。都市封鎖や外出禁止令などの法制化に踏み込む覚悟のなかった政府により命を落とす国民が増えるばかりと嘆いています。

強弱のこと

新型コロナウィルス感染拡大防止のための二本柱は、

  • 弱対策=蔓延防止等重点措置
  • 強対策=緊急事態宣言

である。しかしどういう訳か、過去最悪の感染状況のただ中にある大阪で弱対策である。これに関してはどうにも「ちぐはぐ」としか言いようがない。

そもそも年初から「ゆるゆる」の緊急事態宣言を「だらだら」と発出し続けたことが間違いであった。これは「今さら」論ではない。宣言発出当初から多くの疫学者や保健学者、特に数理モデルを専門とする人は声を大にして警告していた。「昨年春レベルの緊急事態宣言でなければ感染者数を十分に下げ切ることはできない」と。果たして事態はその通りとなった。

しかも「改正新型コロナ特措法」のあり方をよく見れば、運用次第では緊急事態宣言なるものが容易に骨抜きにされ、結果として「強対策」たり得なくなるという状況も予見できた筈である。実際にはどう見ても緊急事態宣言は「強対策」ではなく「中対策」であった。

この時本当の意味での「強対策」、例えば都市封鎖や外出禁止を伴うような「非常事態宣言」といったものが関連法として整備されなかったのは、日本人のいわゆる「事なかれ主義」によるものである。正直「事なかれ主義」などといった物言いは、あまりに軽佻浮薄で自分自身望むところではないけれど、それ以外に言いようがないから仕方がない。敢えて言い換えるなら(こちらも相当に軽薄だが)「無責任体制」くらいしか思いつかない。

「こんなことを国民に強いて一体誰が責任取るんだ」「取り敢えず俺はイヤだ」。そんな脳内会話シミュレーションが容易に想像できてしまうのはおそらく自分だけではないであろう。

もし仮に「改正新型コロナ特措法」が

  • 弱対策=蔓延防止等重点措置
  • 中対策=緊急事態宣言
  • 強対策=非常事態宣言

といった三段構えだったらどうであったろう。

おそらく緊急事態宣言下においては誰もが非常事態宣言発出とならぬことを切に願い、一日でも早く蔓延防止等重点措置に移行できるように努力するに違いない。そして一たび蔓延防止等重点措置となれば何としても二たびの緊急事態宣言の発出は防がねばと気を引き締めるに違いない。

感染症対策のように国民の全てが理解できて初めてその効力を発揮するといった性質の法は、同じ法であっても法曹や一部の官僚が理解できてさえいれば運用上問題ないといった類の法とは根本的に違う。誰にとっても分かり易いというのが絶対条件なのである(もちろん賞罰も含めて)。そうでなければ結局は詰めのところで甘さが出てしまい、今現在のような状況を招くことになってしまうのである。

結局は、覚悟の問題である。そう思う時、去年の春の緊急事態宣言以降、どんな厳しい感染状況下にあっても頑なにより厳しい措置を講じることをしていない政府は一体何がしたいのだろう、といった疑問が生じて来る。まさか呑気に時間が解決してくれるとでも思っているのだろうか。確かにそういうこともあるかもしれないが、その時は多大なる犠牲(者)が出ることを覚悟しているのだろうか。一応言っておくが、今この時も犠牲者は出ている。

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ここにあるエッセイが『8人ばなし』である以上、時にその内容は、右にも寄れば、左にも寄る、またその表現は、上に昇ることもあれば、下に折れることもある。そんな覚束ない足下での危うい歩みの中に、何かしらの面白味を見つけて頂けたらと思う。

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