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五輪どころか国家の危機。変異種に打つ手ない菅政権で沈没の日本

4都府県に発出された緊急事態宣言ですが、感染拡大を止めることは不可能なようです。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、コロナ禍という戦時対応が必要な状況にあって、何のリーダーシップも発揮することができずにいる菅首相を痛烈に批判。今のままでは国民の外出自粛の徹底など期待できるはずもなく感染は広がるばかりで、結果日本は衰退の道を歩むことになるとしています。

コロナ第4波で、日本衰退か?

大阪、兵庫、宮城で、4月5日に「まん延防止等重点措置」が発令され、4月12日から東京、沖縄、京都にも発令され、そして4月20日からは神奈川、千葉、埼玉と愛知にも発令された。

その上に4月25日から5月11日まで東京、大阪、兵庫、京都には緊急事態宣言が発令された。尾身会長はステージ3になるまで、緊急事態宣言は延長される可能性があるとしたが、菅首相は延長を考えないとした。

5月17日に、IOCバッハ会長が東京に来るので、それまでには、緊急事態宣言を解除したいようである。五輪ありきの見栄を気にするが、当初から五輪開催という目標に向けて、積極的なコロナ防御をしなかった政策には失望感しかない。

その上、今回のコロナ変異種は、今までのコロナとは大きく違い、軽い接触でも感染し、10歳未満の子供も掛かり、40歳代で重症化する。このため、今までより強い感染防止策が必要になっている。

このため、大阪府の吉村知事は、個人行動を抑止する法令が必要だと述べている。欧州などの都市封鎖に近い事が必要になっている。

このように、感染力が強いコロナ変異種に対抗するには、早く、モデルナとアストラゼネカ、J&Jのワクチンを特例承認して、国民のワクチン接種率を上げて、この危機に対応するべきであるし、数か月前から忠告しているが、それをしなかった報いが来ている。

感染者が、1日1万人以上になるのは時間の問題で、五輪に合わせて、感染者はうなぎ上りに上昇していく。東京でも1ヶ月もしない内に、1日感染者が2,000人になるので、第4波が一番大きいことになる。死者数もそれに合わせて、上昇してくる。これからがコロナ禍の本番を迎えるということだ。

よって、日本は、感染者が少なく世界とは違うとも言えなくなる。日本も世界並みに感染者が急増する。本当の都市封鎖も必要になる。コロナ感染が軽いうちに、本格的な防御対応しなかったことによる。

本当に五輪やる気か?世界が疑い始めた菅首相のリーダシップ欠如」で述べたように、英ジョンソン首相が五輪開催を強力に支援するとして、優先的にアストラゼネカのワクチンを日本に供給するとしたが、それを断った。

五輪開始にはワクチン接種が必要であるから、戦時対応するべきだが、今だに戦時対応をしない。看護師にも注射を認めて、英国のようにボランティアを募り、研修後注射を行う体制も考える必要になっている。注射をする人を多くしないと短期に接種が終わらない。英国の接種状態から判断できる。

下村自民党政務調査会長は、このままであると、65歳以上の高齢者への接種が終わるのは、2022年春になるという。菅首相は7月末には高齢者の接種が終わるとしたが、そのための有効な対応策を打たない。

自衛隊の医師・看護師を動員するというが、高々全国で1万人程度である。その程度では7月終了は無理だ。言葉とその政策が一致していない。すべて、その場限りの言葉だけだ。

ファイザーが、9月までに国民全員分のワクチンを供給してくれると菅首相は電話会議で約束したというが、ファイザーは交渉中というのみであり、欧州へ1億人分を追加供給するというが日本分の言及がなく、菅首相の言葉は、その場限りであった可能性が高い。

河野担当相も5月からアストラゼネカとモデルナのワクチンも接種するとしたことは、ファイザーのワクチンが追加されないことを意味している。ファイザー追加分でアストラゼネカのワクチンを使わないと思ったが、違うようである。それだったら、早く使えばよかったことになる。

重症者収容の病院もベット数も増えていないし、コロナ対応の看護師が大量に辞めている。コロナ対応病院の赤字も限界である。コロナ対応ができるように病院経営に手を打っていない。少しの援助で、多くを求めるから民間病院も手を上げられない。手を上げたら倒産してしまう。医師も看護師も逃げていく。

良い例が、東京女子医科大病院である。多くのコロナ看護師や医師が重労働にもかかわらず、給与や賞与を減らされて、疲弊して辞めている。病院が大幅な赤字になっているので、賞与も出せない。

そのような結果で、ワクチン接種を大会関係者、ボランティアや選手にできず、コロナ対応の医師・看護師も不足の中、変異種が拡大する事態になり、早期に五輪を中止すると宣言するしかない。このまま、東京五輪を開催すると、世界に感染を広げるエピセンターになりかねない。

それより、このまま五輪を開催すると、コロナ対応の看護師も五輪に取られて、コロナと五輪で一層医療崩壊も進んでしまう。日本のコロナ対応もできていないのに、その上に、五輪対応で医師・看護師を取られて、医療不足に輪を掛けることになりかねない。

五輪とコロナで大規模な医療崩壊が起きて、多くの死者を出しても、東京五輪を行う価値があるのであろうか。

軽い接触で感染するコロナ変異種の登場で、五輪開催は難しいことになった。なぜ、このようなことが分からないのか、不思議であり、道理が通じないので、あきれるとともに大きな怒りを感じる。

このような日本の状況を見て、米国を含む主要な国のオリンピック委員会は、選手団派遣に尻込みする事態であり、事実、豪州の水泳選手は、テスト大会の日本に来ないとした。

ということで、米ホワイトハウスも、東京五輪に選手を派遣しないと判断する可能性が出ている。バイデン大統領は、科学的でない、指導力もない日本のコロナ対応にあきれている。それが訪米した菅首相の粗末な対応にも出ていた。

そして、自民党幹部でも逃げ手を打つような政治的な動きも出ている。自民党の二階俊博幹事長が中止も選択肢との考えを示し、丸川珠代五輪担当相も、これを否定しなかった。

というように、リーダーの指導力不足で、日本は沈んでいくことになる。

 

個人や医師会などは、自己の狭い利益で判断しているが、この狭い利害を超えて、一国のリーダーは国全体の利益を考え判断して、個人や医師会の利益を超越した政策を強力に推し進める必要がある。

その点、英国のジョンソン首相はリーダーの見本である。医師の治療範囲の規制緩和を危機時に大きく推進させている。そして、早期に国民のワクチン接種を進めている。見習うべきだ。

もう1つ、ワクチンが原因で死亡する例も出ている。今までに日本でも10人の死亡者が出ている。恐らく、ファイザーのワクチンでも1,000人の死亡者が出る。アストラゼネカのワクチンでは、その数倍は出るので合計で5,000人程度の死亡者が出るはず。

特に寝たきりの高齢者や癌などの重い既存症がある人、90歳以上の高齢者には接種させないことだ。トリアージではないが、老い先の短い人に無理して、ワクチンを打つ必要はない。それと、アストラゼネカのワクチンは、50歳以上にしか接種しないとかの制限も必要になる。

それでも、接種自体は、強力に推進することである。集団免疫ができれば、接種していない人も感染しにくくなる。

もう1つが、10歳未満の子供でも感染するので、学校の閉鎖やオンライン授業も必要になる。そして、近い将来には、15歳未満の子にもワクチン接種が必要になる。

学校閉鎖を必要でないとしたことは、10歳未満の子供でも感染することを文科省は知らない可能性を感じる。政府全体でのコロナ分科会、もしくは安全保障会議で感染予防策を議論するべきである。今は首相と数人の担当相だけで議論して、政府全体への周知ができていない。原発事故時の取り巻きだけで政策を決めていた菅首相と同じ対応をしているようだ。

それと、4月25日から5月11日まで緊急事態宣言で、経済的には6,990億円の損失が出るが、そこでコロナ感染拡大が収まらないと、1回目の緊急事態宣言と同様に6兆円もの損失になる。

緊急事態宣言で外出自粛になるが、今の感覚では日本人は、外出自粛ができずに、感染拡大を止めることができない。個人行動を抑制する外出禁止の罰則付きの法律ができるまで、当分、感染拡大が止まらない。どうも、長期に渡るコロナ慣れ、コロナ疲れが出ている。

それに伴ない、コロナ死者数も多くなるが、失業者数もより多くなり自殺者も多くなることが想像できる。貧富の差も拡大して、多くの若い人たちが将来を悲観することになる。

英ジョンソン首相のような強力な指導者が国の危機時には必要であるが、残念だが菅首相にはない。今、小泉純一郎のような強力なリーダーがいれば、私の提案を実行したと思う。このような強力なリーダーが危機時にいないことが、日本を衰退させるとことになるし、なったとも言える。

このコラムで、未来を見て何回も忠告してきたが、一切無視されて、その結果、日本が衰退するのは、まことに残念だ。

さあ、どうなりますか?

image by: 首相官邸

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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