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営業マンが「嫌な客」を切るのはアリか?優先順位の正しい決め方

粘り強い交渉力が求められる営業職ですが、取引先の担当者が無理難題を突きつけてくるようなタイプだったりどうにも相性が悪い場合でも、関係を断つことは許されないものなのでしょうか。今回のメルマガ『久米信行ゼミ「オトナのための学び道楽」』ではiU情報経営イノベーション専門職大学の教授で飛び込み営業の経験も持つ久米信行さんが、そんな読者からの質問に対して明快に回答。自作のマトリクスを示しつつ「営業の優先順位」の決め方をレクチャーしています。

オトナの放課後相談室「お客を選んでもいい?」

Question

私は8年くらい営業職をしています。

自分の狭い経験則で感じているのは、「条件交渉を一方的に言ってくるお客さんはお得意様にならない」ということです。シビアなビジネスの世界では、それが当たり前なのかもしれませんが、どうも条件交渉やいろいろマウンティングしてくる方とは、いい関係にならないなぁと実感しています。

例えば、私の会社のダメ出しを散々して、いかに自分(先方)の会社と仕事をすることがメリットがあるかを語ってくるとか。そのくせ値引きしろ、便宜をはかれと迫ってくるのに、土壇場で契約を反古にされたり、すぐに契約を打ち切られたり、いい思いをしたことがありません。こっちがいろいろと優遇的な条件提示をしたり、先方の要望に応える案を出しているのにもかかわらずです。

逆に長いお付き合いになる方は、条件提示があっても、こっちの事情も気にしてくれるし、そのビジネスがうまくいくために向こうも協力してくれます。

それならいっそ、そういう嫌なお客さんは相手にしない方が生産性は上がるのではないかなと思っています。

長年、経営者として数々の修羅場をくぐり抜けてきた久米さんのご意見をぜひ聞かせてください。(東京都・38歳、男性)

久米さんからの回答

お客さまは選ぶもの創るもの。ただし良い会社ならガマン。

「嫌なお客さんは相手にしない方が生産性は上がるのではないか」という意見に賛成です。

ただし「嫌な」の定義は、意地悪だとか、性格が合わないとかいう話ではありません。「営業努力を重ねても、成果が出ない可能性が高いお客さん」という意味です。

お話の中にあった「こっちがいろいろと優遇的な条件提示をしたり、先方の要望に応える案を出しているのにもかかわらず」「土壇場で契約を反古にされたり、すぐに契約を打ち切られたり」というお客さんが、それに該当するでしょう。

しかし営業の優先順位は、担当者だけで決めるべきものではありません。

こんなマトリクスを創ってみました。

担当者の良し悪しよりも大切なのは、その会社が良いかどうかです。

特に、このコロナ禍にあっては、経営が厳しくなって信用が怪しくなっている会社が少なくありません。そんなアブナイ会社が仮にたくさん買ってくれたら、どうなるでしょうか?最悪は倒産して未回収になるかもしれません。

また、営業努力に見合っただけ、売上が増える可能性があるかどうか、その伸びしろを見極めるのが営業の仕事でもあります。同時に、売上が増えたとたんに、強烈な値引きをされるような会社かどうかも情報を集めましょう。多少の値引きは仕方なくとも、期待した売上と利益があげられる営業先を選ばなくてはなりません。

それから、どんな担当者が良い担当者か、きちんと基準を設けましょう。

一番大切なのは、発注権限を持っているキーパーソンかどうかです。威張っているのに、実は何の権限も無い人に、個人的便宜も含めて様々な要求をされては、時間と資源の無駄遣いです。誰が本当の権力者か見極めるには、営業先のスタッフとも仲良くなって聞きだしましょう。

権限があるキーパーソンに限って、厳しいことは言っても、合理的で、無理な要求はしないものです。意味のある値引きは求められるかもしれませんが、長期的に長続きする関係で、お互いにwin-winとなる関係を築こうとする。そんな大所高所から見通せる担当者なら、将来出世 もするでしょう。

こうして会社と担当者の良し悪しでマトリクスを作ると、どんなお客様に対して営業を注力すべきか、優先順位が見えてきます。

もちろん、会社も担当者も良い取引先が第一優先順位ですが、その次の第二優先順位は意外だと思われるかもしれません。会社が良ければ、担当者が悪くとも、そこを次に攻めるべきという表だからです。

ありがちなのは、付き合ってはいけない会社で、なぜか気の合う担当者と出会ってしまい、頻繁に訪ねては無駄話をしてしまうことです。ほどほどの売上は作れるでしょうが、会社の与信等に問題があれば、大量発注されても受注できないかもしれません。

逆に、担当者とノリが合わなくても、会社が良ければ大量受注につながる可能性もあります。それこそ、エニアグラムで相手のタイプを調べたり、SNSで相手の好みを調べたりすれば、今より仲良くなることもできるでしょう。

また成長性が高い会社であれば、担当者のジョブローテーションも盛んなはずです。悪い担当の後は良い担当、良い担当の後は悪い担当がめぐってくるのが世の常。ご自身のジョブローテーションも考えれば、3年ほどのガマンだと割り切ればよいでしょう。

いずれにせよ、営業先の優先順位を常に考えて、既存のお客さまごとにかける時間と情熱を最適配分することが大切です。さらに大切なことは、一定の時間を新規の顧客開拓にあてること。

嫌なお客様や、ただおしゃべりをするためのお客様に通う時間があったら、会社も担当者も良いお客様を開拓する方が、成績を上げる早道です。

同じ辛い思いをするなら、嫌なお客様のお守りをするより、新規のお客様に当って砕ける方が将来につながるがあるはずです。

ぜひ、AIでも変わることが難しい「営業道」の一歩先を目指して ください。

image by: Shutterstock.com

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1963年東京墨田区出身。87年慶応大経済卒。イマジニア新卒一期で飛込営業と株式投資ゲーム開発。88年日興證券でAI相続診断システム開発研修統括。91年家業の国産Tシャツメーカー久米繊維工業入社。94年三代目社長就任(現相談役)。97年日経インターネットアワード、05年経産省IT経営百選、09年東商勇気ある経営大賞等受賞。10年APEC中小企業サミット日本代表。20年開学の新大学iUでは起業家教育・地域創生担当教授。明治大、多摩大の授業や企業団体研修に即した25万部超の「すぐやる技術」シリーズ等著書15冊。内外情勢調査会等で毎年数千人に講師。東京商工会議所墨田支部副会長、墨田区観光協会理事、墨田区文化振興財団 評議員として地元振興。新日本フィルハーモニー交響楽団・NBS日本舞台芸術振興会・日本吟剣詩舞振興会 各評議員として文化芸術振興。

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