今年1月、アメリカがユニクロのシャツについて、中国当局によるウイグル人の強制労働下で生産された素材が使われている疑いがあるとして、輸入を差し止めていたことが明らかになりました。このような流れはますます加速していくことになるだろうとするのは、台湾出身の評論家・黄文雄さん。黄さんはメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』で今回、新疆ウイグル自治区で行われている人権弾圧や、これまで当局が行ってきた「宗教弾圧」の実態を詳らかにした上で、中国と民主主義は絶対に交わらないと断言。さらに今後、中国と関わること自体がリスクになるとの警告を発しています。
※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2021年5月19日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。
【中国】ついにウイグル問題の悪影響が日本企業を直撃
● 首脳らは北京五輪の「外交的ボイコットを」…米下院議長、中国のウイグル族弾圧に反発
アメリカ下院のナンシー・ペロシ議長が超党派の議会公聴会において、中国のウイグル人弾圧や香港での人権抑圧問題を受け、各国に向けて、来年の冬季北京オリンピックに首脳らを派遣しないよう呼びかけました。
また、公聴会の議長であるクリス・スミス議員も、五輪スポンサーを、中国が残虐な行為を行っているにもかかわらず利益優先で無視していると批判、さらにはジム・マクガバン下院議員は、1年延長して、そのあいだに残虐行為をしていない国に開催地を変えるべきだと述べました。
ここで、ペロシ議長とマクガバン議員は民主党、スミス議員は共和党であり、議会は両党で中国の人権弾圧を批判し、五輪開催についても疑問を呈しているということです。中国批判では民主党も共和党も一致しているわけです。
オーストラリア戦略政策研究所は昨年、日本企業14社を含むグローバル企業83社が、ウイグル人を強制労働させている中国のサプライヤー企業と取引しているという報告書を出しました。ウイグル人が強制労働させられている工場で、これらの企業の製品が作られていることを明らかにしたわけです。
この14社の日本企業とは、日立製作所、ソニー、TDK、東芝、京セラ、三菱電機、ミツミ電機、シャープ、任天堂、ジャパンディスプレイ、パナソニック、無印良品(良品計画)、ユニクロ(ファーストリテイリング)、しまむらです。
日本ウイグル協会とヒューマンライツ・ナウは、この14社に対して質問状を出しましたが、パナソニックは無回答で、その他の13社は強制労働との関連性を否定したそうです。各社の回答と、それに対する評価については、ヒューマンライツ・ナウのホームページで見ることができます。
● ウイグル自治区における強制労働と日系企業の関係性及びその責任
そして5月19日、アメリカが今年の1月に、ウイグル自治区産の綿製品に対する金融命令に違反したとして、ユニクロのシャツの輸入差し止めを行ったことが明らかになりました。この流れはますます加速していくでしょう。
● ユニクロの綿シャツ、米が1月に輸入差し止め 新疆の強制労働巡り懸念
もちろん、中国がウイグル人を弾圧するのは、夷狄を人と見なさない、華夷思想からくるものです。大儒者の王夫之は、「仁義とは人に対するものであって、夷狄は禽獣だから殺しても不仁とは言われず、裏切っても不信・不義にはならない」と述べていました。
じっさい、ウイグルでは出生率が2年で半減したことが明らかになっています。不妊手術や子宮内避妊具装着手術が急増しており、中国政府による強制的な不妊処置によるものです。中国政府系シンクタンクは、「新疆の女性たちが自ら進んで不妊手術を受けている」などと言っていますが、100万人のウイグル人が収容所に入れられ、強制労働に従事させられているなかで、そんなことがあるはずがありません。
● 【独自】新疆ウイグル出生率2年で半減 中国統計入手、不妊処置が急増
ウイグル問題では、アメリカ、EU、イギリス、カナダがすでに中国に対して制裁措置を出しています。EUが中国へ制裁をかけるのは30年ぶりです。そしてEUにはフランス、ドイツ、イタリアも加盟しています。
そのため、先進7カ国(G7)で制裁の輪に加わっていないのは、日本だけなのです。このことは以前のメルマガでも書きましたが、1989年の天安門事件に対する各国の対中制裁を、最初に解いて天皇訪中をさせたのが日本なのです。これをきっかけに対中制裁の輪が崩れ、各国は次々と制裁解除することになったのです。
また、BBCが報じたところでは、人権団体「ウイグル人権プロジェクト」によれば、2014年以降にイスラム教の指導者(イマーム)など、同宗教関係者630人以上が中国当局に拘束・収監されており、現在はイマーム18人が拘束中または拘束の直後に死亡したことを示す証拠が見つかったとのことです。
こうしたイマームたちは、「過激思想を広めた」「分離運動を扇動した」といった理由で拘束されていますが、実際には説教や礼拝集会を開いただけで犯罪とされて逮捕されるケースがほとんどです。
中国政府のデータによれば、2017年の中国全土の逮捕総数のうち、21%が新疆での逮捕だったそうです。しかし、新疆の人口は中国全体の1.5%しかありません。どれだけ逮捕者が多いかがわかります。
しかも先ほどのBBCの報道では、新疆では2018年に7万4,348件の犯罪事件が記録されているものの刑事裁判が確認できるのは7,714件と10分の1しかないということです。とくに、宗教指導者たちに適用される罪状の裁判がほとんどないため、中国が意図的に記録を除去していると指摘しています。
中国では宗教に対する弾圧がますます強まっており、それは文革以来で最悪ともいわれています。たとえばキリスト教は政府公認の教会では司教は中国政府が任命します。宗教を否定する共産党が宗教上のリーダーを選ぶというのですから、矛盾だらけです。また、祭壇には毛沢東および習近平の肖像画を飾ることが義務化されており、神と同一に扱わなくてはならないのです。
これは、他の宗教でも同じです。チベット仏教では、ダライ・ラマとパンチェン・ラマという宗教指導者がいます。いずれも、死去したときには、その同日同時刻に生まれた子供を「転生霊堂」として生まれ変わりと認定し、次の指導者に指名するのです。
1989年、パンチェン・ラマ10世が死去し、その6年後にダライ・ラマは当時6歳の子供をパンチェン・ラマ11世として指名しました。ところが中国政府はこれを認めず、この子供を拉致したあげく、別の人間をパンチェン・ラマに指名したのです。拉致された子供は長らく行方不明になっていましたが、昨年5月、中国は「大学を卒業して就職した」と、突如、発表しました。
● 25年前に失踪したパンチェン・ラマ、「大学卒業して就職」と中国外務省
1847年、キリストの弟を自称する洪秀全が「拝上帝会」という組織をつくり、1850年に軍事組織化し、翌年から軍事行動を開始。いわゆる太平天国の乱が起こりました。この太平天国の乱では、14年間で2,000万人以上が死亡するという、人類史上でも最大の大動乱でした。
その後、孫文も「第2の洪秀全」を任じ、清朝打倒を目指して辛亥革命を進めました。そのため、中国政府にとっては、宗教が天下動乱や政府転覆の元凶だという恐れがあるのでしょう。また、中国人も儒教も、きわめて世俗的な性格です。そのため、反宗教になりやすいのです。
欧州では、宗教改革以降、キリスト教がヨーロッパ中に広がり、それが近代資本主義や民主主義の礎となりました。また、清教徒革命では宗教の教徒が王政を倒して民主主義化へと進みました。
ですから、中国の宗教弾圧は、近代資本主義や民主主義を否定することにもつながっています。いつまでも皇帝制を維持するために、宗教を弾圧しているわけです。つまり、中国と民主主義は絶対に交わらないということなのです。
2021年3月に行われた米中外交トップの会談では、中国の楊潔篪・共産党政治局員が「中国には中国流民主主義がある」といった意味のことを述べました。たしかに、中国政府は民意は理解しています。なにしろ監視社会ですから、盗撮、盗聴によって、民衆が何を考えているかは理解しているでしょう。しかし民意を反映させるのではなく、政府にとってまずい民意を早めに潰すのが「中国流民主主義」なのです。
いずれにせよ、中国とかかわりを持つことが、どんどんリスクとなってきています。しかも、中国は西欧の民主主義と相容れないことも次第にはっきりしつつあります。
もはや、中国問題について曖昧な態度では許されません。894年に日本が遣唐使をやめたように、これからは中国との交流を絶つことが、日本の利益となるのです。
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