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東大を出ても“忖度官僚”どまり。日本人の「学力低下」を加速させた真犯人

日本人の「学力低下」が止まりません。アジアを見渡しても、中国や台湾、韓国、シンガポールなど日本より教育水準の高い国は多く存在しています。日本の教育は、いつから学力を軽視するようになってしまったのでしょうか。メルマガ『和田秀樹のテレビでもラジオでも言えないわたしの本音』の著者で精神科医・映画監督の和田秀樹さんは、かつて導入された「ゆとり教育」への反対運動に参加した過去を振り返りながら、現在も続く日本の教育のあり方に警鐘を鳴らしています。

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新型コロナと学力低下

朝のワイドショーを見ていたら、地方の高校生がハーバードに合格したと大騒ぎしていた。

ここにもテレビ局の無知があるが、もちろん論文や面接など、その男の子の英語力や発想は素晴らしかったのは間違いないが、アメリカの大学では在学中の成績を見るので、地方の高校で1番のほうが、開成や灘で10番より上の扱いを受ける。地方なのにすごい、というのは大きな勘違いだ。

いずれにせよ、経済力(おそらく6万ドルやそこらの経費が年間かかるはずだ、これも全然言及されなかった)が許せば、東大のクズ教授に「これが正しい」と教えられるより、ハーバードの教授と議論のできる教育を受けるほうが発想は豊かになるはずだ。将来を期待したい。

私はご存知の通り、受験勉強を否定しない。

受験勉強で頭が固くなるようなことが言われるが、それは受験の世界を知らない人がいうことだ。学校に逆らい、いろいろな勉強法を工夫する人のほうが入りやすい。少なくとも受験勉強を通じて、勉強のやり方を身につけることができる。これが大人になってからの財産だ。

しかしながら、日本は大学に入ってからの教育が悪すぎる。疑ったり、議論したりという教育をやらない。

教授のいうことに素直に従う人間が優をたくさんとる。東大の法学部では、それが忖度官僚を生み、せっかく理系のその年のトップテンのような頭脳の持ち主が、一生、教授の金魚のしっぽのような人間になる。

大学での教育がクズなので、大学を出てからよい教育を受けた人がおそろしく頭のいい人になる。ほとんどの東大卒の人間がそれに勝てない。

日本の大学教授で私が尊敬できる人はほとんどいないが、一橋大の井伊雅子先生はそんなうちの一人だ。ICU(国際基督教大学)を出てアメリカの大学院で博士まで取られている。

ICUは以前、私の師である土居健郎先生が在籍したが、井伊先生も、そこの教養教育が素晴らしかったとおっしゃっていた。完全に日本の中だけで勉強した人の中で、私がすごいと思う人は何人かいる。たとえば早稲田を出た市井の歴史の研究者である井沢元彦さんの推理力はすごい。そんな中で、最もすごいと思う人が小林よしのり氏だ。

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商業高校から福岡大学という学歴なのに、おそらく東大卒のほとんどを論破できる知力を持っている。

保守論陣の中の一人だが、圧倒的に筋が通っているし、アメリカにヘコヘコする保守の人を「ポチ保守」と呼ぶセンスもすばらしい。

そんな彼が、ある時期からコロナの意味不明な自粛政策やコロナ恐怖を煽るマスメディアの批判を始め、『コロナ論』を論じ始めたのだが、驚くほどまともなデータに則ったものだ。

ということで長年、小林氏に注目してきたのだが、彼のチャンネル「よしりん・もくれんのオドレら正気か?」という番組でゲストで呼んでもらえることになった。

書き物と違って物腰の柔らかいいい人だったが、やはり話はシャープだ。

彼のコロナ論を読んでもわかるが、子どもが一人も死んでいないような弱毒性の病気で市民生活の規制を続けることの矛盾点を見事についている。

もう一つは、ここしばらく私がテーマにしている「命汚さ」を嘆いている点だ。

彼は、命のために自由を売り渡している人間を「畜獣」と呼んでいるが言い得て妙である。

実際、多くの人が予防医学という宗教にだまされて「畜獣」と化している。

たとえば血圧が高いと指摘されれば、塩辛いものが好きな人もお酒が好きな人も、それを一生我慢する。さらに降圧剤を飲むと頭がフラフラするのに、そんな状態を一生我慢する。

実は、血圧を下げて長生きできるというエビデンスは日本にはないのだが、仮にあったとしても、自分の幸せを犠牲にして、食べたいものも酒もがまんし、頭がボンヤリしていても長生きしたいという様はまさに「畜獣」である。

聞けば、小林氏は一切、健康診断を受けていないそうだ。

私の知る限り、これだけ徹底した医療拒否をしているのは、私が東大卒でいちばん頭がいいと思っている中田考氏だけだ。現代医学を信じて、楽しみのないまま長生きできればいい畜「獣」と、頭のいい「人間」とは明らかに違う。

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さて、私が小林氏に呼ばれたのは、何かの書き物で、「日本人はネットを使っても、統計数字に当たることはない」ということを書いて、今の日本人がなぜ小林氏の話が理解できないのかがわかったということと、その事実に衝撃を受けたということだった。

さらに、「自分は数学が苦手だったし、今でも苦手だが、今回のコロナの話はすべて四則計算ができればわかる話だ」ともおっしゃった。

どちらもその通りである。しかし、日本人の愚民化政策はものの見事に成功している。

90年代の末に、私は京都大学の西村和雄先生たちと「ゆとり教育」の反対運動に身を投じていたが、90年代の半ばに、日本人の中学生の数学力はシンガポールや韓国の子どもに抜かれてしまった。

それなのに「ゆとり教育」を断行したのだ。

それをなんとかやめさせようと、西村先生は大学生の数学力調査を行った。そこでは、さらに戦慄的な結果が待っていた。

なんと、早慶クラスの大学でも、数学を未受験で入学した学生は、2割が分数の計算ができず、7割は二次方程式の解の公式を使う問題ができなかった。

数学を入試に出さないとこんな程度の学力なのは、「高校で落第させない」からだ。

そして早慶へ合格者を出す高校というと、地方だと一流と言われているはずだ。

地方の一流校の高校生の2割以上が分数ができず、7割が二次方程式ができない。

結果論として、PCでもスマホでも半導体でも、日本は台湾、韓国、中国に勝てなくなった。我々の予想はものの見事に当たったが、当時は、彼らに日本が負けるわけがないと一笑に付されていた。日本の製造業がアメリカに勝ったのは学力のおかげ(そう分析されて、アメリカはレーガン以降、基礎学力の育成に力を入れている)だが、日本の先進製造業が東アジアの国々に勝てないのは学力低下のためだ。

こんな話をするとウヨクは日教組のせいにしたがるが、日教組にそんな力はない。

文科省のサヨク官僚と、日本の問題をすべて受験のせいにして自分たちの大学教育の改革を拒み続ける大学教授、とくに東大教授たちが「ゆとり教育」の実行部隊であり、それを陰から支えたのが、自分のバカ息子を世襲させたい政治家と財界人である。

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その当時、財界人は「受験批判」「東大の人間の創造性のなさ批判」をしていたが、就職では東大生を圧倒的に優遇していた。

こんなダブルスタンダードも、バカ息子の世襲のためだが、信じた親御さんも、その影響を受ける子供たちも可哀想だ。

少子化なのに、高校も大学も定員を増やしたこともあいまって、高校も大学も入るのが簡単になったから学力低下は止まらない。

その間に中国の沿岸部の子どもも、台湾の子どもも高い学力をつけ、IT産業では彼らに太刀打ちできなくなった。

「ゆとり教育」は撤回されたが、教科学習がダメだから総合的な学習をさせようという発想(これは高等教育には取り入れてほしいものだが、基礎学力の育成には邪魔になる)は続く。

またペーパー試験だけで入学者を選ぶのは古いという話にして、そうでなくてもペーパーテスト学力が落ちているのに、半ば強制的に面接入試、小論文、そして学校の内申点などを重視する入試が導入された。

文科省の役人の重要な天下り先のためなのだろう、あるいは審議会の委員の大多数が大学教授のためなのだろう、もともとよかった初等中等教育や大学入試制度は、この30年以上改悪の連続で、逆に、本来変えるべき高等教育(大学教育)の改革は遅々として進まない。

「ゆとり教育」や「学力軽視」は本当に恐ろしい。

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image by: Wiennat M / Shutterstock.com

※本記事は有料メルマガ『和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」』2021年6月5日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月すべて無料のお試し購読をどうぞ。6月分のすべてのメルマガが届きます。

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高齢者を専門とする精神科医、学派にとらわれない精神療法家、アンチエイジングドクター、そして映画監督として、なるべく幅広い考えをもちたい、良い加減のいい加減男。

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