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過去最多609万人の衝撃。年金保険料「免除・猶予」が激増している日本の現実

厚労省が発表した「国民年金加入・保険料納付状況」によると、所得が少なく年金の納付を全額免除されている人が過去最多の609万人に達したと新聞各紙が報じました。人数の多さにも驚きますが、前年比で26万人増という数字もコロナ禍と無縁ではありません。なぜ日本の年金保険料の免除・猶予の対象者はここまで激増してしまったのでしょうか? メルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』著者でジャーナリストの内田誠さんが、その原因を過去の新聞報道から探るとともに、「年金制度」そのものを変える必要性を説いています。

年金保険料の免除・猶予が激増中。新聞各紙はどう報じてきたか?

きょうは《東京》から。

年金保険料の免除が増えているという話、一見すると地味ですがかなり重要な内容です。「年金保険料」と「免除」で東京新聞のデータベースを検索すると、31件にヒットしました。

【フォーカス・イン】

まずは3面記事の見出しから。

年金保険料免除609万人
特例措置 コロナ影響で最多

厚労省発表の「国民年金加入・保険料納付状況」によると、所得が低く、納付を全額免除されている人は前年度比26万人増の609万人で過去最多だった。新型コロナウイルス感染拡大による経済状況悪化が影響したか。納付率は前年度比2.2ポイント上昇。

免除者の増加は特例措置によるところが大きいようだ。「厚労省は昨年4月、コロナ禍で大幅減収となった人の保険料の全額または一部を免除しやすくする特例措置を決定」したことを指す。

全額免除になった期間に対応する年金は全額納付の場合の半額になるが、10年以内に追納すれば本来の額を受け取ることができる。

納付率の上昇は「コンビニやクレジットカードを利用した支払い方法の普及などが理由」。実質的な納付率は、全額免除・猶予の分を加味すると40.7%まで下がる。

国民年金加入者数は20年度末で1449万人。前年度末から4万人減ったのは、パートなどに厚生年金が適用になったためと見られる。

(uttiiの眼)

納付率の上昇の理由は他にも考えられる。保険料支払いが免除された期間も受給資格を得るための期間(10年。以前は25年だった)にカウントされ、また追納がなくても半分は受け取れることが分かって、今までは支払いを無視していた人が免除を申請し、制度の枠内に入ってきた可能性があるのではないだろうか。将来不安が強まる中、僅かでも年金がもらえるようにしておく方が得だと判断して、「未納」から「免除」に変える人がいても不思議はない。

【サーチ&リサーチ】

*きょうは、きょうのニュースに関連のありそうな記述で、重要と思われるものをランダムに拾っていきます。

*2016年の記事によれば、既に免除制度の前年度の利用率が37.9%と、3人に1人以上に達していた(2016年9月26日付)。

*20~30年後に無年金や受給額が低い高齢者が激増するのではないかとの懸念が広がる中。「収入が低いと、国民年金保険料の納付は大きな負担となり、滞納につながることが多い。厚生労働省が実施した14年の国民年金被保険者実態調査によると、国民年金保険料の滞納者は全国で368万人。滞納理由については「経済的に支払うのが困難」が約72%で圧倒的に多かった」(2017年11月2日付)。

*保険料徴収を強化する動きも。「日本年金機構は4月から、所得が年間300万円以上で国民年金保険料を滞納している人からの強制徴収について、督促の基準となる滞納期間を現行の「13カ月以上」から「7カ月以上」に拡大する」(2018年1月31日付)。

*そして、コロナ禍で…。「新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、社会保険料支払いの先延ばしや免除を実施する政府の特例措置の利用が急増し、業績が悪化した企業に対する猶予認定は計1千億円以上に達した。緊急事態宣言が全国で解除された6月以降も経営が直ちに上向く企業は少なく、今後も特例利用は増える可能性がある」(2020年7月26日付。この記事は主に厚生年金の話ではあるが…)。

(uttiiの眼)

年金保険料については、各個人の状況に応じて、様々な「免除」の制度が組まれている。決して十分ではないと思われるが、それでも、なかなか終わらないコロナ禍の中、少しでも被害、損害を小さくするためには、キチンと処理しておくことが必要になる。

無年金か低年金の高齢者が激増するだろうという予測が、今でも現実的だ。年金制度の改良は是が非でも必要なことで、保険の形を取る限り解決できない問題を正面から見据えて制度を変えるべきだと思う。

【あとがき】

以上、いかがでしたでしょうか。

どうしても年金の話になると、制度の根本的な改革が必要だというところに逢着してしまいます。それでも、最低保障年金からベーシックインカムまで、議論の幅は決して狭くはないのですが。

image by: Pierre Aden / Shutterstock.com

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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