今、再ブームが到来していると言われるラジオ。一方でテレビに目を転じれば、特に若い世代の視聴者離れが深刻なものとなっています。何が両者の明暗を分けたのでしょうか。今回のメルマガ『テレビ解体新書』では、「しくじり先生」などを担当するフリーのテレビディレクター・宮本大輔さんが、ラジオの魅力を分析しつつ、そこからテレビの作り手が学ぶべきポイントを考察しています。
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ラジオの魅力から学ぶ
以前、「音の重要性」について話しましたが、今回はそれに通ずる「音」の話題。
最近ラジオブームだと聞きます。その要因で考えられる一つの理由は、「コロナによる自粛期間中のコンテンツ消費疲れ」があると考えています。
このコンテンツ消費疲れ。我々テレビマンは常習病であるともいえます。
普段、映像をさんざん見ないといけない仕事なので、ふと、自由な時間ができた際、2時間の映画を見るのはなかなかハードルが高い。1時間のバラエティも重く感じてしまう。結果として、30分の番組を見てしまいます。
そして、バラエティより『情熱大陸』や『世界遺産』などを見てしまいます。
そうなると、耳だけで聞くラジオはコンテンツ消費疲れが非常に起きにくいコンテンツであると言えます。
とはいえ、目と耳で受けるテレビと耳で受けるラジオを比べた時、ラジオは映像のないテレビであると思われがちですが、そうではないと僕は考えています。
まず、身体性の面から考えていきます。
構造的に大きいと思うのが、「目は閉じることができるが、耳は塞げない」。
基本的に人間は生活をしているうえで音をずーっと聞きながら生活している。いわば人間は音から逃げられない、ともいえます。
そして、人間は顔で見分けるより声で見分ける方が得意であるとも言われています。よく考えると、これだけの数の声を聴き分けるのは凄いと思います。生理学的に聴覚は記憶に直結しているとも言われています。
そう考えると、耳だけで聞くコンテンツであるラジオは、話し手と聞き手の距離感が間違いなく近い。
現に、その特性が分かっている優秀なラジオDJは冒頭のあいさつで、聞き手に対して「あなた」という一人称を使います。逆にテレビは多人称「皆さん」。
ラジオは「今日もあなたのお時間にお届けします」。テレビは「今日も皆さんにお届けします」。
テレビよりラジオの方が「私個人に伝えてくれている感」が強い。
テレビは「数」、ラジオは「深さ」。
その特性からいえることは、ラジオの方がインフォメーションよりエモーションが大きいといえます。
そしてラジオの方が事細かく説明しなくても、勝手に聞き手が想像してくれるメディアであるといえます。
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では、そのラジオの魅力と特性からテレビが学ぶことは何なのでしょうか?
テレビはラジオの逆でエモーションよりインフォメーションが大きいメディアです。しかし、エモーション(心が動くとき)はテレビでも時に起きます。
おそらくポイントは、インフォメーションからエモーションに切り替わった時、視聴者に考える余白をしっかり作るということ。
実はこれを実行できているテレビマンは非常に少ないと思います。
せっかく視聴者の心が動いたのに、考える間をあたえず次のインフォメーションを洪水のように流し込んでしまっている。
言語化すると「視聴者と対話しながら作らないといけない」ということです。
視聴者との対話を意識しながら作ると、その番組には結果として「緩急」がつきます。逆に意識しないとデジタルな1テンポの番組なってしまいます。
具体的な手法となると、これまた複雑な話になってしまうので、またの機会にしたいと思います。
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