トランプ暴言、中国、コロナ。大暴動の南アフリカに混乱を招いた複雑な要因

 

【サーチ&リサーチ】

* ズマ氏は、アパルトヘイトを廃止に導いたネルソン・マンデラ氏の後継者で、マンデラ氏が作ったアフリカ民族会議(ANC)の党首となり、マンデラ氏の後を継いで大統領になった人物。解放運動の闘士だったが、就任後は数百に及ぶ汚職疑惑にまみれ、急速に支持を失った。憲法の規定で3選できないため、元妻を大統領候補に押し立てたが、ANCの議長(党首)選でラマポーザ氏に敗れた。それでもズマ氏はなかなか大統領を辞めなかった。

* 結局、ズマ氏は18年2月に辞任。議会が副大統領だったラマポーザ氏を大統領に選出。3月、ズマ氏は16の罪で起訴される。

* ラマポーザ大統領は、今も白人による大土地所有が続いていることについて、「不平等を是正する」ため、白人所有の土地を補償金なしで収容し、黒人に再配分する方針を提示したが、このことについて、トランプ米大統領(当時)がツイッターで反発し、白人至上主義者の主張に沿って「白人農家の大規模殺害」などと言い立てた(2018年8月15日付)。

* 中国は、アフリカ諸国を取り込むために躍起になっている。18年9月、「中国アフリカ協力フォーラム」が北京で開かれ、53カ国が代表を派遣し、うち30近い国が首脳級を送り込んだという。しかし、ラマポーザ氏は挨拶の中で…。

* 「『技術移転はアフリカのビジネスの持続的発展につながる』。南アフリカのラマポーザ大統領は開幕式で、中国に期待しつつ、新たな形での貢献を求めた。習氏が発表した巨額援助だが、その規模は3年前のフォーラムで表明した額と同じだった。この間、中国もアフリカも高成長を続けたにもかかわらず、援助額の上積みはなかった」(2018年9月4日付)。

* 2019年5月、南アフリカの総選挙が行われ、ラマポーザ氏が率いる与党アフリカ民族会議(ANC)は得票率57.50%で勝利。過半数の議席を得て大統領も再選されることに。以下、記事からの引用。

「ANCは国民的人気を誇る故ネルソン・マンデラ氏が率いた党で、1994年の同国の民主化以降、政権を握り続けている。ただ、ズマ前大統領時代に汚職や詐欺疑惑が相次ぎ、経済も低迷。世論調査では一時、ANCに投票すると答えた人の割合が47%にまで減少。総選挙での過半数割れが現実味を帯びたため、昨年2月、ズマ氏は辞任に追い込まれた。後任のラマポーザ氏は、マンデラ氏の元側近で、実業家としても知られる。付加価値税(消費税)を25年ぶりに引き上げて緊縮財政を実施。汚職の取り締まりも進めるなど、産業界からの支持を集めた」(2019年5月11日付)

* この間、日本は経済援助よりも、民間投資の促進に力をいれた。日産のピックアップトラック組み立て工場の進出など。

* コロナ禍では、アフリカの感染者の3分の1程度が南アフリカで判明。医療崩壊の状況も生じていた。

* 今回の暴動に関する記事の中に、次のような指摘も。

「暴動や略奪が拡大した背景には、新型コロナウイルス対策による外出制限などで経済が悪化し、貧困層の生活を直撃していることや、根深い格差社会への不満などがあると指摘されている」(2021年7月13日付)

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