菅首相を待つのは地獄のみ。支持率30%切りで始まる自民“菅おろし”

 

中等症者は自宅でという酷薄

高齢者の少なくとも1回の接種率が8割を超えたというのも、何の意味もない数字で、

  1. そもそも2回接種を完了しなければ効果は限られているし、
  2. 2回接種しても感染する人が増えていて、3回目の接種が必要ではないかということが世界的に問題となりつつある。
  3. 高齢者に接種が行き渡りつつあったとしても、それと、日本社会全体がコロナと戦って五輪で世界中から人々を迎え入れられる態勢を整えられたかどうかという問題とは何の関係もない。

さらに決定打となったのが、8月2日の「軽度の中等症患者は入院をさせず自宅療養させるべし」とする方針の発表である〔写真〕。

感染大爆発による医療体制逼迫が始まっている中で、菅が信頼する和泉洋人=首相補佐官と大坪寛子=厚労省審議官の“不倫コンビ”が思いついたのがこれで、重症者や酸素吸入を必要とする「中等症II」のための病床・人員・設備を増やすのではなく、それ以下の「中等症I」レベルや軽症者を病院に来させないように「自宅療養」とすることで医療逼迫を緩和するという、丸っきり本末転倒の机上の空論である。

すでに現状でも、例えば神奈川県では、8月6日現在で自宅療養者は9,786人で、その中で「40度の熱が1週間続いても入院できなかった」というケースも報告されている(8月7日付東京新聞)。きちんと診断されないまま「中等症I」とされ自宅療養となった人が、容態が急変したとしても、それを危険と判断できる人が本人を含め身近にいるはずもなく、仮に家族が気付いて相談センター等に電話しても繋がらず、仕方なく救急車を呼んでも入院先を見つけるのに何時間も何十時間も何日も費やし、途上で亡くなる人もいる。

この惨憺たる現状をどう打開できるかということが喫緊の問題であるというのに、政府が打ち出したのは、「病床を増やす」のではなく「自宅療養を増やす」とい
うアホみたいな真逆の方針でしかなかった。

待っているのは地獄コース?

そういう訳で、天国コースはすでに消えていて、これから出てくる世論調査結果はそのダメ押し的な確認にすぎない。

とすると、いろいろなことがハッキリしないままグダラグダラと進む《地面這いずり》コースに進む可能性もあるが、そのいちいちの分岐を検討するのも煩わしいので、ここでは《地獄転がり込み》コースを検討し、それと上述のすでに敗北した《天国舞い上がり》コースとの中間領域で何が起こりうるのかは、皆様の想像力の広がりに委ねることとしよう。

内閣支持率がガックリ下がって、一斉に30%ラインを切ってしまえば、ほぼ自動的に《地獄転がり込み》コース突入である。

まず第1に、コロナ禍がますます燃え盛る。7月の爆発を主導したデルタ株(インド型)、アルファ株(英国型)に加えて、WHOが懸念を表しているベータ株(南アフリカ型)、ガンマ株(ブラジル型)、ラムダ株(ペルー型)など、免疫回避型の強力な新種が五輪を通じて持ち込まれた可能性は大いにあり、さらにそれらが「変異株の見本市」である選手村で混じり合い「新たな日本型変異株が誕生してもおかしくない」(選択8月号)が、それが判明するのは今ではなくこれからである。

第2に、菅政権はそれに対処する能力を持っておらず、「飲酒を伴う外食」を仮想敵とする誤った対策を繰り返すばかりなので、急速に“進化”する変異株の攻撃を食い止めることができない。パラを有観客で行うかどうか検討すると言っているが、それどころでなく、開催できるかどうかである。

第3に、その状況で内閣支持率がますます下落すると、自民党内で「菅下ろし」が本格化し、9月に本来の予定通り総裁選を実施し、看板を掛け替えてから総選挙に臨むしかないという流れとなる。菅の、五輪・パラの熱気に乗って先に総選挙、後に総裁無投票再選という超楽観的《天国》コースは完全に消え、菅政権は終わる。

第4に、唯一の切り抜け策として官邸周辺から漏れ伝わる与太話は、この状況を逆手にとって、8月24日開会のパラ中止を決断、全国に事実上の非常事態宣言を施行し1週間の短期集中作戦でコロナ禍を鎮火に向かわせ、8月31日に一斉に期限を迎える6都府県の緊急事態宣言と13道府県の蔓延防止措置とを延長することなく一斉解除するというもの。しかし、五輪・パラと一連なりのものを途中で断念するくらいなら、最初からやらなければよかったじゃないかという当然の非難の嵐が襲いかかるに決まっているので、菅はこれを採ることはできない。

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