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軍事アナリストが岸田政権に問う「今すぐのミサイル危機」が虚言なら撤回せよ

自民党の新総裁に選出された岸田文雄氏は事実上の次期総理で、国民の命と財産を守る立場となりました。そこで、軍事アナリストの小川和久さんが、その岸田新総裁に早速「ミサイル防衛」について注文をつけています。今回のメルマガ『NEWSを疑え!』で小川さんは、「いまそこにある危機」として多額の予算を充て、「イージス・アショア」及びその代替のイージス艦建造を決めながら、イージス艦完成後に匹敵する対策が取られていない現状を問題視。米軍に協力を仰ぐのが現実的と提案し、手を打たないなら、今そこにある「ミサイルの脅威」は虚言と認め説明すべきと訴えています。

危機感がないミサイル防衛

決選投票の結果、新しい自民党総裁に岸田文雄さんが選ばれました。そこで、早速ながら日本の安全と繁栄について健全な問題意識を持っているかどうか、それがわかる問いを発したいと思います。ミサイル防衛の問題です。

防衛省が切り札になると提案したイージス・アショア(陸上配備型ミサイル防衛システム)は、測量ミス問題など防衛省の失態が続いた結果、河野太郎防衛大臣が白紙撤回し、その後はイージス・システム搭載艦などの案が宙に浮いたままになっています。

そこで問いたい。イージス・アショアにせよ、イージス・システム搭載艦などにせよ、5~10年単位の時間を要する計画です。5000億円以上の莫大な予算を必要とすることはともかく、それらが実現するまでの間のミサイル防衛をどうするのか。

イージス・アショアの提案の時も、防衛省は喫緊の課題のように提案し、自民党はまるで「いまそこにある危機」とでも言わんばかりに北朝鮮と中国の弾道ミサイルの脅威を口にしました。そうであれば、いますぐにでも手を打たなければならないのではないでしょうか。しかしながら、イージス・アショアを提案する時点でも着手しておかなければならなかったミサイル防衛の強化は、どの政治家、どの官僚の口からも出てくることはありませんでした。

そこで、専門家の一員として政治家や官僚の代わりに私から提案させてもらうのは、「友軍」の力を借りるという構想です。

日本列島を防衛する戦いで米軍と一緒に敵と対峙している自衛隊側に弾薬の不足が生じたとしましょう。「友軍」である米軍側に聞くと余裕があると言います。そのとき、米軍に弾薬を貸して欲しいと頼むのは当然ですし、自衛隊が突破されたら困る米軍の側から使うように言ってくるのは間違いありません。この考え方は、ミサイル防衛についても同じはずです。

私は米海軍が89隻備えているイージス艦のうち、ミサイル防衛能力を備えている39隻(2025年までに65隻に増強)から4隻を借り、日本側の負担で秋田県と山口県の沖に1隻ずつ配備し、2隻を予備にする案が現実的だと考えています。その2隻のイージス艦の警備は佐世保、舞鶴、大湊の地方隊から護衛艦を出して行います。

人員は艦長ら数人だけ米海軍に出してもらい、残りの乗員は米国の民間軍事会社(PMC)がイージス艦とミサイル防衛の経験者を集め、日本側の全額負担で勤務させるのです。これなら米海軍のマンパワーにしわ寄せが行くこともありません。米海軍の艦船には軍人以外のシビリアンが乗っている例は少なくありませんので、日本側の強い要望があれば実現可能だと思います。現実の戦場なら、上記のような案をさらに融通無碍に組み立て直すことも出てくるでしょう。

内閣総理大臣は国家の優先順位を常に把握し、実行していかなければなりません。安全がなければ日本国の繁栄はないことに思いをいたし、ミサイル防衛の問題からリーダーシップを見せて欲しいと思います。北朝鮮や中国の弾道ミサイルが「いまそこにある危機」でないというのなら、その旨を国民に説明し、これまでの政府を挙げての虚言を撤回してもらいたいものです。(小川和久)

image by: US Missile Defense Agency, Public domain, via Wikimedia Commons

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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