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大阪のドヤ街で、お好み焼き店が「1枚100円」の商売を続けるワケ

日雇い労働者やホームレスのための宿泊施設やシェルターなどがある大阪市西成区「あいりん地区」(通称:釜ヶ崎)には、そこで暮らす人達を支えているお店があります。今回の無料メルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』では繁盛戦略コンサルタントの佐藤きよあきさんが、西成区「釜ヶ崎」の地域の人々を思い、値上げを断じてせず、大繁盛している100円お好み焼き店の「信念」を紹介しています。

ドヤ街のおっちゃんたちを優しく包む、100円お好み焼きの香り

大阪市西成区。ドヤ街・あいりん地区と呼ばれる地域には、日雇い労働者やホームレスが、日本中から集まってきます。

野宿を余儀なくされる人のためのシェルターや簡易宿泊所があり、おっちゃんたちが日雇い仕事の斡旋を受けながら、最低限以下とも言える暮らしを何とか維持しています。

自活できる人もいれば、生活保護で生き延びている人も。ボランティア団体のサポートがなければ、生きていけない人もいます。

そんな人たちが多く住むこの地域には、彼らを支える人もたくさんいます。ボランティアの人や周辺のお店もそうです。その中の1軒が、100円でお好み焼きを提供しているお店です。自店舗の前で屋台を組み立て、そこで調理し、店内や屋台横に飲食用のテーブルを出しています。

夕方開店し、営業時間は適当。しかも不定休というアバウトなお店です。屋号もなし。開店と同時に人が集まって来て、いきなり大忙しとなります。それは、まわりをウロウロしているおっちゃんたちが、開店準備の様子を見ているから、開店即注文となるのです。

一度に20~30枚を焼くのですが、次々に売れていきます。

お好み焼き(豚肉玉子入)が100円。お好み焼き(豚肉玉子入+玉子1個追加)が150円。お好み焼き(豚肉大盛玉子入+玉子1個追加)が300円。とん平焼きが300円。

大きさとしては、チェーン店よりひとまわり小さい程度。なのに、100円です。チェーン店だと、600~800円はするでしょう。

関西で有名な「キャベツ焼き」でも、160円ほどです。キャベツ焼きとは、薄く延ばした生地に、キャベツ、玉子、天かす、紅しょうがなどをのせて焼いたもので、2つに折り曲げても薄い、おやつ感覚のお好み焼きです。豚肉が入ると、250円ほどになります。

この屋台は、たっぷりのキャベツに、豚肉や玉子が入っている上、生地には山芋も使っています。これを100円で提供するのは、かなり厳しいのではないでしょうか。

店主は値上げしない理由をこう話します。

「20円上げても利益はほとんどない。それ以上にすると、客が来ない。計算がややこしいし、面倒臭いしな」。

この言葉に人柄が出ています。恐らく200円でも300円でも、お客さまは来るはず。なのに値上げしないのは、この地域のおっちゃんたちを思ってのこと。お金のない人にも、美味しいお好み焼きを食べさせてあげたいのです。

近くの自販機でお酒を買って、100円のお好み焼きを食べる。ほんのひと時であっても、おっちゃんたちが幸せになれることを願っているのです。そんな優しさの照れ隠しで、「面倒臭い」と言っているだけなのです。

お酒を売って、儲けようともしません。商売人の欲がないのです。この地域を愛し、ここの人たちのために、安くて美味しいお好み焼きを焼き続けています。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 佐藤きよあき(繁盛戦略コンサルタント) 【発行周期】 週刊

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