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トランプとの会談で占めた味。北朝鮮がミサイル発射を繰り返すワケ

9月だけでも6発、10月19日には新型と見られるミサイル発射訓練を行った北朝鮮。なぜ金正恩総書記は、国際社会からの非難殺到が容易に想像できるこのような暴挙を続けるのでしょうか。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では著者で国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、容易に理解できる「2つの法則」でその意図を解説。さらに日本が北朝鮮に対して取るべき方策を提示しています。

相次ぐミサイル発射、北朝鮮の意図は【二つの法則】で理解できる

北朝鮮は10月19日、日本海にむけてSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)を発射しました。北朝鮮のミサイル発射がつづいています。9月だけでも、「鉄道発射式短距離弾道ミサイル」「極超音速ミサイル」など、6発のミサイルを発射しました。日本人は慣れてしまって、大騒ぎしなくなっていますが。

ところで、「北朝鮮の意図」は何なのでしょうか?今日は、北朝鮮の意図を超簡単に理解できる「2つの法則」についてお話しします。

法則1 ~ 核兵器は手放さない

法則1は、「核兵器は手放さない」です。

なぜでしょうか?

金正恩の目的は、自分自身と北朝鮮を守ることです。仮想敵ナンバー1は、もちろんアメリカ。金正恩は、「核をもっているかぎり、アメリカも手出しできない」と思っている。実際そのとおりでしょう。

アメリカが北朝鮮を攻撃した。北朝鮮は、アメリカに届くICBMをすでに獲得したと宣言しています。ひょっとしたら、ウソかもしれない。しかし、日本や韓国を核攻撃することは、確実にできるでしょう。

金正恩が、「俺は死ぬが、日韓も地獄へ道連れだ」と考えたら?

それで、日韓を核攻撃すれば、少なくとも数十万人の犠牲者がでる。どんなアメリカ大統領でも、「大量虐殺の原因」になりたくありません。

金正恩と父親の故・金正日が「かたくな」になったのは、アメリカの「ウソ」が原因です。どういうことでしょうか?

03年、アメリカは、「フセインは大量破壊兵器を保有している」とウソをつき、イラク戦争を開始しました。これに恐れおののいたリビアの独裁者カダフィは03年12月、「核兵器開発をしていた」ことを認めたのです。そして、すべての情報をオープンにし、核兵器開発をやめました。欧米は、カダフィの「告白」を高く評価し、06年には「テロ支援国家指定」を解除しています。

このままアメリカが「ウソをつかず」にいけば、金正恩の態度も違ったかもしれません。その後何が起こったのか?

2010年から2011年にかけて、中東・北アフリカで「アラブの春」を呼ばれる民主化運動が流行りました。リビアでも内戦が勃発。この時、アメリカ、イギリス、フランスなどは、「反カダフィ派」を空爆によって支援した。結局カダフィは2011年10月、反カダフィ派に捕らえられ処刑されたのです。

この時、血まみれのカダフィの映像が全世界に拡散され、衝撃を与えました。一番衝撃を受けたのは、金正日でしょう。偶然でしょうか。彼は、カダフィが殺された2か月後、つまり2011年12月に亡くなっています。死因は、心筋梗塞だとか。

カダフィは、アメリカを信じて核兵器開発を放棄した。しかし、8年後、アメリカが支援する勢力に殺された。金正恩の立場に立ってみれば、「核兵器を放棄したら、カダフィのように殺される」と考えるのは、普通でしょう。

ここから法則1、「核兵器は手放さない」が出てくるのです。

法則2 ~ でも制裁は解除してほしい

法則2は、「でも制裁は解除してほしい」です。もっというと、「でも、制裁解除、経済支援、体制保証してほしい」です。要するに、金正恩は、「核兵器は放棄しないけど、制裁を解除してほしい」のです。

これは、理解できるでしょう。

2017年、金正恩は、ものすごい勢いで、核兵器実験、ミサイル実験をしていました。それで、中国、ロシアも北朝鮮を守るのが難しくなり、国連安保理は、北に厳しい制裁を科すことを決めたのです。そのせいで、北朝鮮経済は、とても苦しい状態がつづいている。だから、金正恩は、「核兵器を放棄せず、制裁を解除してほしい」。ですが、「核兵器を放棄せず」というと、制裁解除はかなわないので、「核兵器を放棄する」とウソをついて、交渉するわけです。

北朝鮮は、アメリカを信じられない。同じように、アメリカも北朝鮮を信じることができません。北朝鮮は1994年の米中合意時、「核兵器開発の凍結」を宣言した。しかし、実際は開発をつづけていました。2005年の「6か国共同宣言」では、「すべての核兵器破棄」を約束。しかし、実際には破棄しませんでした。

それでアメリカも、なかなか金正恩を信じることができない。そして、「信じることができない」のは正解でしょう。

「2つの法則」から見る、相次ぐミサイル発射

2つの法則を押さえた上で、相次ぐミサイル発射実験を考えてみましょう。

2017年、北朝鮮は、核兵器実験、ミサイル実験をものすごい勢いで行っていました。結果、トランプが「直接交渉」に乗り出してきた。2018年6月、シンガポールで、トランプ―金正恩会談が行われました。

だから、今回も相次ぐミサイル発射実験によって脅威を与えることで、アメリカとの交渉を開始したいのでしょう。

北朝鮮の目的は、「核兵器を保有しつづけたまま、制裁解除、経済支援、体制保証を勝ち取ること」です。

日本は、どうするべきか?

日本は、慣れてしまったこと、選挙で忙しいなどの理由で、北のミサイル発射をほとんどスルーしています。

選挙後は、ミサイル発射があるたびに大騒ぎするべきです。そして、「敵基地攻撃能力」を獲得するべきです。

現状、日本は北からミサイルが飛んできたら、ミサイル防衛システムで撃ち落とす方針。しかし、現実問題、全てのミサイルを撃ち落とすことは不可能でしょう。

そして北朝鮮は、「日本にミサイルを何発撃っても反撃されない」と確信している。だから日本は、安心して攻撃することができる「サンドバッグ国家」です。

これでは困るので、ミサイル発射のたびに大騒ぎする。

「このままでは我が国の安全は守れない。やむを得ないので、敵基地攻撃能力獲得を目指します」と宣言し、実際に取り組むべきでしょう。

image by: 朝鮮労働党機関紙『労働新聞』公式サイト

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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