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ホンマでっか池田教授が暴く「人為的地球温暖化」を撤回できない訳

連日報道されるCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)では、温室効果ガス削減への取り組みなどが議論されていますが、そもそも本当に人為的な要因で地球の気温が上昇しているのでしょうか。人為的地球温暖化論者により「2020年までにこうなる」とされた予測は、そのほとんどが外れていて、新たに語られる2050年の予測も正しいと言える根拠はないと主張するのは、CX系「ホンマでっか!?TV」でもおなじみの池田清彦教授です。今回のメルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』では、改めて科学で用いられる3つの実証方法を解説しながら、人為的温暖化の正体を暴きます。

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実証性を捨てた科学の行方

科学は実証を旨とする。これはまともな人ならば、誰でも知っているだろう。しかし、改めて実証とは何かと問われれば、これは結構面倒だ。例えば、水素と酸素を混ぜれば水になる、ことを実証するには、実際に実験をしてみればよい。この実験は何度やっても、再現可能なので、この場合は、実証は再現可能性と同義である。

それでは、水は温度をかければ沸騰する、という言明はどうだろう。確かに我々の日常的な経験では、この現象は再現可能で、例外はないように見える。しかし、深海の海底火山から熱水が噴出している場所(熱水噴出孔)では、水は100℃を遥かに超えても沸騰しない。水圧が高くて沸騰できないのだ。従って、水が高温になれば沸騰するという現象は、ある条件下でしか再現可能ではない。例えば、1気圧の下では沸騰するという現象は再現可能である。

ある初期条件の下で、何らかの操作をして結果が出る。研究論文には必ず、どういった初期条件の下で、こういう操作をしたら、こういった結果が出た、ということが書いてある。他の研究者が、同じプロセスを踏んで追試をして、同じ結果が出たら、最初の実験の正しさは、さしあたって実証されたことになる。

他の研究者が何度か追試を行っても首尾よい結果が出なかった場合は、最初の実験は錯誤かインチキか、あるいは、追試実験の条件や手順が、オリジナルな実験とは微妙に違っていたかのどちらかである。一時、世間を騒がせたSTAP細胞は、何人もの研究者が追試を行っても上手くいかず、遂には、本人が追試を行ってもうまくいかなかったのだから、STAP細胞は存在しなかったと考えざるを得ない。

科学は情緒とも多数決とも無関係なので、うら若きリケジョが涙ながらにSTAP細胞はあります、と叫んでも、同情した国民の多くがSTAP細胞の存在を信じても、実証されたことにはならないのである。

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ところで、時間が後ろに戻らない現実世界では、初期条件を完全に同一にして、実験を行うことは実は不可能である。限定的な条件下で、ほぼ初期条件を同一にできるだけだ。人間が操作できないマクロな系では、そもそも実験を行うことができない。それでは、マクロな系に関しては実証は不可能なのか。そんなことはない。この場合は、再現可能性の代わりに予測可能性を持ち出せばよい。

例えば、近未来の太陽系の惑星の位置関係は予測することができる。100年後でも1000年後でも、この予測は間違いなく当たるだろう。従って、近未来の太陽系の位置関係を観測すれば、この予測の基になったニュートン力学の正しさは、さしあたって実証されたという事になる。

なんで、わざわざ、「さしあたって」という限定語を付けたかというと、どんな理論も、その正しさは限定的なもので、完全に正しい理論などというものは存在しないからである(この辺りのややこしい話に興味がある人は、『構造主義科学論の冒険』あるいは、『生物にとって時間とは何か』を参照されたい)。

太陽系内の惑星の位置関係だって、近未来はともかく、10億年後はどうなっているか分からない。太陽の質量は徐々に減衰するので、ニュートン力学に基づく予測は何十億年という未来までは通用しないからだ。

ところで、近未来でさえ予測不能なのにもかかわらず、世間に跋扈している理論もある。言わずと知れた人為的地球温暖化論である。人為的地球温暖化が政治的なアイテムになった20世紀の終わりから21世紀の初頭にかけて、2020年までに地球温暖化で甚大な影響が出る、という予測が雨後の筍のように現れたが、ほとんどすべて外れだった。いくつか列挙すると、

(1)1987年に、人為的温暖化論者の米国NASAのハンセンが、2020年までに地球の平均気温は3℃上昇すると述べたが、実際の上昇は0.5℃だった。
(2)21世紀の初めに、キリマンジャロの雪は2020年までには消滅する、という予測が、アル・ゴアをはじめ何人もの人によってなされたが、今に至るまで雪は消滅していない。
(3)2009年に、米国地質調査所のファグレが、モンタナ州のグレイシャー国立公園の氷河は2020年までに消滅すると予測したが、2020年になっても氷河は健全だった。
(4)2000年、イギリスのイースト・アングリア大学の気候研究ユニットの科学者ヴァイナーが、2020年には英国では雪は降らなくなるだろう、と予測したが、雪は今でもよく降っている。

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人為的温暖化論に基づいて、過去になされた気候変動の予測はほぼ全部外れたのである。気候変動は地球規模の現象であるため、再現実験は不可能で、予測でしかその正しさを実証する術はないが、予測がことごとく外れたという事は、この理論は間違っていると考える他はない。

それでも、この理論が正しくないという事になると、メガソーラーや電気自動車やその他もろもろの人為的地球温暖化を阻止すると称する商売の正当性が無くなって、それで儲けている企業が困るので、過去の予測の大外れについては頬かむりをして、このままCO2を削減しないと、2050年には地球は大変なことになると言って、恐怖を煽っているのである。

ところで、再現可能性とも、予測可能性とも少しく異なる第三の実証の方法は比較である。ある薬が効くことを実証するのは、通常は対照群との比較実験による。例えば、降圧剤の効果を実証するには、かなりたくさんの高血圧の人を集めて、当該の降圧剤を処方するグループとプラシーボ(偽薬)を処方するグループに分ける。次に、治験者にも投薬する医療関係者にも、治験をする薬かプラシーボかを知らせずに、降圧剤の効果があったかどうかの統計的な検定をする。

降圧剤を飲んで、血圧が下がる人もいれば、下がらない人もいる。プラシーボを飲んでも下がる人もいるし、下がらない人もいる。同じ高血圧といっても、個々人ごとに体の状態が違うので、実際に効くかどうかは飲んでみなければ分からないし、飲むタイミングによっても効いたり効かなかったりする。

しかし、沢山の人を対象にすれば、確率的にはどのくらい効くかはわかる。例えば投与群の30%の人の血圧が下がり、非投与群では2%の人だけしか、血圧が下がらなかったとすれば、この薬は多少は効くことが実証できたことになる。但し、貴方に効くかどうかは分からない。効いた人と効かなかった人はどこかに違いがあることは間違いないが、現代医学にはその違いまでは分からない。付言すれば、降圧剤で血圧が下がったからといって、降圧剤を飲まなかったときに比べて、長生きできるかどうかも分からない。

(『池田清彦のやせ我慢日記』2021年11月12日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください)

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image by: Shutterstock.com

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