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壁を破るのは「バカ」の力。TV番組「博士ちゃん」に学ぶビジネスのヒント

テレビ朝日のバラエティ「サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん」には、1つのことに非常に詳しい子供たちが登場し、自分が好きなものに関する知識を教えてくれます。そんな「〇〇博士ちゃん」と呼ばれるような子供たちも、そのまま大人になると「〇〇バカ」と呼ばれてしまうことがあるのが日本の現実。しかしそんな言葉は気にせず突き進んだほうが面白いことになると考えるのは、メルマガ『j-fashion journal』著者でファッションコンサルの坂口昌章さん。例えば魚や野菜の「博士ちゃん」なら、魚や野菜にこだわったブランドができるのではと可能性を考察。“バカ”が突っ走ることで世の中を動かしビジネスが生まれると持論を展開しています。

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壁をぶち破るのはバカボンのパパなのだ

1.バカボンのパパは行動する

子供は好きなことをすると、親から褒められる。本を読むのが好き。絵を描くのが好き。自動車の車種を覚えるのが好き。日本では、親はそんな子供達を褒めることが多い。

しかし、年齢が上がるにつれ、その評価は変ってくる。好きなことをするのもいいけど、勉強することはもっと大切だと言われる。更に、大人になると、本を読んだり、絵を描くのは「遊び」と言われるようになる。「いつまで遊んでいるんだ。さっさと仕事をしろ」と言われるのだ。

大人は生活費を稼がなくてはいけないのだから、お金にならないことをするのは「バカ」な行為とされる。それでも、好きなことが芸術性が高い行為だったり、世間から尊敬される行為ならば許される。お金にならなくても、芸術家や聖人と言われるような人は、世間から名誉が与えられる。

ある意味、大人は金と名誉のために行動するものであり、金にも名誉にもならないことをするのはバカなのだ。赤塚不二夫の「天才バカボン」の実質的な主人公であるバカボンのパパは、突然、何かを始める。というか、常に何か面白いことを探していて、それを見つけると、即行動に移す。

例えば、近所の子供が「海は楽しかったね」と言っているのを聞くと、「今日は海に行くのだ」と宣言して、全ての仕事を放り出し、誰かを無理やり誘って海に向かうのである。その結果、様々な事件を起こし、皆に迷惑をかけても、最後に「これでいいのだ」と言って完結するのである。

2.バカボンのパパのような友人がいた

多くの人は、「バカボンのパパみたいな人は実在するはずがない」と思うだろう。しかし、私の友人のTはバカボンのパパのような男だった。お金とか名誉に関係なく、面白ければ行動に移す。

例えば、昔、神楽坂のギャラリーで友人と写真展を開いたことがあった。別に写真展をするために写真を撮ったのではなく、海外出張でロケハンのように写真を撮ってきたのだが、ギャラリーの主人が「面白いから、写真展をやったら」と言うので、急遽、写真展を開くことにしたのだ。

その話をTにすると、「オープニングに暗黒舞踏のOさんを呼ぼうよ。その向かいの空き地で突然暗黒舞踏が始まったら面白いでしょ」と言う。こちらも、「面白いならいいか」ということになり、オープニングの日に突然白塗りの舞踏家が神楽坂の商店街に出現するという事件が起きたのである。その後、もちろん、Oさんを交えて、打ち上げの大宴会を行ったのは言うまでもない。

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その後も、居酒屋で酒を飲んでは、「単に酒を飲んでも面白くないからこんなことをしよう」という話は続き、何度か打ち上げのための仕事をでっち上げた。

Tは、自分の本業でも面白いことを続けた。犬のための音楽というコンセプトで、犬のしつけのための音楽CDを作り、犬に聞かせるライブを行ったりした。モーツァルトの音楽を聞くと頭が良くなるという話があると、高速モーツァルトというCDを作った。幸いにもこれらの企画は当たったらしい。しかし、その何倍もの当たらない企画があるのは言うまでもない。

Tは「売れるものはつまらない」と思っている節があり、「つまらないもの、くだらないものが面白い」という感性を持っていた。それでも、「この企画、くだらないでしょ」と言いながらニッコリ笑う顔を見ると、あまりの馬鹿馬鹿しさについ笑ってしまい、「もう売れなくてもいいからやろう」という気になってしまうのである。「これでいいのだ」

3.「博士ちゃん」のブランド

世の中の変化の先頭を走っているのはバカだ。バカが走って流れを作り、流れができれば、ビジネスが発生する。儲かることは、後追いであることが多い。コロナで世界が止まって、空白が生れてしまった。先頭を走る奴が見えないから、後追いができない。先に誰もいない状態で走るのは怖いのだ。昨年実績がないからと言って、一昨年実績に準じていればいいというわけではない。最早、時代は変ってしまったのだ。

お金のために働く人は、どうすればお金が稼げるかが分からないと身動きが取れない。じっとしているだけだ。そして、周囲を見ている。誰かが儲ける道を見つけたら、追いかけようと身構えている。それでもバカは走れる。バカは状況を見ていない。自分の内面を見ているだけだ。そこに引っかかったら、目が「キラリン」と光り、「ワシはこれをやるのだ」と宣言するのである。

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例えば、「博士ちゃん」というテレビ番組がある。博士ちゃんは子供なので、天才扱いされるが、あのまま大人になったら変人扱いされるだろう。そしてバカと呼ばれる。子供の頃は「魚博士ちゃん」でも、大人になったら「魚バカ」になる。

でも、魚バカなら、迷うことはない。魚博士ちゃんにファッションブランドの企画を依頼すれば、魚の柄のプリントやジャカード生地を作るだろう。そして、魚の柄の刺繍をする。魚のフォルムを生かした流線型のドレスを作るかもしれない。魚の色をテーマにした商品企画をするかもしれない。魚の美しさ、楽しさ、美味しさを世界に伝えたいと考えているのだから、迷うはずがない。これは絶対に面白い。

同様に「野菜博士ちゃん」は野菜をテーマにしたブランドを作るだろう。野菜のフォルムを生かしたアクセサリーはヴィーガンにもウケルかもしれない。野菜から取った染料で染めたストールも面白いし、野菜ジュースのカフェを併設したグッズのショップはどうだろう。

魚のブランドと野菜のブランドができれば、食料品売場に隣接した売場で展開してもいいだろう。同様に、化石の博士ちゃん、恐竜の博士ちゃん、お城の博士らゃんなら、各自独特な商品企画をするに違いない。売れるか売れないか。そんなの関係ない。欲しいから作る。それが基本だ。

■編集後記「締めの都々逸」

「馬鹿馬鹿しいこと くだらないこと 本気でやるなら それでいいのだ」

今回は、いろいろと著作権に引っかかりそうな原稿になってしまいました。それと、友人のことを書きながら、自分も相当にバカなのだと再認識した次第です。

まず、結果を考えて、そこから逆算するのがマーケティングの基本ですが、それだと予定調和になってしまうんですね。予定調和こそビジネスの神髄であると考える人も多いと思うけど、バカの神髄としてはつまらない。

僕自身もTも、安い酒場で安い酒を飲むのが好きでした。二人とも、「長生きなんてしたくない」と言い合っていたんですが、Tが一足先に死んでしまいました。バカヤロウです。バカが必要な時代に、バカが死んでどうすんだよ。ということでバカについて考えてみました。(坂口昌章)

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image by: Shutterstock.com

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