遺骨の混じる土で基地建設の異常。日本のメディアがほぼ報じぬ「重要な選挙」

 

…そんなわけで、今週、あたしが取り上げるのは、沖縄のメディア以外はほとんど報じていない、来年1月に行なわれる沖縄の「名護市長選」です。名護市の辺野古では、カネに目が眩んだ拝金主義者たちが、第2次世界大戦末期の沖縄の地上戦で犠牲になった数えきれない人たちの遺骨が混じる土を、米軍の海上基地を造るための埋め立てとして、かけがえのない「ちゅら海」に投入し続けています。そして、それを許している1人が、現在の名護市長、渡具知武豊(とぐち たけとよ)なのです。

競馬が好きなあたし的には、この「武豊」という名前、どうしても「たけ ゆたか」と読みたくなってしまうのですが、それはそれとして、この市長は、保守派として名護市議会議員を5期つとめた後、当時の首相だった安倍晋三の肝いりで、2018年2月4日に行われた名護市長選に出馬し、当選して市長となった人物です。

ここ10年、名護市の市長は、辺野古への米軍基地移設の「推進派(容認派)」と「反対派」が交互につとめて来ました。2009年までつとめていた推進派の島袋吉和市長は、2009年の政権交代を追い風とした反対派の稲嶺進候補に、2010年1月24日の市長選で敗れ去りました。当時の沖縄県知事は、反対派から容認派へ手のひら返しをして自民党政権の飼犬に成り果てた仲井真弘多(なかいま ひろかず)だったので、これでようやく「県も市も基地推進」という最悪の状態から「県は推進でも市は反対」という第一歩が踏み出せたのです。

稲嶺進市長は、2014年1月19日の市長選でも自民党推薦の推進派候補を大差で破り、再選を果たしました。そして、この年の12月10日の沖縄県知事選では、反対派の翁長雄志(おなが たけし)候補が現職の仲井真弘多を破り、ついに「県も市も基地反対」という沖縄の本来の民意が示されたのです。この明確な「民意」によって、それまで自民党政権が強行して来た工事にブレーキが掛かったわけですが、何が何でも自分の思い通りに行かないと気が済まない「わがままお坊ちゃま」の安倍晋三が、この状況を放置しておくはずはありません。

こうした流れから、当時の安倍政権は、2018年2月4日の名護市長選に保守派の渡具知武豊市議を出馬させ、自民、公明、維新というお約束のトリプル推薦をしたのです。そして、現職の稲嶺進市長が、2010年、2014年と同じく明確に「基地反対」を掲げたのに対して、渡具知武豊は地元の最重要課題である基地問題について賛成とも反対とも言わずに「国と県の裁判を見守る」と繰り返すのみ。つまり「自分に不利な基地問題は争点にしない」という卑怯な作戦に出たのです。

もちろん、これは自民党が立てた作戦です。その証拠に、選挙中は二階俊博幹事長、菅義偉官房長官、小泉進次郎などの自民党政権幹部が次々と応援に駆けつけ、渡具知武豊と同じく「経済振興」という名の莫大なバラ撒きを連呼したのです。テレビでしか見たことがない政権中枢の大物議員が次々とやって来て「渡具知が市長になれば、これだけ補助金が名護市に下りる。渡具知が市長になれば、これだけ市民の生活の向上する」と連呼されたら、基地反対派の市民の中にも、心が動いてしまった人もいたでしょう。

また、これは真偽不明な情報ですが、相当な実弾(現金)が有権者にバラ撒かれたという証言も複数あります。そして、その結果、渡具知武豊候補が2万389票、稲嶺進市長が1万6,931票、3,000票以上の差をつけて渡具知候補が勝ち、8年ぶりに「隠れ推進派」が新市長の座についたのです。当選後、渡具知市長自身も「私を支持した人の中にも基地反対派が何%かいたと思います」と述べました。

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