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海外ビジネスで失敗ばかりの日本企業が中国に頼らなくても成功する方法

より広い市場を求める企業が希望に燃え展開するも、思ったとおりことが進まず結局撤退に追い込まれるという例が多々聞かれる海外ビジネス。決して軽くはない痛手を負うことになる海外展開の失敗は、どのような原因で起きてしまうのでしょうか。今回のメルマガ『j-fashion journal』ではファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんが、多くの企業の失敗に共通する敗因を列挙するとともに、海外ビジネスに成功する「もっとも良い方法」を考察。さらに今後有望と思われるビジネス展開先としてベトナムを挙げ、その理由を具体的に記しています。

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典型的な海外ビジネスの失敗例

日本企業が海外ビジネスで成功できないのには理由がある。

第一に、多くの企業が日本国内のビジネスだけしか経験がないこと。そのため、全ての意思決定は国内ビジネスの常識で判断してしまう。よく言われるが、日本の常識は世界の非常識である。

第二に、経営戦略全体と海外ビジネスの意義、あるいは国内事業との連携等について考えられていないこと。

多くは、既存のビジネスと切り離され、国内事業の担当者の協力が得られず、社内で孤立してしまう。

社長が個人的なビジネスとして行うことも多く、会社の組織のバックアップが得られず赤字を垂れ流すケースも見られる。

第三に、十分な事前調査を行わないこと。社長や役員が物見遊山のような視察を行い、進出を決めるケースもある。

本来ならば、現地の同業種の業界構造や商慣習、競合となる現地企業、流通構造、消費者意識やライフスタイル等を調査した後、テストマーケティング等を繰り返してから、本格的な進出を行うべきである。しかし、アジア諸国への進出の場合、相手を見下して調査を行わないことも多い

第四に、現地の状況を全く理解せず、言語も通じない日本人社員を現地の責任者として派遣すること。現地に親類も友人もいない環境の中で、ビジネスを始めることは無謀である。

第五に、自前主義で現地スタッフを信用しないこと。現地スタッフとコミュニケーションが取れないので、信頼することもできない。しかも、ビジネスの法律や契約に関する知識も少ないので、ルールや契約で社員をコントロールすることもできない。

しかし、課題が理解できれば、それを解決すればいい。怖いから国内に留まるという考え方だけでは、ビジネスチャンスを逃すことになる。

信頼できる人材が必要

海外ビジネスで成功する最も良い方法は、現地の人と結婚して、信頼できる配偶者や親類と一緒にビジネスを行うことだ。日本国内を見ていても、日本人と結婚して、日本に根を張って、ビジネスを行っている人は安定している。

それができないなら、信頼できる人とパートナーを組むことだ。しかし、これが非常に難しい。まず、信頼できるからどうかが判断できないし、互いに信頼できるようになるには、時間が掛かる。

あるアパレル専門店企業は、日本に留学し卒業した中国人を正社員として雇用し、数年かけて信頼関係を築き、そのスタッフを中国に派遣した。海外ビジネスに慣れた日本人を中心にその中国人がチームを組んで、業績を上げることができたのである。

私も、まず日本の本社がビジネス展開を計画している国の人材を採用するべきだと思う。その人材を育成する中で、その国の人の考え方も理解できるし、逆に日本のビジネスを理解してもらうこともできる。

その場合、どのように日本の本社に現地の人材を雇用することができるのか。また、どうすれば、事前にビジネスの可能性を調査できるのか。そして、現地法人を設立する場合にも、どうすれば「核」となる人材を採用できるのか。日本語が使えて、日本で生活した経験があり、必要な教育を受けた人材。言うのは簡単だが、実際に募集して、採用するのは大変な作業である。

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「ベトナムビジネス、どうでしょう?」ベトナム市場参入支援

今回、私が「ベトナムビジネス、どうでしょう?」と皆さんに問いかけているのは、人材獲得とビジネス展開までの道筋が見えてきたからである。

まず、ベトナム人技能実習生で帰国した人材をネットワークしている機関が日本にあること。そこには、ベトナムビジネスのベテランである日本人と、ベトナム人のスタッフが常駐している。

そして、ベトナムにも事務所があり、日本語の話せる現地スタッフが常駐している。通信環境も良好で、いつでもオンラインで打ち合わせが可能だ。

例えば、ベトナム語のWEBを立ち上げることも、ベトナム語でSNSを発信することも、ベトナムでネット調査、ネットアンケートを行うことも可能である。

つまり、本格的なビジネスを始める前に、現地で調査、テストマーケティングを行うことが可能なのだ。

これまで、現地の反応を見るには、現地の展示会に出展するしかなかった。しかし、展示会出展と出張経費を考えると、かなりの出費になる。しかも、展示会の事前にプロモーションをかけたり、展示会後にフォローの商談を行うことができない。何年展示会に出展したとしても、具体的なビジネスにつながる事例は決して多くない。

それならば、現地で販売先候補をリストアップして、そこに連絡を取り、サンプルを見せたり、実際に日本の担当者が、販売先と通訳をZOOMでつなぎ、商談した方が早いではないか。

その上で、可能性があるようなら、日本の本社でもベトナム人をWEB面接で採用し、現地スタッフの採用や教育の準備を進めることもできる。また、現地に在庫を保管してもらい、それをネット販売することもできるかもしれない。

ベトナム人技能者、ベトナム生産支援

生産をベトナムで行いたい、あるいは、工場等で働く人材をベトナムから獲得したい場合も、日越をつなぐスキームが活用できる。

例えば、人手不足でベトナム人の実習生あるいは、特定技能者を採用したい場合も、実際に現地に出張することなく、WEB面接を行うことが可能である。

また、ベトナムで工場を探したい場合は、まず、ベトナムでネット調査を行い、現地語でメールを出し、サンプル依頼等を行うことも可能だろう。

もちろん、それで簡単に工場が見つかるという意味ではないし、ビジネスが成功するという意味ではない。あくまで工場を探すまでのプロセスの簡略化という話だ。

ベトナムに独資の法人や工場を設立したいという場合は、事前にベトナム語のWEBを立ち上げ、日本の会社紹介を行い、SNSで情報発信をして、その運営や翻訳を委託することも可能である。

また、法律的な問題等についても、日本側とベトナム側の機関で話し合いながら、最適な方法を探すことができるだろう。

また、現地社員のマネジメント、採用に関する人材獲得もWEBを通じて行える。日本本社に在籍できる日本語が話せる優秀なベトナム人を採用することも可能だ。

つまり、あらゆる場面で柔軟かつ個別に対応することが可能なのだ。

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ベトナムビジネス研究会

こうしたスキームを含めて、ベトナムビジネスを理解するための「ベトナムビジネス研究会」を立ち上げたいと考えている。

研究会の内容は以下の通り。

第一に、「ベトナム・ビジネス講座」。講師はできれば、ベトナム人の経営者にお願いしたいと考えている。「郷に入らば郷に従え」というように、やはり現地の人に聞くのが一番である。これまでは講師を招待するのが大変だったが、今はZOOMがある。ベトナム人経営者の生の声を聞くのが最も勉強になるはずだ。

第二は「ベトナム・ライフスタイル講座」。これは、若いベトナム人に講師になってもらい、ベトナムの仕事、結婚、教育、住宅、就職、恋愛、ファッション、グルメ、エンタメ等についてネットで調査してもらって、その解説をしてもらう。

第三は、「ベトナムビジネス個別相談」である。これは、ベトナムビジネスに精通した日本人と日本語が話せるベトナム人スタッフに参加してもらって、個別かつ具体的な相談に乗るというものである。

個別相談は基本的に公開できないが、「ビジネス講座」「ライフスタイル講座」については、オープン参加できるようにしたい。

こんなメニューが用意されていれば、ベトナムビジネスの可能性が見えてくるのではないか。

編集後記「締めの都々逸」

「人の道こそ 商いの道 互いに信じた 道をゆく」

私は、かつて東レ経営研究所の中で、「中国ビジネス研究会」を主宰していました。その後、中国企業へのコンサルティング等も行いましたが、米中対立、人権問題等があり、最早中国とはビジネスができない状況になっています。

それなら国内だけに専念してみるか、と思っていたところ、突然、見も知らぬベトナム人の方からメールが届きました。何かうさん臭いのですが、悪い人ではないと感じて、ZOOMミーティングを行いました。

その結果が今回の原稿です。実は、今日、話聞いて、そのまま原稿を書きました。ということで、まだ名前は伏せてありますが、ちょっとオモシロそうだな、と思っています。

ベトナムは行きたいと思っていたけど、まだ入ったことがないんですね。どうなるかは分かりませんが、そういう時代なのでしょう。時代に呼ばれている気がしています。(坂口昌章)

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image by: DrimaFilm / Shutterstock.com

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