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コロナ感染者急増もNYの人出は減らず。在米日本人社長が明かすNYの今

日本のメディアでは5日、アメリカで新型コロナウイルスの感染者が1日で100万人を超えたと大きく報道されましたが、元日のNYタイムズスクエアのカウントダウンは中止にならなかったようです。そして、昨年ほどの悲壮感もないというニューヨークの街。そのちぐはぐな現状の原因について、メルマガ『NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』著者でニューヨークの邦字紙『NEW YORK ビズ!』CEOの高橋克明さんが現地から解説しています。

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最新ニューヨーク事情 「2022年、NY最新コロナ事情」

冒頭、呑気にタイムズスクエアのカウントダウンの様子などをレポートしましたが、日本の方は「そんなことより、実際のコロナ状況はどうなっているの?」と思われている方も多いと思います。

事実、日本でのこの街に関する報道はコロナ一色だと聞きます。SNSでつながっている方々から「大丈夫ですか?ニュースで見たけど、とんでもない状況になってるみたいですね」といった個別のメッセージが毎日のように届いてきます。

その割には、タイムズスクエアの数万人の人混みの中で、笑顔で年越ししてる動画を配信している。

実際のところどうなの?そんな声をよく聞きます。

どっちが正しいの?やっぱりメディアは嘘をついてるの?

それともタイムズスクエアに集まった群衆が想像力を欠如したバカたちなの?と。

結論から言うと、すべて正しいし、すべて正しくないといったところです。

まず、実際のコロナ感染者数は確かに増えています。今月4日、州内のコロナによる入院患者数が、2020年5月以来、初めて1万人を超えました。そのうちの99%が、例のオミクロン株の感染者であるとも発表されています。そう、完全に増えています。それも過去最大ほどに。

ではなぜ、タイムズスクエアのカウントダウンは中止にならず、街は人で溢れかえり、昨年ほどの「悲壮感」がこの街にはないのか。

おそらく「悲壮感」より「疲労感」。もうコロナで色々我慢すること自体に疲れてきているのではないか、と(筆者の個人的な見解ですが)そう思います。

もともと刹那主義のニューヨーカー、感染したら、したで、もうその時考えよう、と思っているのかもしれません。

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先々週、友人である台湾人のジャックから誕生日パーティーのお誘いをいただいた際、彼はこう言いました。

「悩んだけど、大々的にパーティー開くことにしたよ。毎年やってた中、去年は自粛したしね。わかってるよ、言うなよ、この時期に自宅で人をいっぱい呼んでパーティーなんて非常識だって言いたいんだろう。でも、もう、これ以上、コロナでやりたいこと我慢するのは余計、ストレスなんだ。もう2年近く、いろいろと規制され、我慢してきたしね」

電話口で僕は、でもクラスター起こしたらどうするんだよ、と笑いながらも、いちおう警告しました。

「もちろん(招待客は)ワクチンパスポート持ってる人間に限るよ。それでもクラスターを起こさないとは限らない。わかってる。でも、もう感染したらその時はその時だよ。うちは子供いないから、それならそれで仕方ないと思ってる」

誕生日パーティーって、そんな決死の覚悟でやるもんなのか?そう笑いかけて、でも言うのをやめました。彼と彼の奥さんにとっては、いろいろと考えた上での決断だったのだと思います。そしてパーティーに来る人間もすべて覚悟の上の自己判断として当日来るのだとか。自宅にお子さんのいる友人の多くは、やはり断ったそうです。僕のように。

「それに、なにより…、死ぬことはないだろ」。彼は最後にこう言いました。

その言葉が、今のニューヨーカーの本音を一番表しているのかもしれません。

今年に入り(3日現在)新たに99人の死亡が報告されました。これらの方々が、いつ感染したかは、明確に知るデータはありません。かなり強引で勝手な計算をするなら、新規感染者、1万411人に対して、死亡者99人。つまり、100人にひとり。そのひとりは、既に持病があったり、高齢者の割合が多い。結局、健康な成人であれば、もし万が一感染しても、死に至る確率は相当、低い…。そう思っている人がほとんどなのではないでしょうか。

もちろん、ただの数字上のデータなので「感染しても死にゃしない」という理屈には何の根拠もありません。コロナ疲れの脳が、もう、自然とそう思い込みたいだけでしかない。

仮りに死亡せずとも、後遺症もが残る可能性もあるし、なにより、他の誰かに感染させてしまうリスクはどこまでいっても残ります。相手はウイルスなのだから。

そして、実際に亡くなられた方も多くいます。ニューヨーク州の死者数の累計は3日の時点で、4万8,798人。コロナがなければ、この東京ドームいっぱい分の数字は、亡くならずに済んだ人たちです。

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日本から見ると、今のニューヨーカーの様子は、確かによくわからない。ニュース映像では街に人が溢れ、ニュース原稿では、感染者数の記録が更新されていく。実態はつかめない。

それは実際の感染者数と、コロナ禍が始まって2年という月日からくる人間に及ぼす疲れ、ストレス、その影響が複雑に絡み合っているから。端から見る人を混乱させるように設計されているかのような運命の流れとも言えなくはないのかもしれません。

なので、この街の現状を正確に説明しするのは難しい。

それでも、ニューヨークの現状を、言葉で説明するのであれば…、

感染者数は増えています。でも、ワクチンの普及率も増えています。感染しても死亡率は高くない。何をもって、高くないと言えるのかは誰もわからない。死亡することも当然ある。でも、みんな自粛に疲れてきている。できうる限り予防はしよう。その上で街には繰り出そう。…そんな感じではないでしょうか。

4日、バイデン大統領はスピーチで、新型コロナウイルス対策について「数週間は厳しい状況が続くだろう」と発表しました。なので、ワクチン、みんな打つんだぞ、と。

アメリカ国民のワクチン接種者は全体の6割ほどと言います。

ワクチンを拒否している人たちの中から感染者が増え、それにより死亡する人がいるのも、また事実。決して、ワクチン推奨派ではありません。ただ、簡単に「ワクチン、はんたーい!」と声高々に叫ぶことができないシーンがあることも、また頭に入れておかなければならないのかもしれません。

やっぱり、混沌とした時代の真っ只中なのだ。

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image by: Shutterstock.com

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全米発刊邦字紙「NEWYORK BIZ」CEO 兼発行人。同時にプロインタビュアーとしてハリウッドスターをはじめ1000人のインタビュー記事を世に出す。メルマガでは毎週エキサイティングなNY生活やインタビューのウラ話などほかでは記事にできないイシューを届けてくれる。初の著書『武器は走りながら拾え!』が2019年11月11日に発売。

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【著者】 高橋克明 【月額】 初月無料!月額586円(税込) 【発行周期】 毎週水曜日

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