田中英寿前理事長が脱税容疑で逮捕・起訴された日本大学は1月11日、ようやく再発防止策などを文部科学省に報告したと伝えられています。背任事件では被害者でもある日大側の対応の鈍さの裏に、田中前理事長が築き上げてしまった反社会的勢力との黒い関係があると指摘するのは評論家の佐高信さん。今回のメルマガ『佐高信の筆刀両断』では、2019年に出版した書籍の共著者である朝堂院大覚さんの言葉を引いて、日大と山口組の関係の深さを暴露。大手メディアがこの事実に踏み込まないことにも疑問を呈しています。
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日大に深く関わる山口組
日本大学の腐敗について、理事長の田中英寿の追放後の再建に、なぜ、歯切れが悪いのかと不思議だった。その謎を、2年前に出した朝堂院大覚と私の共著『日本を売る本当に悪いやつら』(講談社+α文庫)が解いてくれた。忘れていたのである。
その本の第10章が「日大田中理事長の黒い人脈」。“最後の黒幕”といわれる朝堂院は、田中が常務理事だったころから、バンバンやりあってきた。朝堂院によれば、瀬在良男と幸安の兄弟が総長をやっていたが、田中のがんばりで、彼らはポストにつくことができたという。
そして、田中、瀬在体制でやっていく。ところが、田中のやることが汚なくて、これは犯罪なのではないかとして、瀬在が弁護士や裁判官や検事あがりの弁護士ら5人を集めて、調査委員会をつくった。そして田中は逮捕寸前まで追い込まれる。
朝堂院の証言を引く。
「よし、これで田中を潰せると思った時に、総長選挙で瀬在派の人間と田中派の小嶋勝衛が争った。このとき瀬在派が勝てば、田中は終わっていたわけです。ところがもう必死で田中と小嶋が頑張った。ものすごいカネをまいた。それと怪文書で瀬在派は敗れた。そのときに小嶋には誰の応援があったのか。彼らが最初にお礼に行ったのは、弘道会の高山清司と司忍のところだったんですよ」
つまり、山口組の6代目組長の司と、6代目若頭の高山にお礼に行ったということである。瀬在たちは失脚し、田中が理事長になった。小嶋は総長である。
「田中は株式会社日本大学事業部をつくって、全日大の、中学、高校、大学までのすべての事業を統合して、あらゆる買い物、物品の発注は株式会社でやるとした。その株式会社を作ったのがちゃんこ鍋屋の奥さんと、アメリカンフットボール部の側近たちです」
こうした話は、テレビはもちろん、ほとんどのメディアに出て来ない。年商何千億の中堅商社並みの売り上げをその株式会社はもっていた。
この疑惑を朝堂院が問題にし、田中に質問状を出したら、何と弘道会が来た。日大に対する攻撃はつつしんでほしいという。「俺は日大に質問状を出したのに、なぜ、あんた方が来るんだ。日大から回答をもらいたいもんだ」と朝堂院が突っ張ねたら、弘道会の最高幹部のところに電話した後で、「今日のところはこれで」と引き揚げた。
しかし、翌日、朝堂院の新橋の事務所に銃弾が撃ち込まれていたのである。すなわち、日大の問題には山口組が深く関わっているということで、そこにメスを入れなければ解決できない。メディアは知ってて書かないのか、それとも、まったく知らないのか。
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