やってる感アピールに辟易。岸田首相「指針演説」にチラつく安倍氏の影

 

それでも、9項目のうちの1項目である新型コロナ対策に、施政方針演説の約4分の1の時間を割いたのですから、岸田首相が新型コロナ対策に重心を置いていることだけは伝わりました。しかし、その内容はと言えば、ワクチン推進に検査拡充、仕事はテレワークで学校はオンライン授業と、これまでと何ひとつ変わらない小手先の対策を羅列するだけで、抜本的な対策は皆無でした。

在日米軍による感染拡大の問題についても、国民の7割以上が求めている「日米地位協定の見直し」にはいっさい触れず、それどころか逆に「地位協定に基づく日米合同委員会においてしっかり議論していきます」などと、現在の不平等な地位協定を追認したのです。そもそも、不平等な地位協定に基づいた場での議論など意味がありません。この人、もしかしてバカですか?

その一方で、昨年12月の所信表明演説であれほど意欲を見せていた「GoToトラベルの早期再開」には、いっさい触れませんでした。これは、今後のオミクロン株の感染爆発を見越してのことで、野党からの批判を避けるために削除したのです。冒頭での「新型コロナによる生活困窮者スルー」と言い、この「GoToトラベルの削除」と言い、米軍には何も言えない腰抜けのくせに、野党対策だけは抜け目のない岸田首相です。

お次は岸田首相の看板政策「新しい資本主義」ですが、ここでは毎度お馴染みの「立て板に水」の名調子が炸裂しました。新自由主義的な考え方によって生じた格差や貧困の拡大など様々な弊害を「新しい資本主義」による成長と分配の好循環で是正していく、という耳タコのあれです。これを言ったら身も蓋もありませんが、そもそも「成長と分配の好循環」というのは資本主義の基本中の基本であって、ぜんぜん新しくありませんけど。

その上、国民が知りたいのは「どのような政策で成長と分配の好循環を作り出すのか」という点なのに、今回も実現可能な具体策にはまったく踏み込みませんでした。「デジタル田園都市国家構想」だ何だとイメージ優先の理想論的な看板を乱立させることで、実体のない「新しい資本主義」に肉付けをして、あたかも幻が現実であるかのように錯覚させるという、いつもの姑息な手口でした。

ちなみに、この前日16日のNHK『日曜討論』をラジコで聴いていたら、自民党の茂木敏充幹事長は「新しい資本主義」について、岸田首相とはまったく違う説明をしていました。ようするに、自民党の幹事長でさえも「新しい資本主義」がどのようなものなのか分かっていないのです。しかし、それは当然です。何しろ言い出しっぺの岸田首相自身も説明できないのですから。

岸田首相は、光ファイバーだドローンだサテライトオフィスだと、それらしい単語を並べて必死に「新しい資本主義」のイメージ作りをしていましたが、すべての内容を噛み砕けば、結局はデジタル利権とマイナンバー利権に終始した、これまで通りのアベスガ政治の延長ということなのです。

キャパの都合で、今回はここまでしか取り上げられませんが、他の項目も含めて、あたしが何よりも脱力してしまったのが「いつまでに何々を達成します」という明言が全くなかったことです。それどころか「賃上げが実現することを期待します」って、何ですか?この他人事ぶりは?

他にも「目指します」とか「取り組みを進めます」とか「働きかけていきます」とか「正面から向き合います」とかばかり。目指すだけ、取り組むだけなら、誰でもできます。安倍元首相のように、できもしない大風呂敷を次々と広げ、先送りを繰り返した挙句に丸投げ、というのも困りますが、一国の首相がここまで消極的というのも、リーダーシップという観点からはどうなのでしょうか?

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