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“お家芸”も今は昔。日本企業は電気自動車でも中国には勝てない

世界的な脱炭素の流れを受け、動力の電気化がすすむ自動車業界。しかしかつては世間を席巻していた日本の各自動車メーカーは、その趨勢に乗り遅れてしまったと言っても過言ではない状況となっています。日本のお家芸とも言われてきた自動車産業は、なぜこのような惨状に陥ってしまったのでしょうか。今回のメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』では著者の大澤先生が、中国製の電気自動車が続々日本に上陸していることを伝える香港紙の記事を紹介するとともに、日本企業が乗り遅れてしまった原因について考察・解説しています。

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日本に入ってくる中国電気自動車

日本企業の衰退が言われて久しいです。

企業の時価総額の世界ランキング、1989年は世界のトップ50のうちの実に32社が日本企業でした。今はトヨタ1社が40位付近でかろうじて残っているという状況です。

それでも自動車産業はいまだに日本の強みとなっており、トヨタ、日産、本田、マツダはそれぞれ裾野の広い下請け企業群を支えています。

しかし、世界は急速に電気自動車への舵を切りつつあります。

そして日本に中国の電気自動車が参入してきているという状況が現実に起こってきています。

香港サウスチャイナモーニングポスト紙の1月17日の記事です。

世界の多くの場所と同様、日本でもCovid-19の大流行でオンライン商取引が急増し、人々は食品から衣類、電子機器まであらゆるものを玄関先まで注文するようになった。このような売上は物流会社の二酸化炭素排出量を増加させている。

 

しかし日本は2030年までに2013年比で50%近く排出量を削減すると公約している。この目標を達成するためには国内で販売される自動車の90%をバッテリー式にする必要があるという。

 

日本はEVの巨大市場ではない(市場普及率はわずか1%)、しかし中国の自動車メーカーはチャンスを感じている。東京の物流大手SBSホールディングスは5年間で2,000台の中国製小型EVトラックを購入する契約をこのほど締結した。

 

SBSホールディングスの鎌田社長は、「日本のEVは我々のコストに見合わない。日本の自動車メーカーは値下げは無理だと言っているので、安い車を買わざるを得なかった」

 

SBSは、最終的に約1万台の商用EVバンを保有し、Eコマースの配送に使用する計画である。この小型トラックは1回の充電で約200キロメートル走行可能で、価格は約380万円(33,000米ドル)である。

 

またやはり物流の佐川急便は広西汽車集団が製造する低価格の電気ミニバン7,200台を使用する予定だ。BYD(中国の代表的な電池・自動車企業)は、すでに日本の電気バス市場の約70%を占めており、2030年までに4,000台のバスを走らせる ことを目標としている。

 

「日本の自動車メーカーが何もしなければ、中国がこの業界を支配してしまうでしょう」と物流大手SBSホールディングスの鎌田氏はコメントしている。

解説

中国では新品の電気自動車を50万円以下で買えます。その価格競争力をもって確実に日本市場に入ってきています。特に伸びている物流は短距離に需要がありますが、その部分では電気自動車が強みをもつことも彼らが強気になる要素でしょう。

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日本の自動車市場への参入を試みているのは、もちろん中国メーカーだけではありません。米国からも来ています。

中国企業だけが参入しているわけではない。米国の商用EVメーカー、セントロ・エレクトリック・グループは11月に日本での軽トラック販売の認可を取得し、アマゾンの地域配送パートナーであるアマゾンフリートや、日本最大のフラワーギフト協会である花キューピットに同社のバンを使ってもらう予定である。

 

セントロの最高経営責任者であるピーター・ワン氏は、高齢化社会を迎えた日本での宅配に明るい未来があると見ている。同社は、福島に組立工場を建設し、現地でEVを生産し、その一部を東南アジアに輸出する計画も進めている。

 

もちろん日本のトラックメーカーも反撃に出始めている。いすゞ自動車は2022年にEVトラックの量産を開始し、トヨタ自動車傘下の日野自動車は今夏早々にミニEV「デュトロZ」を販売する予定だ。ヤマトホールディングスは5月まで2台の日野自動車のEVを使い、CO2排出量をどの程度減らすことができるかを追跡調査する。

 

しかし、日本のEVトラックの価格はディーゼルトラックの約3倍と予想されており、物流会社はEVトラックの購入に苦労するかもしれない。

解説

記事では「1980年代に世界を席巻したパナソニック、ソニー、東芝、シャープのような家電は、安価な中国製に負けた。日本の電気自動車産業は、家電産業と同じような危機に直面するのではないかと心配する人もいる」とも記していますが、これがもう「心配」のレベルではないことはだれもが同意するところでしょう。

日本企業は、進むべき道が決まれば強いです。しかし今のようにどの道に進んでよいのかわからない時代は弱点を露呈します。

社内のコンセンサスがとれず、また終身雇用で簡単に人を入れ替えることもできないからです。必要とされているのは絵を模倣する能力ではなく、真っ白なキャンバスに絵を描く能力です。そういった人材をいれて、失敗を恐れずにチャレンジする環境を与えた企業に未来が生まれます。

例えばトヨタが富士山麓で建設を進める未来都市の運営会社、「ウーブンプラネット」グループはトヨタの社風、人事システムとまったく違うそうです。このプロジェクトが成功すれば今までのトヨタへの自己否定になりかねません。大変な事です。壮大な実験ですが、トヨタだからこそ今までの企業文化を変える必要性を強く理解しているのでしょう。

「企業文化を変える実験を行う」ことは多くの日本企業がしてよいことでしょう。(この記事はメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』1月23日号の一部抜粋です。この続きをお読みになりたい方はご登録ください。初月無料です)

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image by: StreetVJ / Shutterstock.com

大澤 裕この著者の記事一覧

・株式会社ピンポイント・マーケティング・ジャパン 代表取締役社長  ・情報経営イノーベーション専門職大学 客員教授 ・法政大学大学院イノーベーションマネジメント研究科 兼任講師 慶應義塾大学を卒業後、米国バンカーストラスト銀行にて日本企業の海外進出支援業務に従事。カーネギー・メロン大学でMBAを取得後、家業の建築資材会社の販売網を構築するべくアメリカに子会社を設立。2000年、ピンポイント・マーケティング・ジャパンを設立。海外のエージェントとディストリビューターを使った販路網構築・動機づけの専門家として活動を行っている。2015年「中小企業が『海外で製品を売りたい』と思ったら最初に読む本」を、2017年「海外出張/カタログ・ウェブサイト/展示会で 売れる英語」をダイヤモンド社から上梓。

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