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偽物大国の没落。他社商品を安易にコピーする日本企業の“お先真っ暗”

社会問題化して久しい、偽ブランド品の横行。製造販売することはもちろん、購入目的によっては買い手側も罪に問われるのが偽ブランド品ですが、それでは商品を「コピー」するのは、一体どこまで許されるものなのでしょうか。今回のメルマガ『j-fashion journal』ではファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんが、ファッションにおけるコピーの問題について熟考。さらに社会のデジタル化が「軽いコピー犯罪」を増加させた理由を考察しています。

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ファッションとコピーの悩ましい問題

皆さん、こんにちは。

今回はファッションとコピーの問題を取り上げました。

この問題は複雑です。ブランドや商品を完全にコピーするのは犯罪です。偽物商法は詐欺であり、これが悪いことは誰でもわかります。

ファッションの場合、有名ブランドの商品をコピーして安価な商品を大量生産することは珍しくありません。この場合は、あまり問題にはならないようです。

最近問題になっているのは、デジタルコピーですね。ネット上のデザインを簡単にコピペしてしまう。このあたりのお話をしたいと思います。

1.人真似は恥か?

尊敬する人、憧れの人の服装を真似ることは珍しくない。その人に近づきたいと思う気持ちがそうさせる。

これは案外普遍的な気持ちだと思う。ファッション雑誌のモデルの格好を真似したり、人気ショップのスタッフの真似をする。あるいは、コスプレだって、好きなキャラクターになりたくて真似をするのたろう。

ファッションデザイナーを目指す学生も、好きなデザイナーの作品やファッション雑誌を眺めながら、デザイン画を描く。アパレルに勤めるプロのデザイナーもトレンド情報や売れ筋情報の商品を見ながらデザインすることは珍しくない。

本当にゼロからデザインする人はごくわずかだ。多くは何かを下敷きにしてデザインする。そして、顧客もまた、ファッション情報に影響されて服を選ぶ。

こうした真似の連鎖、情報の連鎖がファッションを広げ、ファッションビジネスを成立させている。

それても、知的所有権の問題が起きることがある。どこまでが許されて、どこまでが許されないのか、そのあたりの微妙な話を掘り下げてみたい。

2.コピーされないデザイナーの存在意義は?

コピーすることは悪いと言われるが、逆にコピーされないデザイナーに存在意義があるのだろうか。

そもそも売れそうだと思うからコピーするのであって、売れないデザインをコピーすることはない。コピーされることは、売れるデザインであることの証でもある。

コピーされても、自分のブランドの商品が売れるなら全く問題はない。むしろ、多くのブランドがコピーしてくれることで、そのオリジナルを作ったブランドであることが訴求できる。

パリのラグジュアリーブランドのショップの売上の内、海外のアパレル企業による購入の比率は意外に高い。商品の購入の目的はコピーするためである。しかし、コピーしても売れない商品も少なくない。経費をかけても利益にはならないのだ。

中国には「開発バイヤー養成講座」がある。開発バイヤーとは、コピーするために商品を購入するバイヤーの意味で、どんな商品を購入すれば無駄がないのかを教えるのだという。

最近は、コピーするのは効率が悪いので、オリジナルデザインを進めるという中国アパレル企業も増えている。

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3.コピーファッションは裁かれない?

そもそも一言でコピーというが、その中身は一つではない。最も分かりやすいのが、ブランドを含めて、そっくりコピーする偽物商法だ。これは明らかに犯罪行為であり、だれもが悪いことだと知っている。

それでは、商品のデザインのコピーとはどの範囲をいうのか。服を構成する要素の内、一部だけをコピーする場合、それはコピーなのか。

例えば、同じ型紙で素材違いの服はコピーと言えるのか。素材が違えば、全く服の印象は変ってしまうので、コピーだと気がつく人もいないだろう。

それでは色違いはどうだろう。黒や紺などのダークな色だけで展開している服のデザインをコピーして赤や黄色という派手な色で販売するのはコピーなのか。

ディティールはどこまでをコピーというのか。テーラードジャケットをコピーして、ポケットだけを変えるのはコピーなのか。あるいは、素材もデザインも同じだけど、目立つワッペンを付けたらそれはコピーというのか。

更に根本的な問題として、民族衣裳を着用していた国が洋服を導入した場合、洋服は全て欧州のコピーとも言える。

多くの場合、ブランド名、ブランドのシンボル、ブランドロゴ等をコピーしたら明らかに犯罪である。しかし、デザインのコピーについては、ほとんど訴訟にばならない。なぜなら、デザインをコピーしても、それを立証するのが大変だし、裁判費用の法が高くつくからだ。コピー商品で、大儲けした企業ならば、弁護士を張り切るだろうが、ファッションの流行は速いし、訴えて裁判になる頃には、既に会社が倒産しているかもしれないからだ。

4.デジタル時代のコピー問題

アナログ時代は、デザインをコピーするのも大変だった。サンプルを購入し、そこからデザインを抜き取る。それだけでも結構な作業だ。しかも、コピーしても売れるかは分からない。コピー商法は長続きしないし、リスクの割には儲からない。

デジタル時代になって状況が変化した。そもそもデザイン作業がデスクトップで行われるようになり、コピペが簡単にできるようになった。

特に、イラストやグラフィックデザインの分野では、著作権フリーの素材を加工してデザインするのが一般的である。元になる素材が著作権フリーなら問題はないが、ネットで図案を見つけて、それが著作権がある場合だと著作権侵害につながる。

それでも、多くの場合は、泣き寝入りする人が多いと思うので、問題が表面化することはない。仮にクレームが入ったとしても、丁重にお詫びし、誠意を持って対応すれば示談で解決できるはずだ。

問題がこじれるのは、コピーが指摘されても逃げてしまうか、開き直って罪を認めない場合である。

デジタルは簡単にコピーできる。そして、一つのデザインを決めるのに、何種類もの提案を求められる事案も増えている。特に、コピーする必要もない簡単な仕事ほどバレないと思って、罪の意識もなくコピーしてしまうことが多いようだ。

アナログの時代には、デザイン提案は膨大な作業を伴うためにコストも掛かるので、「発注」も「提案」も「決定」も慎重だった。しかし、デジタルになって、簡単にコピーできるようになり、全てが軽くなってしまった。その結果、軽いコピー犯罪が増えているのだろう。

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編集後記「締めの都々逸」

「何が売れるか 分からなければ コピーするのも 無駄なこと」

次元の異なる話ですが、技術力のない国はコピーするのも下手です。きちんとコピーすればもう少しまともになるのに、と思います。どこかの国の遊園地にも、似ても似つかない夢の国のキャラターがいましたね。

日本はコピーするのが上手です。それだけ技術力が高いともいえる。でも、コピー商法が通用するのは、人件費が低い時代だけです。コピーして、元の商品より高くなってしまったのでは意味がありません。

既に、日本では国内で作るよりイタリアで作った方が安くなるものもあります。偽物大国も人件費が上がるにつれ、コピーするのが辛くなっていきます。

ですから、今でも他社製品をコピーしている日本企業には将来性を感じませんね。(坂口昌章)

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image by: StreetVJ / Shutterstock.com

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