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元凶はスーパー?熊本アサリの産地偽装問題、落とし穴だらけの根深い闇

大きな風評被害を生むこととなってしまった熊本産アサリの産地偽装問題。この問題は単に外国産のアサリを国産として売っていただけということではなく、もっと根が深い問題かもしれません。果たして、どこに元凶があるのでしょうか。今回の無料メルマガ『食品工場の工場長の仕事』では著者の川岸宏和さんが、売る側のスーパーの仕組みにも問題があるとして産地偽装について語っています。

熊本県産 あさり産地偽装について

食品の産地表示は、大きく2つの目的を持っています。

一つ目は、産地で大きな事故、異物混入、禁止されている種類、濃度の農薬の使用が判明した場合、悪意を持った毒物の混入が判明した場合などの、市場回収、リコールを行う時に、産地と言う区分を明確にし、消費者に食べないように注意喚起を行う時に必要なためです。

二つ目の理由は、お客様が、「ここの産地、このブランドは、美味しいから、安全だから」と信じて、購入をし続けるために必要だからです。日本酒で例えれば、「この蔵元のこのブランドが美味しい」と信じて買い続けるのに必要だからです。

この日本酒が美味しいと信じている方が、友達に勧めた所、「あんまり美味しくなかった」と言うときがあります。確かに、友達が購入した日本酒は、雑味が多く、美味しくなかったときに、販売したお店の管理状況、流通状況が悪かったのか、悪意を思った方が、人のブランドを利用して、中身を入れ替えたのかもしれません。

日本酒の例のように、味がわかる方がいればいいのですが、熊本県産のアサリと、中国産の日本の海を経由していないアサリの味の違い、色の違い等がわかったのかどうか、熊本の産地の方に聞いてみたいものです。

豚肉であれば、黒豚にアメリカ産の豚肉を混ぜると、スライス状態であれば、見分けがきく方が多いと思います。オリーブオイルも、美味しい物と、雑味のある物の違いがわかる方が多いと思います。

初めて購入する方、特に、殻が付いている、卵、あさり等は、表面から、区別がつきずらいので、買って見たところ「ふーん、こんなものか」とお客様が思い、アサリ自体、高級鶏卵自体の購入を避ける事になると思います。

なぜ、産地偽装を行うのか、この産地を表示すると、お客様が高く買ってくれるから、この一言に尽きるのです。だまされたお客様は、「思ったより美味しくない」と感じてしまうと、偽装された食材自体を購入しなくなるだけなのです。

スーパーの売り場の管理では、スーパーに入荷してきた、食材の産地表示と、段ボールの産地表示を確認し、売り場に間違わないように表示するしか、対応策はないのです。

国産と、アメリカ産では、スライスされた肉の表面を見れば、区別できる、豚肉、養殖と、天然が区分出来る「鯛」などと違って、外観を見ただけでは、判別出来ない物に関しては、運んで来る業者の方を信じるしかないのです。

一般的に複数店舗展開しているスーパーでは、野菜、肉、魚介類を店舗に配送するセンターに、運んでもらい、店舗別に仕分けを行って配送を行います。

配送センターまで、配送してくれる業者は、バイヤーが選定します。バイヤーが選定するときに、スーパーによっては、本部の品管の方が、適正な業者かどうかを監査する場合があります。

しかし、一般的に監査は、加工食品に対して行われ、生鮮食品については、あまり行われていないのが実情です。

ウナギなど、産地偽装が報道された場合などは、本部の品管が監査を行う場合があります。

今回、仕入れ先に監査を行っても、熊本の海を見て、袋詰めを行っている所の監査を行っても、監査で、産地偽装を行っている所を発見する事は困難だったと思います。熊本を経由しないで市場に出荷していた業者のあさりを掴まされた所も、市場で仕入れる方を信じてしまえば、監査で見つけることは困難だったかもしれません。

産地が特定されている、熊本のアサリ、新潟コシヒカリ、夕張メロンなどに関しては、収穫量と、販売量を季節毎に集計すれば、産地偽装は、明確になりますが、どこが集計し、集計したあとの対処をどうするか考えてしまいます。

最終的には、スーパーのバイヤーとしては、仕入れ先の責任者の考え方、行動から、信じられる会社かどうかを判断するしかないと思っています。組織の倫理感は、責任者の倫理感を超えることはないからです。

スーパー側にも問題があります。「熊本県産のあさりの特売を打ったから量を揃えてくれ」と無理な注文をしてしまうからです。加工食品の様に、量の調整が効けばいいのですが、生鮮品は、急に収穫量が増えたりしません。いつもは、売らない商品を、急に特売で、販売量を増やす事は出来ないはずです。

「揃えられないのならもういいよ、次から注文しないから」、「揃えるのが仕事だろう」と言われると、産地、規格を偽装してでも、商品を揃えてしまうかもしれません。

納品先、販売者双方の、倫理感、お客様に対しての企業姿勢が現れてしまうと思います。

消費者も「特売の商品がなんで無いの」、「夕方売り切れているなんて」と言うことなく、「売り切れごめん」の考え方が必要だと思っています。売り場にいつでも商品が並んでいるのが当然と言う意識を変える必要があるのです。

鶏卵の様に、毎日同じ数しか産まれない物が、特売時だけ多く販売されることに、疑問を持つべきなのです。

熊本の海を経由すること無く、アサリを販売していた、会社の責任者の部屋、態度、考え方を是非、見てみたいものです。お客様が、アサリを食べている姿を考える事無く、アサリが、利益にしか見えていなかったはずです。

スーパーの責任者が、納品先の責任者と定期的に合い、仕入れ先の責任者の考え方を知ることは、大切な事と考えます。

商品の品質は、販売する責任者の考え方を超えないはずです。商品がお金にしか見えない方は、美味しいもの、安全な物を販売しようとは、決して思わない物です。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 河岸宏和(食品安全教育研究所 代表) 【発行周期】 ほぼ 週末刊

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