尖閣諸島問題にも影響。日本はロシアの現状変更の試みを糾弾せよ

 

今回の演習部隊への輸血の準備は、2014年のケースとは逆に侵攻のリアリティを感じさせるもので、その圧力の効果にも無視できないものがあります。

1月17日号で西恭之静岡県立大学特任准教授が「トラックを数えればロシア陸軍の外征能力がわかる」として紹介したロシア軍の兵站能力の限界も、それを自覚するロシア軍の作戦計画がベラルーシから100キロ圏と、兵站を可能とする距離に位置するウクライナの首都キエフを目指すものとして立案され、それを前提としてベラルーシ軍との合同軍事演習が行われていることを知れば、ロシアの言い分を米欧諸国に受け入れさせる圧力としてリアリティを持って迫ってくるのです。

米国のサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は11日、ロシアによるウクライナ侵攻が「いつ起きてもおかしくない」として、ウクライナ在住米国人に48時間以内の退避を呼び掛けましたし、日本の外務省もウクライナ全土の危険情報を最高度の「レベル4」(退避勧告)に引き上げ、約150人の在留邦人に速やかな退避を求めました。

特に米国による自国民の避難は、米国が本格的な戦闘の前に行う非戦闘員退避活動(NEO)につながるものと映り、ロシアが受ける圧力のリアルさも相当なものだと想像することができます。

このコラムを書いている時点では、このような米ロ両国による情報戦と神経戦が様々な局面で展開されている段階で、プーチン大統領がフランスのマクロン大統領との間で合意したとされる演習終了後のロシア軍のベラルーシからの撤退(ロシア外務省は否定)で落着するのが望ましい展開ですが、予断は許しません。

中国との間で尖閣諸島問題を抱える日本としては、ロシアの力による現状変更の試みを厳しく糾弾し、同様の行動が許されないことを中国に示す必要があります。(小川和久)

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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