専制主義国家の二大大国としてその繋がりの強固さが常々語られている中国とロシアですが、ことウクライナ危機に関しては一枚岩とは言い難い状況のようです。そんな証拠を挙げているのは、国際政治経済学者の浜田和幸さん。浜田さんは自身のメルマガ『浜田かずゆきの『ぶっちゃけ話はここだけで』』で今回、中国とウクライナの知られざる関係と、この危機の裏でアメリカが中国に対して強めている意外な働きかけを紹介するとともに、米ロ双方に恩を売る中国の強かな戦略を明かしています。
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ウクライナ危機で漁夫の利を狙う中国
北京冬季五輪の開会式に合わせて、ロシアのプーチン大統領は訪中し、習近平国家主席と会談しました。
プーチン大統領の宿泊先は中南海の迎賓館ではなく、北京市内のホテルであったため、一部の中国ウォッチャーからは「中露関係が上手く行っていないのでは」といぶかる声も聞かれました。
とはいえ、これは中国の巧妙な対米メッセージに過ぎません。
アメリカのバイデン政権は国際社会に対して「外交的ボイコット」を呼びかけましたが、応じたのはイギリス、カナダ、オーストラリアなど少数で、プーチン大統領はあたかもバイデン大統領を無視するかのような姿勢で北京に乗り込んだものです。
そのため、中国はロシアに対して距離を置いているとの印象をアメリカに伝えようとしたと思われます。
いずれにせよ、印象的だったのは会談後に発表された中露の共同声明でした。
30ページを超える長文で、恐らく全文に目を通した人はほとんどいなかったはず。
しかし、この共同声明には「アメリカとの対決姿勢」もにじみ出ていますが、大きなポイントは「国際社会の大転換」を受け、これからの時代を動かすのは「一部の豊かな国ではなく、国連のような国際機関を通じて世界的な課題を解決しようとする中小国家の連携」だと定義している点です。
また、アメリカが関与するウクライナ危機への言及はありませんでした。
アメリカはEU諸国や日本に呼びかけ、ウクライナ危機にかこつけ、ロシアへの経済制裁を強化しようと動いています。
その場合、中国はロシアからの天然ガス輸入量を拡大するなど、ロシア支援に回ることは既定路線です。
とはいえ、中国がロシアとの経済関係を強化するにしても限度があります。
実は、ウクライナにとって中国は最大の貿易相手国なのです。
中国初の空母「遼寧」も元はウクライナから洋上ホテルにするといって輸入したものを改造しただけのこと。
小麦など穀物はもとより旧ソ連時代の核ミサイル技術などもウクライナから調達しているのが中国なのです。
その点を見越して、アメリカは中国に働きかけを水面下で強めています。
何かと言えば、経済危機に陥っているウクライナを支援するため、中国に対してウクライナへの投資と人材交流、そして貿易拡大を要請しているのです。要は、ロシアとアメリカの双方に恩を売るという戦略に他なりません。
「孫氏の兵法」極まれり、といったところでしょうか。
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image by: Alessia Pierdomenico / Shutterstock.com